福岡県を拠点に、全国271店舗(2022年4月時点)の店舗を展開するスーパーマーケットチェーン「トライアル」。同チェーンでは2018年より、買い物時に用いるカートでそのまま会計まで済ませることができる「スマートショッピングカート」や顧客の行動把握を容易にする「リテールAIカメラ」を導入したスマートストア化を進めている。こうしたソリューション開発の中核を担うのが、株式会社トライアルホールディングス傘下に属する株式会社Retail AIだ。
「テクノロジーによって、新時代のお買い物体験を生み出し、流通の仕組みを革新する」というビジョンを掲げ、グループ内のみならず日本の流通・小売業の進化を目指す同社の取り組みや業界の現状、未来についてCEOの永田洋幸さんに話を聞いた。
目指す先は流通・小売業の革新
IoT/AI技術を使い、流通・小売業の改革に挑むRetail AI。トライアルグループでのDX推進、スマートストア展開を手掛けるほか、グループ内で蓄積したノウハウ、知見を活かして他企業へのソリューション提供を行っている。
各カートにタブレットを搭載し、商品スキャンやセルフレジ、顧客の購買情報に合わせたレコメンドやクーポン発行を実現するスマートショッピングカートは63店舗に約6,500台(うち2店舗約100台がグループ外店舗からの外注)、欠品防止や売れ残り、廃棄ロスの削減、棚割りの最適化に役立てることができるリテールAIカメラは65店舗に約3,900台導入(2022年4月時点)。いち早くスマートストア作りに取り組んできたと言えるが、永田さんはあくまでも「トライアルの体験だけを向上させたいのではなく、流通・小売業の革新が目的」と語る。
「経済産業省の『商業動態統計調査』によると2020年の小売販売額は約146兆円ですが、このうち約30%にあたる40兆円近くが自らの売上を上げるための生産やリベート、巨額の広告投資といった『ムダ・ムラ・ムリ』だと当社は考えています。トライアルグループは、これをITの力で最適化しようと長年取り組んできました。その結果が現在につながっています」同グループの歴史をたどると、1990年代からID-POSデータを活用し、10年前からメーカーと共有することでBtoB取引におけるムダ・ムラ・ムリを削減するなど、長年かけて業界の効率化に取り組んできた。グループ共通のビジョンでも「ITの力で流通を効率化させる」と掲げ、先見的な改革を進めてきたことを踏まえると、「リテールDX」という言葉が生まれる以前から動いていたことがうかがえる。ある意味、ようやく時代が追いついてきたと言い換えることもできるだろう。