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ECzine Day 2024 Autumn

2024年8月27日(火)10:00~19:15

今こそ考え、実現する!ECとブランディング

高利益体質を実現する ECのブランディング成功事例

 ECのブランディングといっても、自社は何をすればいいのか。有益な情報は多くありますが、1番はリアルな「成功事例」ではないでしょうか。株式会社フラクタ 代表取締役 河野貴伸さんが「ブランディング」を語る当連載。第2回はECとしてのブランディング成功事例を紹介・解説します。

成功事例に学ぶ 細部にまでこだわった仕掛け

 前回はECにおけるブランディングの重要性をお伝えしました。今回はその具体的な事例をご紹介します。ここで挙げるのは一般的なブランディングの成功事例ではありません。あくまでECを主体とした場合の成功事例です。

 そもそも、ECにおけるブランディングの「成功」とは何なのでしょうか。ここでは「顧客からの高い信頼を得て高利益体質を実現できている」と定義します。そうすると、達成に向けて必要な要素は次のように分解できます。

  • 顧客を理解したうえで適切な価値を提供できている
  • 顧客が求める形とタイミングで価値を提供できている
  • 顧客からの信頼を十分に勝ち得るためのコミュニケーションが達成されている

 これらが実現されている成功事例をいくつかピックアップしました。

BEAMS(ビームス)

 ECの要素にはふたつの側面があります。顧客から直接見ることができる「フロントエンド」と、顧客には直接見えないものの提供する体験において重要となる「バックエンド」です。BEAMSのECサイトは、フロントエンドとバックエンドにおいて、顧客が求める体験をバランス良くかつ徹底的に実現しています。それは、顧客を理解できているということの裏付けでもあります。

 ブランディングにおいては、フロントエンドだけが重要だと誤解されがちです。実際には非常に危険な考えかたと言えるでしょう。フロントエンドだけに意識が偏ってしまうと、バックエンドがおざなりになります。フロントエンドの演出で顧客の期待値が高まったにもかかわらず、商品が届くのが遅い、欠品が多い、梱包が雑、カスタマーサクセスの対応がいい加減など、顧客をがっかりさせてしまうでしょう。これはブランド体験において決定的な損失です。それを理解し顧客と向き合うことで、ブランドの信頼を維持することが必要です。

 BEAMSの場合、顧客の期待値に対して、商品供給、物流、カスタマーサクセス、コミュニケーションのどこをとっても同じレベルでクオリティの高い体験ができます。

SENN (セン)

 SENNというブランドにおいて、大切なのは「空気感」。通常、顧客がブランドの持つ空気感に溶け込むのは簡単ではありません。ブランドのストーリーに触れたり、商品を実際に手に取って体験してみたり、あらゆる文化的体験を経て辿り着くはずです。一方、SENNの場合は知らず知らずのうちにその空気感に溶け込んでいく自分が楽しく、そして「楽」な気持ちになってくる。デジタルとリアルを組み合わせ、心身ともに癒される体験に導くことを目的とした設計がなされています。

 その空気感を伝える仕掛けはひとつではありません。サイト全体のコミュニケーションはもちろん、情報発信の仕方、ポップアップストアを出す場所や出しかた、PRの手法に至るまで、すべてが丁寧に織り込まれています。前出のBEAMSとは逆に、ECという存在を感じさせず、あくまでブランドとの最終接点のひとつとして空気に溶け込ませているのが特徴です。

UTAGE(ウタゲ)

 UTAGEにおいて、「ライブ感」はブランドと切り離せない要素です。商品をただ売ることが目的ではなく、「少しでも多くの人に日本酒や本格焼酎の魅力に触れてほしい」という、蔵元の想いを届ける役割を担っています。

 CRMやレコメンドなどの手法はあえてとらず、「ライブ感」を最大限に引き出すための機能・体験に絞る。それが、よりわかりやすいコミュニケーションを実現しています。

 魅力に触れる、感じる、学ぶ。「体験」を届けることを目的に置いている事例です。「顧客が求める形とタイミングで価値を提供する」ために工夫を凝らした結果、今までのECの常識とは少し変わった、より先進的なチャレンジを成功させています。

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この記事の著者

ミリモルホールディングス株式会社 代表取締役/CAIO 河野貴伸(コウノタカノブ)

 1982年生まれ。東京の下町生まれ、下町育ち。からくり人形師を祖に持つ河野家の十五代目。2000年からフリーランスのCGクリエイター、作曲家、デザイナーとして活動。2013年、ブランディングエージェンシー、株式会社フラクタ創業、代表取締役就任。2020年、上場企業にバイアウト。2024年1月、フラ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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