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店舗DXはなぜ必要?実施するメリットと各社の事例


 店舗DXとは、店舗型ビジネスにおけるデジタルトランスフォーメーションのことです。 今回は、店舗のDX化が重要とされている背景や、適応することで得られるメリットについて見ていきましょう。また、店舗DXを実践する企業の取り組み事例も併せて紹介します。

 インターネットやスマートフォンの普及により、消費者のニーズや行動が大きく変化している昨今、店舗型ビジネスにもさまざまな変革が求められるようになりました。そのひとつに「店舗のDX化」があります。

 今回は店舗DXの基本的な仕組みと重要性、DX化に取り組むメリットを詳しく解説します。 店舗DX化を実践する企業の事例を参考にしながら、具体的な取り組みの手がかりを探っていきましょう。

店舗DXとは?

店舗で洋服を見る女性

 ここではまず、店舗DXにまつわる基本的な事項として、具体的な定義や注目される理由、おもな種類について見ていきましょう。

店舗DXが注目を集める理由

 店舗DXとは、店舗型ビジネスにおけるデジタルトランスフォーメーション(DX)のことです。DXとは「オンラインとオフラインを融合した新たな顧客体験」を生み出す取り組みを指し、さまざまなビジネスシーンに定着しつつある大きな変革の流れともいえます。

 店舗型のビジネスにおいてDX化が注目を集める背景には、「モノに対する価値観の変化」と「デジタル技術の進歩」があります。

  以前はモノを所有することに一定の社会的なステータスがありましたが、近年ではサブスクリプションサービスや使い放題サービスといった「所有せずに利用できる」サービスの活用が増えています。

 自家用車の所有からカーシェアリングへの変化といった大型な製品だけではなく、衣類やコスメといった日用品に至るまで、所有せずに利用できる仕組みは幅広い分野で導入されています。こうした流れによって、現在はかつてよりも「モノが売れない」「モノを売りづらい」時代へと変化しました。

 また、スマホやキャッシュレス決済の普及などといったデジタル技術の進歩により、適応のハードルが下がっていることも大きく影響しています。

 このように消費者のニーズが変化している今、店舗による販売モデルにも大きな変革が求められているというのが、DX化が注目される主要な理由です。

2種類の店舗DX

 店舗DXには、オフラインとオンラインの2種類の取り組み方があります。

 オフラインの取り組みとは、来店した顧客に対するサービスの向上のことであり、おもに店舗の運用に関するデジタル化を指します。キャッシュレス決済やセルフレジ、専用アプリの導入など、店舗運営の効率化とユーザビリティの向上を目指す取り組みがその例です。

 一方、オンライン型の取り組みとは、「店舗体験のデジタル化」に軸足を置き、オンライン接客やバーチャル店舗などを通じて、来店したときの疑似体験ができる機会を提供するものを指します。

店舗DXに取り組むことで得られるメリット

メリットのイメージ

 店舗DXを実施することで、どのようなメリットを得られるのでしょうか。ここでは、大きく4点に分けて具体的に解説します。

顧客満足度を高められる

 ひとつ目のメリットは、顧客満足度の向上が期待できる点にあります。オフラインとオンラインの両面で施策を実行していくことで、有益なコンテンツをきめ細やかに届けられるようになり、実店舗に足を運んでもらいやすくなります。

 また、デジタル技術をうまく活用することで、顧客のニーズを丁寧にくみ取ることも可能になるため、サービス向上のためのヒントを見つけやすくなるでしょう。

作業の省力化や店舗の無人化につなげられる

 小売業界において解決すべき課題のひとつに、「慢性的な人手不足」があげられます。新たな人材を採用するのにはコストがかかり、必ずしも定着するとは限らないため、人的リソースをどのように確保すべきかが重要な問題点になりやすいのです。

 セルフレジなどのDX化を推し進めれば、店舗の省力化や無人化を実現でき、人手不足の解消につながります。また、商品の在庫管理、発注状況の共有なども一元化できるため、人為的なミスの予防、機会損失の回避、コスト削減がまとめて実現可能となります。

勤怠管理をスムーズに行える

 店舗のDX化は顧客向けの範囲だけでなく、事務手続きなどの内部作業にも及びます。

 たとえば、DX化によってシフト調整やタイムカード確認、給与計算といった勤怠管理を一元的に管理できるツールを導入すれば、作業管理者の負担を大幅に軽減することが可能です。 また、打刻忘れなどのミスもなくなるため、無用なトラブルを避けられるのも大きなメリットといえるでしょう。

キャッシュレス化を推し進められる

 店舗DXによってキャッシュレス化が進んでいけば、レジ打ち業務などの負担軽減につながります。加えて、キャッシュレス決済に慣れた海外からの顧客層を取り込みやすくなるなど、新規顧客の拡大につながるのもメリットです。

店舗DXで気をつけておきたいポイント

店舗DXについてディスカッションするイメージ

 店舗DXを実施するうえでは、実現に向けたコストやリスクにも目を向けておく必要があります。

導入コストや維持管理費がかかる

 店舗DX化の第一の課題ともいえるのが、導入コストに関する問題です。さまざまなシステムを導入するには、製品の取得コストやサービス開通のための初期費用などがかかります。

 また、各種サービスを使い続けるためには、毎月発生する維持管理費にも目を向けなければなりません。目に見える成果が出るまでにはそれなりに時間がかかるので、場当たり的に取り組むのではなく、システムの維持管理費とのバランスも考えて戦略的に実践する必要があります。

時間をかけて取り組んでいく必要がある

 DX化を進めるうえでは、従業員の理解や協力が欠かせません。DX化によって新たなフローが構築されれば、従業員が慣れ親しんできた業務を大幅に変更することとなるため、スタッフの理解をなかなか得られないこともあるでしょう。

 とはいえ、急速に推し進めようとするとスタッフの反発を招くこともあるので注意が必要です。特にデジタルに馴染みのないメンバーがいる場合には、時間をかけて目的や使い方などを丁寧に共有していきましょう。

店舗DXの具体的な事例

店舗DXの事例についてセミナーで学ぶ女性

  店舗のDX化に取り組んでいる企業にはどのような結果が出ているのでしょうか。 ここでは具体的な事例を通して理解を深めていきましょう。

ディッシャーズ

 全国展開しているハンバーグレストラン「びっくりドンキー」の新たな業態として、株式会社アレフがオープンした「ディッシャーズ」では、店舗運用におけるデジタル化推進が徹底されています。

 店内では各席に設置されたタブレット端末から注文を行い、会計は伝票のQRコードをセルフレジにかざして行う仕組みとなっているため、顧客とスタッフが接触する機会はほとんどありません。

 スタッフが担当するのはあくまでも調理と配膳のみなので、「受注ミスの削減」「人件費削減」「会計速度の向上」といったメリットが生まれます。また、スタッフの負担が軽減されたことにより、ユーザーに対しても新たな価値を提供できる仕組みとなっています。

 さらに、タブレット端末を使ってハンバーグの種類、ソース、トッピングなどの注文内容を自由にカスタマイズできるサービスもあり、値段やカロリーを自分好みに調節することも可能です。

 このような新たな店舗体験の提供が話題となり、口コミやSNSをきっかけとした集客にもつながっています。

マルエツ

 株式会社マルエツは、2021年の3月に法人向け無人店舗サービスの「スマートプチ」1号店をオープンしました。オフィスへ出勤する従業員への福利厚生として導入されたサービスであり、スマホ決済アプリへの対応によって無人化が実現されています。

 店内には食料品や飲料、文具、生活消耗品などが数百品目並べられ、事前予約をすれば弁当の注文配達なども可能です。在庫確認や商品補充といったメンテナンスは、マルエツの近隣店舗の従業員が週に2~3回の頻度で行う仕組みになっています。

 スペースに合わせた商品設置が可能なため、オフィス以外にも工場や配送センター、病院などの職域での活用が想定されています。

長谷工コーポレーション

 マンションの設計や施工、管理などを手がける株式会社長谷工コーポレーションでは、LINEアプリを活用したマンション探しのサポートサービス「マンションFit」を取り扱っています。居住地や家族構成などの5つの情報を入力するだけで、過去の取引データからAIが分析を行い、条件にピッタリ当てはまる物件を紹介するサービスです。

 ほかにも「すぐラク見学」というサービスでは、LINE上から簡単にモデルルーム見学の予約を取ることが可能です。名前と電話番号の入力だけで予約が完了し、営業担当者なしの非対面型見学スタイルも選べるので、好きなスタイル、好きなペースで内見ができる仕組みとなっています。

さらに、ほかの物件を探したい場合や購入について具体的な相談をしたい場合は、住まいのアドバイザーに無料で相談できるサービスもあるなど、目的や相談内容に応じて接触方法を選ぶことが可能です。

東急セキュリティ

 新たな顧客体験を創出する店舗DX以外にも、運用にメリットを発揮する店舗DXもあります。

 たとえば、東急セキュリティ株式会社が提供を開始した入退館システムでは、マネジメントテンキーを接続させたAI顔認証機能付き体表面温度検知カメラシステムを使い、非接触での入館を可能にしました。また、顔が認識されない場合には、ワンタイムパスワードの発行によって入館することも可能です。

 入館タグやカードの管理、接触機会の省略など、これまで無人店舗が抱えてきた課題を解決するシステムとして期待されています。

まとめ:店舗DXに取り組んで顧客満足度を高めていこう

 店舗DXは、顧客に新たな体験や価値を提供するための重要な仕組みです。対応にはそれなりのコストがかかりますが、顧客満足度を向上させるだけでなく、小売業界が抱える人員不足などの課題を解消するきっかけにもなります。

 DX化に成功している企業や事業を参考にしながら、自社のサービスやターゲット層に適した手法を検討してみましょう。

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EC研究所(イーシーケンキュウジョ)

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