矢野経済研究所は、国内の自然派・オーガニック化粧品市場を調査し、製品カテゴリー別や流通経路別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。
市場概況
2021年度の自然派・オーガニック化粧品市場規模は、ブランドメーカー出荷金額ベースで前年度比110.9%の1,642億円と推計した。2021年時の調査では、2020年度の市場規模については前年度割れと推計したが、今回調査において微増での推移であったと修正した。新型コロナウイルス感染拡大にともなう店舗休業や時短営業によるマイナス要因を、一定レベルでECがカバーしたことが主因である。これは既存のブランドも新興のブランドも含めて共通であった。2021年度においては、大きく業績を伸ばした企業が散見され、2桁の伸長率となった。
日本でもサステナブルを意識したライフスタイルを目指す消費者が増えつつあり、自然派・オーガニック化粧品は、その趣旨に添う製品である。また、敏感肌を自覚する女性が増加していることに加え、一般化粧品に求められる機能をも有するナチュラル・オーガニック化粧品が多く流通するようになった上、その周知が広がりつつあることで訴求力が高まっており、その市場性は当面維持されると考えられる。
注目トピック
販路のマルチチャネル化
自然派・オーガニック化粧品はブランドがその世界観やストーリーを伝え、そのコンセプトに共感し、ユーザーになっていくという流れがあった。そのため、資本力のあるブランドを中心に都心の一等地に旗艦店を構え、その流れを伝えられる直営店を主としたチャネル戦略がとられてきた経緯がある。変化をもたらしたのはセミセルフショップ(ブランドを横断して試用・比較・購入ができる店舗)とECを主とする通販チャネルである。
今回、ECを主チャネルとして製品開発を行い、100億円規模の企業へと成長したところで直営店展開を開始するという事例があった。ほかにもドラッグストアやコンビニエンスストアといった、かつては、自然派・オーガニック化粧品の販路として土場になかったチャネル展開を主力としたブランドが出てきている。
化粧品はデイリープロダクト(日用品)であることから、購入しやすく気軽に買える価格というポイントを重視する消費者層も多い。コロナ禍の有事の期間もこうした店舗はライフラインとして営業をつづけた業種であるため、物流などに特段の問題が起きない限り、安定的にユーザーへの製品提供が可能である。販路の広がりが当該市場の拡大へと寄与することが期待される。
将来展望
2022年度の自然派・オーガニック化粧品市場規模は、ブランドメーカー出荷金額ベースで前年度比102.9%の1,690億円を予測。経済活動が滞ったコロナ禍にあっても、微増推移という力強さを示した。2022年度は下半期を迎え水際対策が大幅に緩和され、海外からの個人旅行も解禁となったことに加え円安の影響もあって大量購入に拍車がかかるものと期待されている。自然派・オーガニック化粧品市場は、インバウンドの影響力が一般化粧品に比べて低い。そのためその要素はほぼ除外しての予測である。
社会におけるサステナブルやSDGsへの関心の高まりは、当該市場には追い風に。コロナ禍でも強さをみせた当該市場は、2022年度は2021年度の反動減をやや受けながらも堅調な推移と予測した。
調査要綱
- 調査期間:2022年8月~10月
- 調査対象:自然派オーガニック化粧品メーカー、販売代理店、小売店、関連団体など
- 調査方法:同社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、eメールによる調査、ならびに文献調査併用