コロナ禍やコスト高によって、多くのEC事業者が苦境に立たされている昨今、安定した成長を続けている企業も存在します。ゴルフ関連サービスを広く手がける株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)は、そんな企業の一つです。
この記事では、同社がECやデジタルをどのように駆使し、顧客獲得や売り上げの伸長を続けたのかについて、詳しく解説します。
株式会社ゴルフダイジェスト・オンラインの企業情報・事業内容の概要
まずは、株式会社ゴルフダイジェスト・オンラインの基本情報について確認しましょう。
株式会社ゴルフダイジェスト・オンラインの企業情報
以下の表は、株式会社ゴルフダイジェスト・オンラインの企業情報をまとめたものです。
社名 | 株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン |
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本社所在地 | 東京都品川区東五反田2-10-2 東五反田スクエア8階 |
設立年月 | 2000年5月1日 |
代表者名 | 代表取締役社長 石坂信也 |
株式公開 | 東証プライム市場 |
資本金 | 14億5,800万円 |
おもなグループ会社 |
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株式会社ゴルフダイジェスト・オンラインの事業内容
株式会社ゴルフダイジェスト・オンラインは、「ゴルフビジネスの次世代化を切り開く」をコンセプトに、広範囲なゴルフ関連サービスを手がける企業です。ゴルフ用品の販売やゴルフ場の予約、ゴルフレッスン、メディアサービスなど、ゴルフに関するほぼすべての領域で事業を展開しています。
また、各事業領域は共通の顧客データベースで有機的に接続され、より高度で複雑なサービスの提供を実現している点も特徴です。ゴルフに関する顧客の一連の体験にさまざまな角度から関わることで、同社にしかできない高いレベルの顧客満足度実現につなげています。
株式会社ゴルフダイジェスト・オンラインの沿革
以下の表では、株式会社ゴルフダイジェスト・オンラインの沿革を簡単にまとめています。
年月 | 沿革 |
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2000年5月 |
株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)設立 |
2001年1月 | ゴルフ用品販売サイト「GDOSHOP.com」開設 |
2007年1月 | GDOクラブ会員100万人突破 |
2012年5月 |
アメリカのGOLFTEC Enterprises LLCと業務提携を締結 ゴルフレッスンサービスを開始 |
2015年9月 | 東証一部上場 |
2016年4月 | ゴルフ菜園プロジェクト開始 |
2016年11月 | GDOクラブ会員300万人突破 |
2018年3月 | オウンドメディア「Golf Links the World」ローンチ |
2019年3月 | 第4回ホワイト企業アワード最優秀賞受賞 |
2000年に設立した株式会社ゴルフダイジェスト・オンラインは当初、ゴルフ場予約とメディアサービスを手がける企業でした。本格的なリテールサービスを開始したのは翌年の2001年からで、同社のクラブ会員は設立から7年ほどで100万人を超え、国内有数のゴルフ顧客を持つ企業へと成長していきました。
2012年にはアメリカのゴルフレッスンサービス企業と業務提携を結び、国内でレッスン事業をスタートさせました。東証一部上場を果たしたあと、近年はゴルフ菜園プロジェクトをはじめとするゴルフに関連したさまざまな取り組みを独自に発足させており、社会的な注目度も高まりつつあります。
2011年から2022年にかけては売上高の年平均成長率約14%を達成するなど、社会情勢や景気に左右されにくい、成長力のある企業として今後もその活躍が期待できるでしょう。
コロナ禍やコスト増にも負けないGDOのEC戦略とは
ここ10年の間、成長を続けてきた株式会社ゴルフダイジェスト・オンラインですが、多くの企業はコロナ禍の2020年以降、大幅な売り上げ減を経験し、立て直しに苦慮しています。また、それに追い打ちをかけるように、昨今コスト増の問題も浮上しているところです。
人材不足や地政学上の問題から、運送コスト増や原材料費の高騰に苦しむ企業が増える一方、GDOはサービス提供のコンセプトに工夫を加え、独自のビジネスモデルを構築することで、課題解決に取り組んでいます。
コロナ禍でも成長を続けたGDO
株式会社ゴルフダイジェスト・オンラインの最大の特徴は、新規顧客よりも継続顧客に注力している点です。同社はコロナ禍の最中にあった2021年12月期通期決算で、前年のほぼ倍となる営業利益を達成しましたが、その背景にはコロナ禍を機にゴルフを始めたビギナー層へのアプローチがあります。
新しくゴルフを始める人を増やすだけでなく、どうやって長くゴルフを続けてもらうかにフォーカスすることで、同社が手がけるゴルフ関連のサービスを幅広く長く愛用してもらうことに成功し、売り上げにつなげたのです。その結果、売上高は前年比約17.5%増の395億円を達成、営業利益は前年比約103.4%増の17億円を達成し、同社における過去最高益を記録しました。
コスト増の波にのまれないためのEC戦略とは
すでに始まりつつあるコスト増の波に対しては、株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン独自のEC戦略での対応を進めているところです。具体的には、ゴルフ用品の購入やゴルフの練習、コース利用の予約、アプリを活用したスコア管理など、ゴルフの継続や上達に貢献する「循環モデル」を描き、継続顧客の獲得に努めています。
また、近年需要が高まるリユース市場への参入や、サブスクリプションサービスの展開もスタートするなど、新規購入以外のゴルフ用品提供サービスにも注目し、リーズナブルにゴルフを楽しめる仕組みづくりに努めている点も特色です。さらに、アプリ経由でECに送客する仕組みも作り、新規顧客獲得やEC利用の機会増加も進めました。
物流については、自動倉庫や自動ピッキングなどの新しい物流システムを推進している倉庫に業務委託し、人件費の高騰によるコスト高の回避に努めているところです。
株式会社ゴルフダイジェスト・オンラインの最近の動き
続いて、株式会社ゴルフダイジェスト・オンラインが展開する近年の気になる動向についても、ピックアップして解説します。
アクティブ率10%向上を実現したアプリとWeb横断型のマーケティング施策
デジタルマーケティングの強化に努めている株式会社ゴルフダイジェスト・オンラインでは、マーケティング支援ツール「Repro」を導入することで、充実したデータ活用基盤を構築しました。
導入によって、顧客の予約や購買履歴、キャンペーンの応募データといった情報を活用し、アプリ内で施策を実行できるようになりました。結果、同社アプリにおけるプッシュ通知の開封率やクーポンの使用率は以前よりも大きく向上し、ECユーザー数もRepro導入前の約2倍に増加するなど、大きな導入効果が出ています。
機会損失を防ぐ堅牢なジョブ管理システムの導入
ユーザーが増加しても、商機を逃していては、安定した企業成長にはつながりません。そこで株式会社ゴルフダイジェスト・オンラインでは、ジョブ管理基盤である「JP1」を導入し、ECサイトの安定稼働が期待できる環境を目指して刷新を進めました。
信頼性の高いシステム導入が進んだことで、従来よりも耐障害性が向上し、障害発生による機会損失のリスクが低減しています。また、運用管理業務が整理され、大半をアウトソースしたことにより、社内で対応が必要な工数を従来の1割程度にまで削減しました。
運用管理業務の負担を削減し、より魅力的なサービスの開発に自社リソースを割けるようになったのは大きな変化です。
手に取って体験できるECがコンセプトの「GDO Select」を秋葉原にオープン
2023年1月、株式会社ゴルフダイジェスト・オンラインは商品を手に取って体験できるECショップ「GDO Select」を秋葉原にオープンしました。オンラインショップからGDO Selectに実物を取り寄せ、商品を確かめたうえでオンライン注文ができる点が特徴です。
クラブはその場で試し打ちができ、アパレルは試着もできます。そして注文した商品は自宅に配送されるという、無駄のない購入体験を実現しました。
株式会社ゴルフダイジェスト・オンラインの気になるトピックス
そのほか、株式会社ゴルフダイジェスト・オンラインの気になるトピックスを以下でまとめて紹介します。
2018年4月12日:Wowma!内にGDOゴルフショップをオープン
新たにWowma!内にオープンしたGDOゴルフショップでは、ゴルフクラブ2万4,000点、ゴルフウェア4,100点、その他ゴルフ関連グッズ1万6,000点を展開する。
2021年7月26日:茅ヶ崎で「あそびのある人生」を シティプロモーション協定を締結
神奈川県茅ヶ崎市とGDO茅ヶ崎ゴルフリンクス(茅ヶ崎GL)を運営するGDOは26日、「シティプロモーションに関する連携協定」を締結した。同市がこうした協定を民間企業と結ぶのは初めてで、市外からの来訪者や転入者の誘致を協力して推進する。
2022年3月15日:FULL KAITENを導入したゴルフ用品ECのGDOが欠品抑止と在庫回転率UPを両立
在庫の効率を上げる在庫分析クラウドサービス『FULL KAITEN』を開発し小売業向けに提供するフルカイテン株式会社は、FULL KAITENを導入しているゴルフ用品通販大手の株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)が、2021年一年間で欠品率を16.4%から2.9%へ低下させるとともに、在庫回転率を1.5倍向上させるという成果があったことを報告した。
2023年2月14日:GDO、売上高・EBITDAで過去最高を更新 海外でのさらなる成長や国内での磨き上げ・チャレンジが寄与
2022年度は、海外でのさらなる成長、国内での磨き上げとチャレンジをキーワードに活動し、売上高及びEBITDAは2桁成長で過去最高を更新した。
まとめ
この記事では、株式会社ゴルフダイジェスト・オンラインの近年の取り組みや、コロナ禍でも成長を続けることができた秘密について解説しました。
ピンチをチャンスに変えられる企業は強いといいますが、同社はその言葉を体現した企業といっても過言ではありません。新規顧客の獲得だけでなく、継続顧客の増加に努めてきた取り組みは身を結び、同社の安定成長に現在進行形で貢献しています。
新規顧客獲得は順調だが、なかなか顧客が定着しないとお悩みの場合は、同社の施策をじっくり研究してみるとよいでしょう。