NTTデータ経営研究所は、メタバースなどのWeb3を活用した新たな購買体験に注目が集まっていることを背景に、20〜40代の国内の生活者を対象にバーチャルショップの利用に関する意識について、NTTコムオンライン・マーケティング・ソリューションが提供する「NTTコムリサーチ」登録モニターを対象に、「バーチャルショップに関する意識調査」を実施した。
同調査は、バーチャルショップサービスやそのサービスで提供されている購買体験について、国内の生活者がどの程度認知しているのか、また、どのような利用意向やサービスに対する期待を持っているのかなどを把握することを目的に実施された。
用語定義
バーチャルショップ
3Dスキャン・モデリングやVR・AR等を活用したWeb上の仮想店舗で、アバターを用い店舗回遊や商品購入をするサービスの総称
モール型バーチャルショップ
仮想空間内に出店された複数の店舗をアバターとして回遊しつつ、スタッフや他のユーザーとのコミュニケーションや商品・サービスをVR・AR等で確認、購入することが可能なバーチャルショップサービス(例:メタパ)
イベント型バーチャルショップ
仮想空間内で開催されているバーチャルイベントをアバターとして回遊しつつ、会場内の3Dモデルや現実世界の商品等を試着、鑑賞、購入することが可能なバーチャルショップサービス(例:バーチャルマーケット(Vket))
他メタバースサービス出店型バーチャルショップ
メタバースサービス(Roblox、cluster、XR CLOUD等)に出店された店舗にて、メタバースサービス上のユーザーとしてショッピングが可能なバーチャルショップサービス(例:そらのうえショッピングモール)
主な調査結果の詳細は、次のとおり。
バーチャルショップの認知度・利用率について □1-1. バーチャルショップの認知度は3割程度に留まる
バーチャルショップの認知について、知っていると回答した生活者は約3割(27.4%)に留まった。
SNSやメディアなどにおける「情報収集」、「情報発信」の頻度別でバーチャルショップの認知度を比較。その結果、どちらも1日1回以上行っている層の6割強(64.4%)が知っているという結果となった。一方で、情報収集・発信のどちらかを1回未満しか行っていない層では約3割(30.7%)、どちらも1回未満しか行っていない層では1割以下(6.7%)となった。現時点では一部の情報感度の高いユーザーにのみ認知されている段階と考えられる。
バーチャルショップを認知している人の半数がバーチャルショップの利用経験有り
バーチャルショップを認知している人の約半数(44.2%)がバーチャルショップを利用したことがあると回答した。
⼥性の認知度向上と、男性や20代⼥性を中⼼とした顧客体験設計が重要 認知度の調査については、男性はどの世代も3割程度(20代43.2%、30代29.9%、40代35.2%)が認知しているのに対し、女性は30~40代では2割程度(30代23.8%、40代23.6%)に留まっており、特に20代女性は2割以下(16.7%)と、全年代でもっとも低い結果となった。
認知層に対して行った利用状況の調査では、20代女性は購入まで至っている割合が約半数(52.9%)となっており、ほかの性別、世代と比較しても購入まで至る確率が高いことが明らかに。また男性に関してはどの世代も約半数(20代50%、30代57.5%、40代48.2%)が利用まで至っていることがわかった。
バーチャルショップ利用者の約7割が月に1回以上利用
バーチャルショップ利用者の利用頻度はモール型、他メタバースサービス出店型ともに約7割(モール型69.0%、他メタバースサービス出店型77.4%)のユーザーが月に1回以上利用していた。
バーチャルショップで購入・購入を検討した商品 「食品・飲料・生活用品」「衣類・ファッション・装飾品」がトップ
全体の傾向として、「食品・飲料・生活用品」「衣類・ファッション・装飾品」の購入が多い傾向だった。
バーチャルショップの分類別で見ると、イベント型バーチャルショップでは「家具・インテリア・家電」が3割強(33.3%)と、ほかと比較して高いため、関与度の高い耐久消費財でも商品需要があると推測される。
他メタバースサービス出店型バーチャルショップでは「衣類・ファッション・装飾品」のほかに「ビューティ・コスメ・ヘルスケア」「スポーツ・楽器などの趣味雑貨」の割合が高く、自分磨きや趣味へのこだわりが強いユーザーが多いと考えられる。
モール型バーチャルショップでは「携帯・パソコン・周辺サービス」の利用が見られ、物品以外のサービスを利用するユーザーも存在することがうかがえた。
バーチャルショップの利用意向とその理由 利用未経験者は利便性、利用イメージが不明確なため、7割が利用意向無し
どのサービスも利用未経験者の7割以上(モール型74.3%、イベント型72.6%、他メタバースサービス出店型74.5%)が、利用してみたいとは思わないという結果に。
その理由は通常のECサービスで十分、サービスの使い方や利用しているイメージが沸かない、などがトップとなった。
利用経験者は商品イメージが沸きやすい点をメリットと感じ、9割が継続意向あり
各サービスの利用経験者の9割以上(モール型94.4%、イベント型95.1%、他メタバースサービス出店型90.3%)が引き続きサービスを利用したいと回答しており、バーチャルショップに対してポジティブな印象を抱いていることが判明。その理由として、VR、ARなどによって商品のイメージが沸きやすいが上位となったため、通常のECサービスと異なり商品を確認できる点をメリットに感じているユーザーが多いと考えられる。
一方で、商品・サービスが気に入ったためと回答した人は2割弱(モール型16.4%、イベント型15.4%、他メタバースサービス出店型14.3%)に留まっており、ユーザーが商品・サービス自体よりもバーチャルショップを利用することによる体験を求めていると推察される。
バーチャルショップの分類別で見ると、イベント型ではショールーミングを楽しむことができるといった理由がもっとも多く回答されていることから、バーチャルショップを一種のお祭りや物産展のように捉えて楽しむ傾向にあると考えられる。
また、他メタバースサービス出店型では、商品・サービスの利用で他のプレイヤーと自分を差別化できたと感じたとの回答が多く見受けられた。
サービスへの期待 オンライン接客品質の向上がサービス継続利用の鍵に
各分類の改善点として、オンライン接客品質の改善と回答した人がもっとも多い結果に。オンライン上という制約があり、ユーザーと実際に対面できないなかで、いかにメタバースへの没世界感を高めるような感情的価値の訴求やライフスタイルの提案等を行うことができるかが重要となる。
バーチャルショップの分類別で見ると、イベント型ではイベントの改善がトップとなっているため、バーチャルイベント主催者のみならず、個々のテナントでいかにユーザーに楽しんでもらえるイベント・アクティビティを企画していくかが課題。
また、他メタバースサービス出店型ではメタバース空間内における商品の取り扱いと回答した人の割合が高く、アバター向けの商品・サービスを拡充していくことが利用率向上につながるといえる。
調査概要
- 対象者:20〜40代の国内の「NTTコムリサーチ」登録モニター
- 調査会社:NTTデータ経営研究所/NTTコムリサーチ