OMOの真の可能性は顧客の生活に入り込むこと
新型コロナウイルスワクチン接種率の上昇とともに、経済活動も少しずつ戻り始めている2021年の暮れ。直接商品に触れたり、体験を求めたりといったオフライン特有の購買行動に対する需要回帰を目にして、「元の世界に戻った」と安堵する人もいるかもしれないが、河野さんは次のように警鐘を鳴らす。
「コロナ禍で、多くの人がオンラインやデジタル活用の利便性を体感しました。便利な手段が増えれば、人はより楽なほう、つまり使いやすい店舗やサービスを求めるようになっていきます。ECと実店舗を区別せず、ひとつの『お店』としてとらえる人もすでにいる時代です。デジタルツールをただ使う、単にコミュニケーションをオンライン化するのではなく、顧客のほうが先に行っているという認識を持ち、より良い体験構築をしなくてはなりません」
河野さんは「OMOはオフラインとオンラインの売場をただ融合するのではなく、顧客の生活の中に溶け込まなくてはならない」と続ける。EC化が進むアメリカや中国と異なり国土面積が小さく、比較的容易に店舗へアクセスできる日本においては、EC化も他国の前例通りに進むとは考えにくい。実際にワークマンやしまむらではEC購入した後に店舗受取を活用する顧客も多く、「選べる状況」にすることの大切さも垣間見られる。
「たとえば、アウトドア用品であれば平日は働いていて受取ができない上、置き配もスペースの関係で難しいことから、出かける当日に頼んだ商品を車に積み込み、そのまま現地に行きたいという需要が存在するでしょう。また、購入手続をしたらすぐに手元に欲しい、商品は必ず手に入れたいからEC購入するが梱包資材の処分が手間、環境に配慮したいといった要望に応えるには、EC×店舗でソリューション提供する選択肢が浮かび上がります。ここで大切なのは、あくまで『選択式』であることです。顧客が選べる買い物は、生活のシチュエーションの至るところに入り込むことができます。これこそが、OMOの真の可能性と言えます」