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ECzine Day 2024 June

2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

おさえておきたいEC・通販先進企業

独自のビジネスモデルを武器に豊かさを届ける、ニトリホールディングスの展望


 家具販売やビジネス美品の販売を手がける株式会社ニトリホールディングスは、配送サービスやネットサービスの充実など、顧客をより豊かにするための事業展開に力を入れています。同社のビジネスモデルや事業の強み、そして近年の気になる動向について紹介します。

 家具やインテリア用品の店「ニトリ」を全国に展開する株式会社ニトリホールディングスは、自社物流機能を備えた独自のビジネスモデルを通じてサービス向上を実現しています。

 今回は、ロマンを力にビジョンの実現を目指すニトリのビジネスモデルや経営戦略、注目すべき近年の大きな取り組みなどについて解説します。

株式会社ニトリホールディングスの企業情報・事業内容

 まずは、株式会社ニトリホールディングスの企業情報や、おもな事業の内容について確認します。

株式会社ニトリホールディングスの企業情報

 株式会社ニトリホールディングスの企業情報は、次のとおりです。

社名 株式会社ニトリホールディングス
本社所在地 北海道札幌市北区新琴似七条一丁目2番39号
設立年月 1972年3月
代表者名

代表取締役会長  似鳥 昭雄
代表取締役社長  白井 俊之

株式公開

東証プライム市場上場
札幌証券取引所上場

資本金 133億7,000万円
おもなグループ会社

株式会社ニトリ

株式会社ホームロジスティクス
株式会社ホーム・デコ など

株式会社ニトリホールディングスの事業内容

 株式会社ニトリホールディングスの事業は、多岐にわたります。

  • 店舗事業
  • 法人向け事業
  • リフォーム事業
  • 製造事業
  • 物流事業
  • 広告代理店事業

 店舗事業では日用品やインテリアの販売、さらにはトータルコーディネートを手がけ、小規模出店に特化した「DECO HOME」や大型出店に特化した「ニトリモール」など、出店場所やニーズに応じた店舗形態の多様化が進んでいます。

 法人向け事業は、オフィスや医療施設、商業施設の内装提案を手がける事業です。法人に「お、ねだん以上。」の価値ある空間を提供し、幅広いニトリ商品の提案を行うだけでなく、顧客オリジナルの商品開発も引き受けています。

 リフォーム事業は、システムキッチン、バスルームはもちろん、壁紙や床の張り替えといった、内装のトータルコーディネートサービスを提供する事業です。施工管理からアフターサービスまで一貫したサポートを届けます。

 また、商品力とコストパフォーマンスを支えているのが製造事業です。ヨーロッパやニュージーランド、ASEAN諸国などから原材料を調達し、ベトナムにある自社工場で家具を製造することで、品質と価格の両立を実現しました。資材調達や技術指導を推進するべく、海外進出にも積極的です。

 物流事業は、全国規模の出店とオンラインサービスを支える事業です。日本全国に物流拠点網を構築することで中間コストを削減し、低価格の実現に貢献します。海外との取引が多いからこそ、グローバルな視点の物流構築に力を入れているのです。

 広告代理店事業においては、コミュニケーション戦略のプランニングから広告・販促施策の実施までを幅広く対応しています。自社の広告事業はもちろん、不動産代理店や食品メーカーなど、他社の広告プロジェクトも手がけています。

 そのほかにもノベルティ開発や旅行事業など、自社ノウハウをいかんなく発揮できる事業展開を実現してきました。

おもな業務の紹介

 株式会社ニトリホールディングスのおもな業務は以下の4つに分かれます。

  • 調査・資材調達
  • 生産・品質管理
  • 物流
  • 販売

 同社製品のコストパフォーマンスを支えているのが、調査・資材調達部門です。自社のバイヤーが海外の展示会で新製品や素材のチェックを行い、品質と機能、コストの基準をクリアしているかどうかを確認します。メーカーとの交渉も自社で行い、世界中から資材の調達を進めています。

 生産・品質管理は、基本的に海外の工場で行われます。株式会社ニトリファニチャーがインドネシアとベトナムの工場のプロデュースを担当しており、製品の品質調査はもちろんのこと、製造工程の改善指導に取り組みます。

 国内における物流業務は子会社の株式会社ホームロジスティクスが担当しており、さらなる効率化に向けた自社でのITシステム開発も推進中です。2016年には自動倉庫型ピッキングシステム「AutoStore(オートストア)」を導入し、低コストを実現しています。

 販売業務は、400店舗を超える全国の小売店が担っているほか、近年はネットストアの活躍も顕著です。

 特に同社のECサイト「ニトリネット」では、店舗の代わりとして利用できるだけでなく、ネット限定のサービスが充実し、好評を博しています。店舗には並んでいないネット限定商品が購入できたり、アウトレット品の取り扱いがあったりと、より多くの顧客ニーズに対応している点が特徴です。

 また、一定金額の購入、あるいは店頭受け取りで送料無料となる仕組みを採用することでついで買いや店舗への来訪にもつながっているといえるでしょう。

株式会社ニトリホールディングスの沿革

 株式会社ニトリホールディングスの沿革です。

年月 沿革
1967年12月 「似鳥家具店」を創業
1978年6月 社名を「株式会社ニトリ家具」に変更
1986年7月 社名を「株式会社ニトリ」に変更し、店名を「ホームファニシング ニトリ」に変更
1998年3月 店名を「ホームファッション ニトリ」に変更
2003年12月 100店舗達成
2004年9月 インターネット通販(ニトリネット)への参入開始
2007年10月

システムキッチン販売開始
リフォーム市場参入

2010年8月

持株会社体制へ移行し販売部門を「株式会社ニトリ」、物流部門を「株式会社ホームロジスティクス」に分社化
社名を「株式会社ニトリホールディングス」に変更

2013年10月 アメリカ合衆国カリフォルニア州に同国初出店となる「Aki-Home Fullerton店・Tustin店」をオープン
2015年2月 売上高4,000億円達成
2021年3月 株式会社島忠を完全子会社化

 1967年に「似鳥家具店」として創業された同社は、店舗数の増加とともに事業形態も多様化したことがわかります。1998年には家具のみならず家全体のスタイリングを提案する企業として「ホームファッション ニトリ」に店名を変更し、2010年にはニトリホールディングスとして、販売から物流までを手がける一大企業へと成長しました。

 また、ネット通販にも2004年から参入するなど、インテリアのオンラインショッピングがまだ主流ではない頃からECに商機を見いだしていた点は、同社の先進性が垣間見える部分です。

株式会社ニトリホールディングスの強みと戦略

 株式会社ニトリホールディングスは現在、競合企業の完全子会社化を進めるなどの規模の拡大が著しく進んでいます。このようなスケールの活動を支える同社の強みや戦略について解説します。

ビジネスモデル

 株式会社ニトリホールディングスがビジネスモデルを構築するうえでコンセプトとしているのが、「製造物流小売業」と呼ばれる形態です。従来の「製造小売業」と呼ばれるビジネスモデルに自社で物流機能をプラスしている点で、他社ビジネスモデルと大きく異なります。

 原材料の調達から商品の製造、物流、小売までを自社でまかなうことにより、中間コストの削減を実現し、リーズナブルな価格で高品質な商品を提供しているのです。また、顧客フィードバックを調査や資材調達などを担当する部門にも共有することで、根本的な問題解決やサービスの改善に取り組んでいます。

 顧客には上質な住環境を、株主へは継続的成長による株主価値の向上を、地域社会へは雇用創出と地域経済の活性化を、従業員へは自己成長の機会を提供することで、ニトリグループ全体で「豊かさ」を届けることに注力しています。

経営戦略

 株式会社ニトリホールディングスは、目標「2032年に3,000店舗、売上高3兆円」の達成に向けて次の重点方針を掲げています。

  1. グループ成長軌道の確立と新たな挑戦
  2. お客様の暮らしを豊かにする商品・店・サービスの提供
  3. グローバルチェーンを支える組織と仕組み改革

 同社は成長に向けた積極的な投資を行うことで、継続的に利益を確保・増大することを目指してきました。その結果、現在は34期連続の増収増益を達成するとともに、過去5年間の平均ROEを4.5%の水準に到達させるなど、資本効率への意識の高さがうかがえます。

 戦略の第一段階としては、2018年から2020年にかけて、国際競争の激化に備えた海外での高速出店と成長基盤の確立に力を入れてきました。2021年から2022年にかけてはグローバルチェーンの確立に向けた経営基盤の再構築を進め、グローバル企業としての経営基盤の確立と企業価値の向上に努めています。

近年の大きな取り組み

 株式会社ニトリホールディングスでは近年、さらなる成長と事業領域の拡大に向けた取り組みが加速しています。

家電大手エディオンの株式取得

 2022年4月、 株式会社ニトリホールディングスは家電大手である株式会社エディオンとの資本業務提携を発表し、同社の株式を10%保有することとなりました。

 両社が培ってきた店舗や商品の開発ノウハウや、国内外における物流ネットワークの相互活用について検討を進めるとともに、買い替え時期が重なりがちな家具や家電の購入の相乗効果を狙います。

太陽光発電への参入

 株式会社ニトリホールディングスは、株式会社サステックと共同で太陽光発電に取り組むことを2022年7月に発表しました。

 株式会社サステックは、再エネなどの発電量の予測システムを開発・運用するサービスを展開しています。ニトリとの共同プロジェクトでは2030年度までに年間発電量を10万メガワット時に拡大することを目標に掲げており、ニトリの国内店舗や物流倉庫の屋根を活用する計画です。

社内IT人材を1000人体制に拡充

 2022年6月株式会社ニトリホールディングスは、IT部門の人員を2032年までに現状の約3倍となる1000人に増やすことを発表しました。

 DX化が進むなか、獲得が困難になりつつあるのがIT人材です。同社では年齢を問わず自社システム開発を内製化できる人材獲得に取り組んでおり、同社の平均年収を上回る報酬を提示することで、IT人材の拡充を目指しています。

目を通しておきたい株式会社ニトリホールディングスのトピックス

 その他、目を通しておきたいトピックスとしては以下が挙げられます。

2023年3月29日:【ニトリ】布団を「干す」から「お洗濯」へ!ご自宅にいながら布団の洗濯ができる宅配クリーニングと布団長期保管サービス開始

 ニトリより、2023年3月24日からニトリネットにて「布団洗いサービス」を開始した。

2023年3月22日:【ニトリ】3社協業での実証実験により再資源化が可能に!分別困難なカーペット・敷ふとんを再資源化する仕組みを構築

 ニトリより、2022年12月12日(月)〜2023年1月8日(日)の約4週間、神奈川県のニトリ8店舗でお客様より回収したカーペット・敷ふとんを再資源化する仕組みを構築した。

2023年3月10日:ニトリではじめる「サステナブルな暮らし」特集を初公開!

 環境にやさしい約1,000アイテムを、お部屋のシーン別にご紹介 ニトリより、2月上旬よりニトリネット上で公開した「ニトリではじめよう!サステナブルな暮らし」特集ページを公開した。

2023年2月21日:【ニトリHD】ワークライフバランスの推進:転勤なし・報酬の減額なしの「マイエリア制度」を3月より導入

ニトリグループでは、これまで、多様な人材が活躍できるようにワークライフバランスの向上に取り組んできたが、さらなる取り組みとして、新制度「マイエリア制度」を導入することを決定した。

2022年12月12日:ニトリ初!カーペット・敷ふとんを回収し、セメント材料にリサイクルする実証実験を開始

ニトリは、2022年12月12日(月)〜2023年1月8日(日)の約4週間、一部店舗で「カーペット・敷ふとんの回収・リサイクル実証実験」を実施する。

2022年11月7日:ご自宅のお部屋をイメージして購入できる!着せ替えシミュレーション【お部屋deコーディネート】がニトリネットに新登場

ニトリは、ニトリネットに新機能「お部屋deコーディネート」を導入した。

2022月10月18日:お客様とともに取り組む資源循環・再製品化「リサイクル羽毛ふとん」を10月24日(月)より一部店舗で数量限定販売開始

ニトリは、10月29日(土)より順次、関東・東海・関西地区30店舗で「リサイクル羽毛ふとん」を数量限定で販売する。

2022年10月14日:エディオンへのニトリ商品の供給開始に関するお知らせ

ニトリホールディングスは、エディオンとの資本業務提携における協業の一環として、エディオンへのニトリ商品の供給を開始する。

2022年9月30日:【ニトリ】「ネット限定マーケット」が9月30日(金)にNEW OPENニトリネットだけで出会える新商品、毎週商品続々追加!

ニトリは、2022年9月30日(金)10:00よりニトリネットサイト内に「ネット限定マーケット」をオープンする。

022年8月24日:ニトリ、マレーシアに3号店 東南アジアで出店加速

ニトリホールディングスは24日、マレーシア・クアラルンプール郊外のショッピングモール内で新店舗を25日開くと発表した。

2022年7月19日:カーテン購入前のお悩みを解決!オンラインで商品選びから測り方までトータルにサポートする新サービス開始のお知らせ

ニトリより、ニトリメンバーズ会員向けに、自宅にいながら、カーテン専門スタッフに窓まわり商品の購入について相談可能な新サービス「カーテンオンライン相談サービス」を紹介する。

2022年7月8日:ニトリグループ、Sustechと自社店舗及び物流倉庫の屋根上を活用した太陽光発電で連携

ニトリホールディングスと、Sustechは連携し、設置可能なニトリグループの店舗および物流倉庫の屋根上を活用した太陽光発電を開始することを発表した。

2022年4月4日:ニトリの2022年2月期EC売上は横ばいの710億円、EC化率は10.5%

ニトリホールディングスが発表したニトリの2022年2月期通販事業の売上高は前期比0.8%増の710億円。ニトリ事業の売上高は同5.3%減の6792億円だったため、EC売上高の割合は10.5%だった。

2022年3月31日:ニトリ、最高益967億円 島忠子会社化で売上高増加

家具・日用品販売大手のニトリホールディングスが31日発表した2022年2月期連結決算は、売上高が前期比13.2%増の8115億円、純利益が5.0%増の967億円で、いずれも過去最高を更新した。

まとめ

 日本最大級の家具販売サービスなどを手がける株式会社ニトリホールディングスでは、自社物流機能を備えた独自のビジネスモデルを確立しています。製造から販売、物流までを自社で完結させることで、マージンの発生を抑えて小売価格に反映しているのです。

 また、成長に向けた投資や海外進出にも積極的に取り組んでおり、グローバルチェーンの確立に向けた環境構築を進めています。

 近年は太陽光発電やIT人材の確保にも力を入れるなど、家具や雑貨などの製造・販売にとどまらず進化を続けていることから、今後も注目の企業といえるでしょう。

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EC研究所(イーシーケンキュウジョ)

ECについての情報を調べ、まとめてお届けします。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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