どのシステムが良い談義は終わり 総合指揮で全体をプロデュースせよ
2020年、2021年を振り返り、事業者はECというチャネルを持ち運営すること、消費者はECを利用することが当たり前になった2年間だったと河野さんは言う。
「2022年はECと店舗を一体ととらえ、『お店をどうプロデュースするか』に考えかたを変える必要があります。キーワードとしては、Web3、メタバース、ライブコマースなどさまざまなものが出てきていますが、それらはあくまでお店の一部として活用するもの。どのようなお客様にどのようなお店を提供するか、CX(Customer Experience)を総合的にプロデュースすることが求められます。EC支援会社はECサイトを構築して終わりではなく、ECも含めた総合的、継続的な支援を行っていくことが求められると思います」
コロナ禍となったこの2年間、ECは成長ビジネスとして注目され、関連サービスが次々に登場した。リアルビジネス発の企業は、オンラインとオフラインを融合するOMO(Online Merges with Offline)に取り組んでいる。一方で、2010年代にオムニチャネルに取り組み始めてから「お店の正解」は導き出されていない。
「ECと店舗を一体ととらえ、総合的な『お店』をプロデュースしていくのは、既存のビジネスに最適化された大きな組織では難しいと感じています。コンパクトな組織で取り組み、徐々に成功体験を重ねていくしかないでしょう」
日本企業のデジタル活用はコロナ禍もあって活発になってきているが、誰もが認める大きな成功事例はなかなか生まれない。EC事業の責任者も限られたリソースで奮戦しているが、コロナ禍において数少ない成長チャネルであるECへの期待は高く、評価が伴っているかというと芳しくない。
それでもShopifyアプリをはじめ、OMOへのシステム投資のハードルが下がっているのは、デジタル活用やECで成功するには、追い風ではないだろうか。
「単一点で見れば優れたサービスが出てきていますが、それらをつなぎ合わせてオーケストレーション(組織化、編成、調整、(管弦楽用に)編曲などの意味を持つ英単語。ITの分野では、大規模で複雑な情報システムの管理などをソフトウェアによって効率化、省力化、自動化することや、その全体設計を行う行為として用いられる)できるスキルが足りていません。どのシステムが良いかの談義はすでに落ち着いています。的確な指揮さえできれば、極論を言うとどのシステムを用いても商売はうまくいくと思います」
とはいえ、Web3、メタバース、ライブコマースといったトレンドは気になるところ。どのように付き合っていけば良いのだろうか。
「流行りに敏感であることは商売人として重要なことです。ブームには一度乗ってみて、システムや手法を理解した上で、自分たちのお客様に喜んでいただけるものであれば採用し、とことんやり続けたところは成功できるでしょう。単に流行りだからという基準でやる・やらないを決めるのは、お客様のためにならない判断です。たとえば家具のように巨大な商品を扱う事業者にとっては、物理的な制限がないメタバースは可能性があると思っています」