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マーケティングも見てくれと言われたら?EC責任者のキャリアステップ

第4回
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2019/05/09 07:00

 本コラムは、EC事業部に異動した実店舗経験者が抱きそうな疑問に、4回の連載にわたって応えようというものです。実店舗の運営はわかるけれどもECはさっぱりという方が、EC運営のノウハウを取得し、実行して収益を改善し続けられるようになることを目指します。第4回となる今回は、「EC責任者のキャリアステップ」です。

 あなたはEC事業部長就任後、さまざまな改善に取り組んできました。結果として、2年で黒字化することができました。しかしながら、大きな問題が発生しました。取引している宅配業者からの値上要請です。これに応じないと取引を切られるという世間の情勢で2割の大幅値上げを受けざるを得ない状況となりました。

物流コスト上昇対策

 労働人口の減少をはじめとした日本の現状から宅配費用が増加することは致しかたありません。また、今後も上昇することはあっても値下がりすることは考えにくい状況ですから、宅配業者の相見積もりのような安易な方法では対応できません。

 対策としては、送料無料バー変更、送料無料(配送料事業者負担)廃止ということをやる前に、1.荷姿改善、2.庫内作業改善の2点を行います。

1.荷姿改善

 荷姿によるコスト削減は「まとめる」と「最適化」のふたつの方法があります。

 まずは「まとめる」です。1ピースの商品をベンダーから出荷センターに納品して棚に収納し、お客様の注文が入った際にピックアップするには十数円~数十円の作業コストがかかります。1ピース100円を切るような低単価商品は、梱包スペースまで受注商品を持ってくるまでで利益をほとんど吐き出してしまいます。

 この対策として低単価商品は12個単位などのボール販売や○個パックのバンドル販売に絞り込むといった方法が有効です。100円の商品でも5個パック販売であれば100~200円程度の粗利益を得られ、バンドル作業を含めた数十円のコストが吸収できるわけです。

 また、ひとりのお客様が1日に複数回の買い物をされることがあります。こういったお客様が多いのであれば、システム化して前の注文にまとめてもらうお願いをするのも有効です。お客様の立場になると、宅配業者対応を何回もするよりも一度に受取れたほうがよいので、コストだけでなく顧客体験も向上します。

 「最適化」でコスト効果が大きいのは、ネコポス、ゆうパケットなどの小型商品に使える低価格サービスです。宅配便小サイズの2倍以上安く出荷することが可能になります。ただし、それぞれの商品マスタに容積データがないと、お客様の発注時点でこれらを選択するということは難しいです。とはいえ、扱っている商品によっては有効な手段になりえます。また、PB商品開発をしている会社であれば、商品およびケースのパッケージサイズを60サイズ、80サイズ……の各ダンボール規格に合わせることで1サイズ小さなサイズでの出荷件数が増加します。

図の例であれば梱包がボトルネックなので、自動梱包機導入の検討をする

2.庫内作業改善

 実店舗の売場とEC出荷センターでは、棚管理の方法が異なります。実店舗では商品の関連性や売れ行き、店内回遊(多くの売場を見てほしい)を考慮しながら棚配置が決定するわけですが、出荷センターはいかに庫内の人・物の移動距離を減らすかがポイントとなります。

 まず、宅配業者への荷渡し場所をスタート地点に設計していきます。荷渡しの前作業は梱包です。梱包の前に方面別仕分け、宅配事業者別仕分けが入ることもあります。荷渡し場所と梱包場所は近いほうが望ましいので、自然と場所が定まります。

 梱包場所と商品は近いほど人・物の移動距離は少なくなりますので、梱包場所に近い場所に売れ筋商品を配置すると効率が良くなるわけです。

 事業規模によっては、機械化も有効な手段です。どこを機械化するかは庫内作業におけるボトルネックがどこにあるかを見極めることが必要です。梱包がボトルネックであれば自動梱包機の導入を検討し、ピックアップがボトルネックであればピックアップロボット、仕分けであればソーターを検討します。いずれも大きな投資となるため、前後工程も含めた作業内容の変化、コストを見極める必要があります。

目の前に社長室のドアがある。社長室に呼び出されたのは、EC事業部長をやれと言われて以来3年ぶりである。あの時とは異なり、自信をもってノックした……。

社長  長年、赤字事業だったEC事業が黒字化したのは君のおかげだ。ありがとう!

あなた ありがとうございます。社長に事業を任せていただいたおかげでデジタル分野の知識がつき自分でも成長を実感しております。宅配便値上げは厳しかったですが、部下が頑張ってくれたおかげで何とかなりました。

社長  期待に良く応えてくれた。ところで、うちのECサイトは集客できるようになったわけだが、店のお客様向けサイトは他社に比べて見られていないという話を聞く。

あなた 現在、うちのお客様サイトではいち押し商品以外の情報が不足しています。ECサイトの商品マスタを活用して商品カタログにしてみてはいかがでしょうか。また、SNSアカウントはあるものの担当者個人の対応ですので、こちらを的確に運用することで流入を図ることはできると思います。

社長  なるほど。それから、新聞を取らずにスマホでニュースを見る人が増えたので、新聞折り込みチラシの効果が落ちてきている。代わりの手段も欲しいと思っているのだよ。どうしたら良いと思うかね。

あなた サイトでは店舗ごとのチラシを見ることができません。店舗情報を整備する一環で、ウェブチラシを掲載し、そのお客様がよく行く店舗を登録することができるようにしてはどうでしょう。店舗情報マスタを整備すれば、スマホの地図アプリで検索したときに表示を優先表示する対策(MEO)も打てるようになります。

社長  君はいろいろ新しいアイデアを持っているようだな。実はうちになかったマーケティング部を新設するのだが、君がやってみなさい。

あなた (おもしろそうな仕事だな……)かしこまりました。ただし、デジタルマーケティングだけの部署ではなく、あらゆる接点でお客様とグループを繋ぐ統合マーケティングにおける組織に横串をさす部門とさせていただきたいです。

社長  わかった。『ドン・シュルツの統合マーケティング』(ドン・シュルツ他/ダイヤモンド社)は以前読んだよ。来店目的が比較的明確な食品スーパー事業はともかく、ドラッグストアは化粧品でキレイになりたい人、健康不安のある人、新しいリーズナブルな商品を探しにくる人とさまざまだ。1人ひとりのお客様と双方向コミュニケーションが必要な時代になっているから、顧客・見込み客の特定からプロセスを始める統合マーケティングが必要な時代になってきたわけだな。

あなた はい、おっしゃるとおりです。EC事業は他の方に引き継ぎをするということですね。いつ頃からでしょうか。

社長  いや。君が来るまで赤字続きだったのだから、EC事業も引き続き見て欲しい。兼任で頼む。

あなた (断れないだろうな……)はい、がんばります。

 このようにして、EC事業部長と兼任してマーケティング部長も兼ねることになったあなた。まずは中期で達成すべきなるべき姿・目標を設定し、そこに至る道筋すなわち戦略を作る必要があります。

この記事は、紙の定期購読誌『季刊ECzine』に掲載した限定公開の記事です。
続きは以下の方法でお読みいただけます。


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連載:トップに「いきなりEC責任者」やれと言われたら1年でキミを育てるEC郡司塾

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