成長が停滞するD2C
2022年12月、藤原さんが運営するD2Cブランド「MAITUNE」が、本格的に始動した。4月1日・2日には、「Hello! Project ひなフェス 2023」と合同で開催される「カーボンニュートラルを考える 2023 by SATOYAMA & SATOUMI movement」への出店も控えている。
MAITUNEが販売するのは、「五郎兵衛米」というブランド米だ。長野県佐久市の限られた土地でのみ作られる五郎兵衛米は、料亭などで食べることができるものの、これまで一般向けにはあまり流通していなかった。
「6年前、知人の紹介で農家のお米作りに参加したことが、五郎兵衛米の存在を知ったきっかけです。何度かお米作りを手伝ううちに、より多くの人に五郎兵衛米を味わってほしいと思い始めました。ダイエットとして糖質制限が叫ばれる時代に、おいしいお米を通して健康的な食生活を提案したいと考えています」
五郎兵衛米を届けたいという想いと同時に、MAITUNEは藤原さんの新たな挑戦でもある。
コロナ禍でEC利用が進んだことにより、D2Cブームは追い風を受けた。最近では、老舗企業や大手メーカーも、D2C事業への参入を始めている。そんな中、藤原さんは日本のD2Cが抱える課題をこう指摘する。
「初回お試し価格で新規顧客を獲得しようとするケースをよく見かけます。たとえば、定価が高額にもかかわらず、新規顧客には数百円で販売する。ブランド立ち上げ当初は、こうした施策で新規顧客の獲得ができます。
ただ、これまでのマーケティングの経験から、最初に安い値段で商品を購入した顧客のLTVは高くないと感じていました。顧客は、値段が安いから購入した商品を買い続けるのではなく、値段が安くなくても自分が良いと思った商品を納得して買い続けるからです」
D2Cにおける課題はこれだけではない。昨今、「ブランドの世界観」が重要視されているが、世界観を顧客に伝える手段として、リアルでの体験に目を向ける事業者もいる。
「D2Cを運営し続けていれば、ブランドの価値を見直す時期がきます。その際、ブランドの世界観を顧客に体験してもらおうと、ポップアップストアなど、実店舗を出店することがありますよね。ところが、オンラインとオフラインでは利益構造が違います。実店舗を持つと、その維持費やスタッフの人件費など、一時的だとしても出ていくコストが増え、結果的に新規獲得コストが上がります。
一方、追加で発生したコストを回収するには、新規顧客を獲得しCRMを強化して継続率を上げる必要があるため、新しい広告やシステムへ投資し続けます。その結果、複数の広告施策を実行するためのリソースが確保できず、デジタル人材の不足が新たな課題として発生します。このサイクルに陥るD2C事業者が非常に多いのです」
これらの課題を克服し、「人とお金をかけずにどこまで効率的にビジネスを回すことができるのかを探りたい」と、藤原さんは意気込む。