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【ハイブリッド開催】ECzine Day 2025 Winter

2025年2月4日(火)13:00~18:45

勝つD2C 注目ブランド大研究

飽和状態のD2C市場を生き抜く戦略 注目の新興ブランド「NELL」に急成長のワケを聞く

 2020年10月に発売された「NELLマットレス」の売上が、2022年時点で数十億円を超える規模となった。販売元である株式会社Morghtの社員数は10名。少ない人員ながら、たった2年で認知を獲得し、実績をあげたD2Cブランドの戦略はいかなるものか。株式会社Morght 執行役員 VP of Marketing 宮下大和氏にその裏側を聞いた。

1日で1億円を売り上げるマットレス

 2018年に設立されたMorghtが、急成長している。2020年に寝具を販売する睡眠領域のブランド「NELL(ネル)」を立ち上げ、過去には1日で1億円の売上を記録したこともある。現在は2025年までに売上300億円を目指し、海外進出も視野に動き出している状況だ。

 快進撃を続ける同社だが、設立当初はYouTuberコミュニティアプリ事業や新卒採用支援サービス事業など、今とはまったく違うサービスを提供していた。しかし、当時の売上はほぼゼロ。市場調査の甘さを痛感し、サービスから物販へ業務転換を図ったという。

 商材として寝具に着目した理由を宮下氏は、「Morghtには、『朝(Morning)起きてから、夜(Night)寝るまでの人々の生活を豊かにする』という意味がある。ここに立ち返ることにした」と話す。

株式会社Morght 執行役員 VP of Marketing の宮下大和氏
株式会社Morght 執行役員 VP of Marketing の宮下大和氏

 寝具市場では、老舗寝具ブランドによる高価格帯商品から量販店が販売する低価格帯商品まで、多くのブランドが台頭している。その中で特に他社との差別化につながったのが、NELLの商品力だ。

 NELLマットレスは、睡眠時の「寝返り」に着目し、福岡県大川市にある協力工場で設計されている。Morghtの代表取締役が、全国から理想的な商品が製造できる工場を探し出した。

「人は睡眠時に20回から30回ほど、寝返りするといわれています。寝返りがしづらいマットレスだと、その度に目が覚めて浅い眠りになってしまいます。ところが、多くのマットレスが売られているにもかかわらず、寝返りに特化して訴求しているブランドは目立っていませんでした。ここが狙いどころだと思ったのです。マットレスを共同開発している工場と相談しながら、寝返りの重要性に気づけたのが転機でした」

 NELLマットレスは睡眠中の寝返りのしやすさを重視し、業界最高水準の1,734個のポケットコイルを使用。高品質でありながら、実店舗の運営費がかからないD2Cモデルゆえの手に届く価格設定で、大きな市場の中から勝てる隙間を見出した。

 顧客に選ばれる理由は、品質と価格だけではない。「120日フリートライアル」で4ヵ月間にわたって商品を試せる点はNELLの強みだ。宮下氏は、「季節をまたいで体験してみないと、本当に自分の体に合ったマットレスかはわからない」と説明する。

「実店舗で体験する場合、顧客は直感的に柔らかいマットレスが良い商品だと考えがちです。しかし、柔らかいマットレスだと全身が沈み込んでしまうため、寝返りが打ちづらく、体が痛くなる原因になります。その上、商品企画側としては、実店舗の担当者から『柔らかいマットレスが売れる』と報告されるため、同じような商品ばかりが作られる市場の状況にも課題を感じていました」

 実績として、NELLマットレスの返品率は1桁台にとどまり、年々その数字も減少傾向にあるという。顧客が体験後、納得して購入しているからだろう。

 他社にも体験サービスはあるものの、地域によって負担額が変わったり、返品期間が短く設定されていたりと制限がある。一方、NELLマットレスのフリートライアルは、返品まで完全無料。10万円ほどの高額商品、かつ送料負担が大きなマットレスを全額無料で返品対応している例は、業界全体に目も向けても多くない。

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この記事の著者

田中なお(タナカ ナオ)

 物流ライター。青山女子短期大学を卒業後、物流会社に14年間勤務。その後、2022年にフリーライターとして独立。企業オウンドメディアや物流ニュースメディアで発信活動をし、わかりやすく「おもしろい物流」を伝えている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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