矢野経済研究所は、国内ポイントサービス市場を調査し、現況、参入企業の動向、および将来展望を明らかにした。
市場概況
2019年度の国内ポイントサービス市場規模(ポイント発行額ベース)は、前年度比106.0%の2兆69億円まで拡大した。複数の共通ポイントを導入する事業者数の増加や、キャッシュレス・消費者還元事業などを背景としたキャッシュレス決済に紐づいたポイント付与などを通じて、ポイント発行額は拡大している。
2020年度は、新型コロナウイルスの影響で消費が落ち込む見込みで、ポイント発行額が大きく減少する業種も出てくる一方で、マイナポイント事業がその減少分を一部補填する見通し。2020年度の国内ポイントサービス市場規模は前年度比103.2%の2兆720億円、2021年度の同市場は同100.8%とほぼ横ばいに推移すると予測する。
注目トピック
コンビニ業界でのマルチポイント化の状況
小売業者などで、複数の共通ポイントサービスを導入する事業者が増加している。そのなかでも、コンビニエンスストアでの動向が注目されている。
これまでTポイントを軸にポイントサービスを提供してきたファミリーマートが2019年11月からdポイントと楽天ポイントを導入したことにより、消費者の行動がどのように変化するか、つまり、ファミリーマートで今までTカードを提示していたユーザが、楽天ポイントとdポイントの蓄積にどの程度シフトするか、ということが共通ポイント市場の争点のひとつとなると言えるという。
ローソンやファミリーマートのように、そのほかのコンビニエンスストアも複数の共通ポイントを導入すれば、消費者は購買時の共通ポイント付与を当たり前と捉えるようになると考えられる。そのため、ハウスポイントを発行しているコンビニエンスストアにおいても、共通ポイントの導入およびマルチポイント化(1社で数種類のポイントを発行)が進む可能性がある。
将来展望
2024年度に国内ポイントサービス市場規模(ポイント発⾏額ベース)は2兆4,193億円に⾄ると予測。今後も複数の共通ポイントを導⼊する事業者が増加し、ポイント発⾏額は拡⼤していくとみる。新型コロナウイルスの影響でポイント発⾏額が減少した業種においても徐々に消費が回復することで、このような業種におけるポイント発⾏額は増加に転じる⾒込み。
ハウスポイントを発⾏する企業は、ポイント付与による販促や、ID-POSを⽤いた顧客分析から個客マーケティングの実施に結びつける取組みを引き続き進めていくと推察される。
⼀⽅で、共通ポイントを導⼊する企業においては、1社で複数の共通ポイントを発⾏するケースがますます増えていくと予想。多くの加盟店で共通ポイントを使⽤できるようになれば、会員にとっては、購買時の共通ポイントの付与が当たり前となるので、共通ポイントサービス事業者には他社との差別化を図るために、会員の利便性を向上する取組みや、加盟店に対してはポイント発⾏費⽤に対する販促効果やデータ分析を通じたマーケティング施策の送客効果の向上などが求められる。
また、ロイヤリティ マーケティングとKDDIが資本業務提携した結果、4つの共通ポイントサービスが携帯キャリアと紐づけられた。今後共通ポイントサービス市場は、携帯キャリアにおける会員獲得競争の結果によって、利⽤される共通ポイントが変化していく可能性が⾼いと考える。
調査概要
- 調査期間:2020年4⽉〜7⽉
- 調査対象:共通ポイントサービス提供事業者、マイレージサービス提供事業者、ポイントサイト運営事業者、ポイント関連ソリューションベンダなど
- 調査⽅法:同社専⾨研究員による直接⾯接取材、電話・e-mailによるヒアリング、ならびに⽂献調査併⽤