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ECzine Day 2024 Autumn

2024年8月27日(火)10:00~19:15

おさえておきたいEC・通販先進企業

顧客優先主義の「駿河屋」を運営するエーツーの事業戦略

 リユースショップとして知られる「駿河屋」は、近年の中古需要の拡大にともない、自社ECの強化はもちろん、実店舗の強化にも取り組んでいる企業です。今回は、運営会社であるエーツーが、ECと店舗をどのように両立させているのかについて、その事業戦略を解説します。

 リユース業界では大きなシェアを誇る「駿河屋」ですが、運営元の株式会社エーツーはリユースECの強化だけでなく、実店舗におけるリユース業の強化にも取り組んでいます。会社のコンセプトでもある「顧客優先主義」は、同社のリユース事業へどのように反映されているのでしょうか。

 この記事では、そんな株式会社エーツーが考える事業戦略や、同社の顧客優先主義がビジネスにどんな影響を与えているのかについて解説します。

株式会社エーツーの企業情報・事業内容の概要

 まずは株式会社エーツーの企業情報について、基本的な事業内容などを確認しましょう。

株式会社エーツーの企業情報

 以下の表は、株式会社エーツーの企業情報をまとめたものです。

社名 株式会社エーツー
本社所在地 静岡県静岡市駿河区丸子新田317-1
設立年月日 1997年1月
代表者名 杉山綱重
株式公開 未上場
資本金 4,500万円
おもなグループ会社 京商株式会社

株式会社エーツーの事業内容

 株式会社エーツーのおもな事業内容は、以下のとおりです。

  • メディアリユースショップ直営事業
  • メディアリユースショップFC事業
  • インターネット通販でのメディアリユース事業
  • 卸売りやデータ販売業務

 同社は、「駿河屋.JP」をはじめとするリユースEC業を営む会社です。リユースEC業界においてはトップクラスの売り上げを誇っており、日本を代表するリユースECサイトといえます。

 また「駿河屋」の名前で店舗販売も手がけており、ホビー関連の商品の取り扱いに強みを持つ小売店として、国内外で高い知名度を有しているのが特徴です。

 現在は通販と店舗小売を主軸としながら、フランチャイズ業や卸売業も自社で手がけるなど、駿河屋ブランドの拡大に努めています。さらに、自社のノウハウを生かしたクラウドPOSの提供や、リユース事業の支援コンサルティングなども手がけており、BtoB領域での存在感を発揮している点も特徴的です。

株式会社エーツーの沿革

 以下の表は、株式会社エーツーの沿革を簡単にまとめたものです。

年月 沿革
1998年4月 インターネット通販事業「駿河屋」開始
2001年12月 エーツーフランチャイズ募集開始
2003年1月 株式会社太田書店と事業統合を行い、完全子会社化
2005年2月 株式会社エーツーに社名変更
2010年10月 アマゾンジャパン10周年記念ベストマーチャント「TVゲームストア部門」受賞
2011年1月 株式会社ランシステムより「ファミコンショップ桃太郎」事業買収
2013年7月 「駿河屋アプリ」リリース
2014年8月 ベトナムホーチミン市に開発ラボを設立
2019年9月 駿河屋マーケットプレイススタート
2021年4月 埼玉に駿河屋大宮マルイ店オープン

 1998年にECショップとしてオープンした駿河屋は、開設半年以内に有限会社を設立し、2001年にはフランチャイズ業の展開をスタートします。

 その後、リユース業を営む国内企業の子会社化や合併を重ね、創業10年ほどでリユース会社としての堅固なシェアを獲得しました。2011年には大手ゲームショップの「桃太郎」を買収し、ホビー関連の取り扱いや流通面を強固なものへと成長させています。

 2013年からは独自のスマホアプリリリースにも取り組んでおり、EC集客における多様なアプローチを業界内でも早いタイミングで実現しました。実店舗の拡大も全国的に進め、各地に点在する大手商業施設のマルイにテナントを確保するなど、近年はより身近なリユースブランドとしての存在感を強めています。

株式会社エーツーがECと店舗で実践する「顧客優先主義」

 株式会社エーツーでは創業以来、「顧客優先主義」と呼ばれるコンセプトを大切にしてきました。そのコンセプトは今日にも受け継がれており、EC・実店舗を問わず独自の実践が見られます。

顧客優先主義を貫くEC事業

 株式会社エーツー代表取締役が同社の起業時にコンセプトとした顧客優先主義は、「顧客が『あったらいいな』と思うサービスを叶えること」を指す言葉です。顧客が望むニーズを形にすることで、高い満足度を実感してもらうことを目指しています。

 1990年代後半という早期にオンラインショップを開設したのも、このコンセプトに端を発するもので、前例がないなかで試行錯誤を繰り返すことで、顧客ニーズに寄り添うことに成功しました。

 また、同社ではオンラインとオフラインとを切り分けないビジネスモデルを実現することで、両事業の相乗効果を創出しています。店舗とネットをつなぎ、在庫状況を明確化したうえで顧客の利便性を追求することに重きを置くことで、成果につなげているのです。

EC・店舗の両軸で提供を進める新しいサービス

 株式会社エーツーが掲げる顧客優先主義は、近年の同社の取り組みにも如実に反映されています。

 具体的には2022年3月に、駿河屋ブランドの店舗開発および店舗運営支援を行う合弁会社「株式会社駿河屋BASE」を設立したことがその一例です。これは、日販グループの小売事業を担うNICリテールズ株式会社との協業で実現した合弁会社の設立で、自社ブランドに固執せず、多くの顧客にとってより満足度の高い店舗を広く提供する姿勢がうかがえる取り組みといえるでしょう。

 また同社は実店舗の拡大にともない、店舗でのサービス改善にも積極的に取り組んでおり、オンライン注文商品の店舗受け取りサービスを開始しています。さらに、販売者出店サービスである自社運営モールサイト「駿河屋マーケットプレイス」において、業界ナンバーワンシェアを誇る「タロスPOS」とのAPI連動を実現するなど、短期間でさまざまな施策を実践しています。

 必要なことや顧客が求めることを迅速に施策に反映するフットワークの軽さこそ、同社の最大の強みといえるかもしれません。

株式会社エーツーの近年の動向

 ここで、株式会社エーツーの近年の動向について、確認しておきましょう。

フランチャイズ事業特化の「株式会社駿河屋BASE」が登場

 先述のとおり、2022年3月、株式会社エーツーはNICリテールズ株式会社との協業により、フランチャイズ事業特化の株式会社駿河屋BASEを新たに立ち上げました。豊富な実店舗出店経験と、2,000万件を超える圧倒的な商品マスタデータ、同社が20年以上蓄積したノウハウを活かし、リユース事業の展開をさらに強化していくことが目的です。

 ECはもちろん、今後も実店舗を全国各地に積極的に展開していきたいという、同社の思いも感じられる取り組みといえます。

丸井グループとの資本業務提携

 2019年12月、株式会社エーツーは丸井グループとの資本業務提携の締結を発表しました。丸井グループが展開する商業施設「マルイ」や「モディ」、ECサイトの「マルイウェブチャネル」、クレジットカードの「エポスカード」との連携を通じて、同社ではさまざまな協業策を進めています。

 実店舗の駿河屋はすでに丸井グループの施設へ全国展開されており、リアル店舗とECでの協業を通じてさらなる顧客体験やコミュニティの場を提供しているところです。

「駿河屋」サイト上に出店型のマーケットプレイスを開設

 2019年9月、株式会社エーツーはECサイト「駿河屋.JP」上に出店型のマーケットプレイスを開設しました。

 「駿河屋マーケットプレイス」と名付けられた同サービスでは、商品代金回収の代行サービスのほか、エンドユーザーからのクレーム対応も駿河屋のカスタマーサービス部門がサポートする仕組みなどを提供しています。

 出店者が純粋に販売業にのみリソースを投じることができるだけでなく、顧客と事業者の接点の増加にも寄与するサービスといえるでしょう。

株式会社エーツーの気になるトピックス

 そのほか、株式会社エーツーの気になるトピックスを以下にまとめました。

2022年12月16日:2月17日(金)四国初上陸「駿河屋高知南国店」がグランドオープン!

 2022年2月17日、四国初の店舗となる「駿河屋高知南国店」が高知県にオープン。

2022年12月15日:丸善ジュンク堂書店が駿河屋フランチャイズに加盟。駿河屋新潟駅南店が誕生

 駿河屋と丸善ジュンク堂書店のコラボ1号店となる「駿河屋新潟駅南店」が2023年3月下旬にオープン。

2022年9月2日:駿河屋高価買取!ジャンク家電も買取保証付き!対象ジャンル大幅拡大!

 駿河屋.JPでは、家電の取扱開始にともない、中古家電の買取を大幅に強化。デジタル家電、調理家電、美容家電に加えて、ミシンやレコードプレーヤーなど昔からある家電製品も対象になった。

2022年3月31日:駿河屋(株式会社エーツー)が日販グループホールディングス株式会社と資本業務提携契約を締結

 株式会社エーツーは、日販グループホールディングス株式会社より出資を受け資本業務提携契約を締結。

2021年3月26日:「駿河屋」を運営する株式会社エーツーが京商株式会社を子会社化

 株式会社エーツーは2021年3月25日付で、RCカーやミニカーの老舗京商株式会社の全株式を取得した。

2020年11月17日:インターネット通販サイト【駿河屋.JP】で注文した商品がマルイの店舗で受け取れるようになりました。

 株式会社エーツーは、丸井グループの物流事業会社、株式会社ムービングとの提携による新たなサービスをスタート。駿河屋.jpでの注文品が全国のマルイ・モディで受け取り可能となった。

まとめ

 この記事では、ECや実店舗を通じたリユース事業で名を馳せる駿河屋の運営会社である株式会社エーツーについて、そのビジネスモデルや取り組み内容をまとめました。

 1990年代後半より頭角を現した株式会社エーツーは、企業買収や業務提携を重ねながら企業規模を拡大し、今や日本のリユース業界を代表する企業にまで成長しました。顧客優先主義という創業以来のコンセプトを軸に、過去の前例や常識にとらわれない、独自のノウハウやネットワークを構築しており、今や日本全国に実店舗が展開されています。

 ECや実店舗の垣根を超えて顧客満足を追求する同社の動向は、今後も注目されることでしょう。

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この記事の著者

EC研究所(イーシーケンキュウジョ)

ECについての情報を調べ、まとめてお届けします。

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