ダイナミックマッププラットフォーム、ソフトバンク、ビーブリッジの3社は、空間IDを活用した、配送ロボットとARナビゲーションのデータ共有に関する実証実験を、2023年2月に東京ポートシティ竹芝で実施した。なお、本実験は、デジタル庁から受託した「デジタルツイン構築に関する調査研究」の一環として行われたものである。
空間IDとは、3次元空間をボックス状に切り分けることで、空間情報の基準が異なる場合でも、一意に位置を特定できる規格のこと。空間IDに静的・動的な情報を紐付けると、空間IDをキーにして空間情報を簡易に統合・検索できる。また、データの高速処理も可能になる。本実験は、この空間IDを活用して行われた。
ロボットの自律走行や、ARナビゲーションのようなアプリケーションの稼働には、位置情報や建物の情報などを取得して地図を作成し、事前にルート設定を行う必要がある。しかし、地図の規格や基準となる座標が事業者によって異なるため、別の事業者が同じエリアでロボットなどを導入する場合でも、新たに地図の作成や位置情報の登録を行わなければならない。その工数やコストが、配送ロボットなどの導入障壁となっている。
そこで3社は地図の作成や位置情報の登録などの作業効率化を目的に、共通の規格である空間IDに空間情報や地図情報などのデータを紐付け。ダイナミックマッププラットフォームが開発した「地図・GIS基盤システム」を通して、異なる企業のシステム間でデータを共有した。
具体的には、空間情報(ロボットの配送地点や建物内の情報)や地図情報などのデータを紐付けた。その結果、ソフトバンクが開発した自律走行ロボット、ビーブリッジが提供するARナビゲーションアプリといった、異なる企業のシステム間でデータが共有できた。
この仕組みで共有されたデータを活用すれば、地図の作成や位置情報の登録などの作業を効率化できる。たとえばソフトバンクの場合、従来自律走行ロボット用の地図作成にかかっていた工数を、最大8割程度削減できると考えられる。また、ビーブリッジの場合、効率よく、正確なARナビゲーションの提供が可能となる。
今後3社は、実証実験で得られた知見をもとに、様々な企業のシステム間でデータの共有を進める。それにより、自律走行ロボットをはじめとする、空間IDの活用事例を拡充していく。
実証実験の内容
空間情報やロボット用の地図などを空間IDに紐付け
ソフトバンクがロボット用の地図を作成。ロボットの出発地・経由地・目的地や建物の情報などの空間情報、作成した地図の情報を空間IDに紐付け、地図・GIS基盤システムに登録した。
空間IDを活用した自律走行ロボットによる配送
ソフトバンクが開発した自律走行ロボット「Cuboid」を活用。地図・GIS基盤システムを通して、空間IDに紐付いた建物の情報を読み込むとともに、登録した出発地・経由地・目的地のデータをもとにルートを設定して、物資の配送を行った。
空間IDに紐付いたデータの共有
空間IDに紐付いた空間情報や地図の情報を、異なる企業のシステムでも活用できるか検証するため、地図・GIS基盤システムを通してビーブリッジにデータを共有した。
共有データを活用したARナビゲーションの実施
ビーブリッジが地図・GIS基盤システムを通して共有されたデータを活用し、ARナビゲーションアプリで建物内の目的地までのルートや店舗情報などを表示。人による配送のサポートを行った。
各社の役割
- ダイナミックマッププラットフォーム:地図・GIS基盤システムの提供
- ソフトバンク:自律走行ロボットの提供と自律走行システムの運用、ロボット用の地図の作成、空間情報やロボット用の地図情報の空間IDへの紐付け
- ビーブリッジ:ARナビゲーションアプリの開発、ARナビゲーション用の地図の作成、ARナビゲーションに必要な情報の空間IDへの紐付け