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ECzine Day 2024 June

2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

季刊ECzine vol.20特集「Refine CX~EC起点のデータで創る次世代コマース体験~」

人がやらないことに可能性がある 野菜・獣肉を余すところなく使うロスターベルが築くエコシステム

 アップサイクルで新しい価値を生む。東京・広尾発プレミアムドッグフードブランドの挑戦に迫る。 ※本記事は、2022年3月25日刊行の『季刊ECzine vol.20』に掲載したものです。

 EC・店舗と購買チャネルが広がり、世の中にものが溢れる反面、SDGs(持続可能な開発目標)の実現に向けた取り組みを推進する企業・ブランドも増えている昨今。顧客と直接交流しながら製品が生まれる背景や作り手の想いを「物語」として伝え、共感を得ながらビジネスを成長させていくD2Cが世に広がりつつあることもその理由のひとつと言えよう。

 そんな潮流の中で、農作物被害対策により捕獲された鹿や猪などの害獣と規格外野菜を用いたプレミアムドッグフードブランド「Foodie Dogs TOKYO」を2021年9月に立ち上げ、アップサイクルなものづくりに挑んでいるのが株式会社ロスターベルだ。今回は創業の経緯や、環境保全とものづくりを両立させる難しさ、新興ブランドが顧客から信頼を得るために意識していることなどを同社で代表取締役を務める髙橋直人さんに聞いた。

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株式会社ロスターベル 代表取締役 髙橋直人さん

事業の種が生まれたのは前職取引先の相談から

 Foodie Dogs TOKYOが生まれるきっかけは2018年。髙橋さんが当時の勤務先で取引していた東京・築地の野菜卸を手掛ける企業から、「規格外野菜を活用できないか」と相談を受けたことにさかのぼる。

「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を控え、SDGsやESG(環境・社会・ガバナンス)投資への関心が高まっていた時期でした。CSR(企業の社会的責任)としてではなく、事業として取り組む余地はないかと考え、『動物園の飼料にする』『規格外野菜と明示して販売する』などの策を提案しましたが実現には至らず、といった状況下で、熊本県熊本市から生態系維持と環境保全のために捕獲された猪や鹿の肉を活用できないかという相談が寄せられたのです。

 そこで、『このふたつをかけ合わせて、ドッグフードを作るのはどうだろうか』と考えたのですが、これも委託先が見つからず……であれば、自分でやろうと一念発起し、事業を立ち上げることにしました」

 ドッグフードというカテゴリーに目を向けた理由は、法律や運用コストといった課題面もあるが、それ以上に「余すところなく商品化できる点にあった」と続ける髙橋さん。猪や鹿などの獣肉を人間向けに提供する際には、法律に基づいて厳格に衛生管理を行う必要があり、もちろんペット向けに製造加工する際もこうした決まりごとは存在する。しかし、肉食動物にルーツを持つ犬は噛みごたえのある食物を好み、人間が好まない部位や硬い筋も提供できるため、資源を無駄なく使えると判断したわけだ。

「Foodie Dogs TOKYOでは『ヒューマングレード』を謳っているため、人間も食べることができる品質のものを原材料として扱っています。内臓などを含め、人間向けにはマイナス要素となり廃棄されてしまうものも、ペット向けであればプレミアムな価値となり、選別や廃棄などのコストも削減できる。まさに寄せられた相談やご要望に応えられるビジネスモデルだと考えました」

 着眼点を変えることで、廃棄されるはずのものに新たな価値を与えるFoodie Dogs TOKYOの取り組みは、まさにアップサイクルに成功していると言えるだろう。しかし、「収益性や持続性など事業として軌道に乗せるまでの課題は山積みであった」と髙橋さんは振り返る。それでも前進を続けた理由は、「誰もやらないことにこそ可能性があると考えたから」だと言う。

「事業はやり始めてすぐに目に見える成果につながらなくても、やり続けることが大切です。Foodie Dogs TOKYOというブランドは、原材料が安定供給され、消費者から選ばれるようになることで継続的な運営が可能となりますが、そのためには社会全体に『廃棄していたものも利活用できる』という意識が根づく必要があります。私たちがひとつずつ課題をクリアし、事業を継続・拡大させる中で消費者1人ひとりの意識変革に貢献できればと思います」

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この記事の著者

伊藤 真美(イトウ マミ)

フリーランスのエディター&ライター。もともとは絵本の編集からスタートし、雑誌、企業出版物、PRやプロモーションツールの製作などを経て独立。ビジネス系を中心に、カタログやWebサイト、広報誌まで、メディアを問わずコンテンツディレクションを行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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