「カテゴリ自動付与」と「重要属性スコアリング」でコスト削減と属人化リスクの軽減へ
続いて、AIを使った商品情報の管理について、マクニカの太田氏から解説がなされた。
同社はアスクルのECサイトにおける商品情報の管理および最適化に関する業務をAIサービスで支援している。そのひとつが「カテゴリ自動付与」だ。同サイトでは、オフィス用品や医療・介護、製造業向けの専門商材など、1,000万点以上の商品を扱い、商品カテゴリも数千に及ぶ。同サイトへ商品掲載をするにあたっては、複数サプライヤーから提供される商品データに対して、それぞれ適切なカテゴリを付与した上で商品登録を行う業務が存在する。
「従来は、この業務をBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)および一部内製による人手で行っていましたが、商品点数が多いため時間がかかる上、専門商材はカテゴリの判断が難しいケースも多く、課題となっていました。そこで、マクニカのAIサービスを用いて各商品へのカテゴリ付与を自動化しています」(太田氏)
導入当初から、AIによるカテゴリ自動付与が難しい商品に関しては、人間の目検でカテゴリを付与した後にAIモデルへフィードバックを実施。学習データを増やしながらAIモデルをチューニングすることで、継続的に自動付与率を向上させている。すでにカテゴリ選定全体の約70%が自動化の対象になっていると太田氏は説明する。
「同サービスの導入により、アスクルのECサイトは商品登録業務がスピードアップし、商品掲載までの時間が大幅に短縮されました。BPOに依頼するカテゴリ付与の件数減少によるコスト削減や、属人化リスクの軽減にもつながっています」(太田氏)
アスクルのECサイトでは、もうひとつAIにより実現している作業がある。それは「重要属性スコアリング」だ。マクニカは、AIを用いて導入企業の自社ECサイトおよび外部サイトの検索データなどを取得し、対象商品の購入の決め手となる属性項目を抽出。その上で、各属性の重要度をスコアとして数値化したアウトプットを提供している。これは商品情報として優先的に記載すべき要素を示すことで、ラベルの最適化を支援するものだ。
「同作業により、従来把握できていなかった重要度の高い属性項目を新たに見つけ出すことができます。つまり、『顧客が何を重視しているのか』といったユーザーニーズをより明確に把握できるようになるということです。
たとえば、『シーリングファン』というカテゴリでは、製造ブランドや屋内/屋外用といった属性のほかに『羽の数』が高いスコアを記録していることがわかります」(太田氏)
こうした重要属性スコアを基に商品情報へ適切な情報を付与すれば、検索性の向上や購買判断に必要な情報の提供が可能となる。つまり、ユーザーが商品を探しやすく、買いやすいECサイトへ継続的に成長できるというわけだ。
なお、マクニカでは重要属性項目のスコアリングに加え、具体的な商品名(商品タイトル)やサイト上の絞り込み項目(フィルター項目)のレコメンドもアウトプットとして提供している。これらを基に重要度の高い属性項目を追加した商品名の候補と現状の商品名のスコアを比較し、担当者が変更項目を判断。最終的にはスコアの差異が大きな商品から変更を行うといった形でも活用が可能である。