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季刊ECzine vol.23特集「Social merges with OMO~垣根なきコマースを実現する発想とテクノロジー~」

地方にもデジタル活用の商機はある 顧客の見える化に積極的な薬王堂 店舗・マーケ・経営へのメリットとは

 データのフル活用に向け、基幹システムを刷新。スタートアップとの連携も積極的に。 ※本記事は、2022年12月25日刊行の『季刊ECzine vol.23』に掲載したものです。

 「地域の皆様の美と健康と豊かな暮らしに貢献する」という使命を掲げ、東北6県でバラエティ型コンビニエンス・ドラッグストアを展開する「薬王堂」。地域密着型で展開する同店の店舗数は372(2022年9月末時点)にのぼり、人々の暮らしに欠かせない存在として定着している。

 そんな薬王堂は、実はドラッグストアチェーンの中でもいち早くDX推進に着手した企業だ。2012年からバックヤードの仕組みを整えるだけでなく、顧客接点においてもアプリでさまざまなサービスを提供するなど他社との差別化、データの蓄積・活用に積極的だ。こうした取り組みを進めてきた株式会社薬王堂ホールディングス 常務取締役の西郷孝一さんに話を聞いた。

株式会社薬王堂 ホールディングス 常務取締役 西郷孝一さん

有用なデータを手元に置くため基幹システム刷新を決断

 2012年に、花王株式会社から株式会社薬王堂に入社した西郷さん。前職で商品のマーケティングを担当し、販促領域の試行錯誤を重ねてきたが、「店頭にものを並べるだけでは、新しい商品の良さに気づいてもらえない」と感じる瞬間が多々あったと言う。

「とくに生活に密着した商品は、いつもの店で決まったものを購入するお客様が多く、態度変容を起こすきっかけが必要と考えていました。当時はPOPなどの販促物を使って『実施したつもり』になっていましたが、店頭が荒れる要因になるなど果たして効果があるのかと疑問に感じていたのも正直なところです」

 そこで西郷さんは、同社入社後に店内での販促物掲示を廃止。導線を広げるなど、シンプルな売り場作りを徹底した。当時はスマートフォンの普及にともない消費活動も変わり始めていた時代。賛否はありながらも「従来どおりなことをやっても意味がない」と考え実施した結果、売上が減少することはなかったそうだ。

 「先入観や慣習を捨てて新たな行動を起こすこと、裏づけとなるデータ収集の大切さを実感する良いきっかけになった」と続ける。

「販促物を手放せないのは明確な根拠があるわけではなく、『訴求しなければ売上が落ちる』という思い込みもあるのではないでしょうか。しかし薬王堂の立場から見ると、売り場の乱れはお客様の購買意欲を損なってしまう可能性があります。すると、管理に要するコストとそこから生み出される売上が適切なのか考えなくてはなりません。

 お客様を含め、世の中にさまざまな変化が起きる中では、こうした施策の効果をひとつずつ検証し、変更・改善する必要があると考えました。そのためには、適切なデータの取得と分析環境が必要です。これらを実現する基盤が必要と考え、抜本的なシステム改革に着手しました」

 前職時代から「小売企業はもっとも消費者に近いポジションを確立しながらも、データ収集・活用ができていない」と感じていた西郷さん。システムごとにベンダーが異なること、必要とするデータを取得するためにコストを要するケースが多いことに原因があると考えたが、「これらを解消できる環境構築には数年を要した」と語る。

「とくに大変だったのは、基幹システムの切り替えです。移行前後の約2ヵ月間、ベンダーの担当者が当社に常駐して作業を進めてくれました。このほかにPOSシステムやID管理システムも、私の入社後に刷新しています。これら3つのシステムをどう構築するかが、小売DXの鍵と言えるでしょう」

 しかし、基幹システムは小売企業の生命線とも言えるもの。これらにメスを入れることにためらいはなかったのだろうか。

「データ活用以外に、株式会社PALTACが運営する物流センターへの移行も後押しするきっかけでした。同社の基幹システムはすでにほかの小売企業でも導入実績があり、基幹システムと物流が密接につながることによるシナジーに期待できたこと、費用感や要望への対応速度、勘どころも当社の希望とマッチしていたため、踏み切ることができました。

 もしかするとリスクを過度に恐れることなく決断できたのは、当時の私がまだそこまでシステムに明るくなかったことも幸いしたかもしれません。しかし、世の中に選択肢が増えた今こうした決断ができるかと言われると、非常に難しさを感じます。あの時に踏ん切りをつけてよかったと思いますね」

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この記事の著者

伊藤 真美(イトウ マミ)

フリーランスのエディター&ライター。もともとは絵本の編集からスタートし、雑誌、企業出版物、PRやプロモーションツールの製作などを経て独立。ビジネス系を中心に、カタログやWebサイト、広報誌まで、メディアを問わずコンテンツディレクションを行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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