矢野経済研究所は、国内ポイントサービス市場を調査し、現況、参入企業の動向、および将来展望を明らかにした。
市場概況
2020年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響で消費が落ち込む業種が生じたことで、民間企業などにおけるポイント発行額は前年度比98.1%の規模に減少した。一方、2020年度にGo To Eatキャンペーンやマイナポイント事業などにより、行政主体の政策で1,729億円規模のポイントが発行されたことで、民間のポイント発行額の減少分を補い、2020年度の国内ポイントサービス市場規模(ポイント発行額ベース)は、前年度比103.1%の2兆691億円と推計した。
2021年度以降は徐々に消費が回復することで民間のポイント発行額は拡大傾向にあるものの、行政主体のポイント発行額が半減したため、2021年度のポイントサービス市場規模は同101.5%の2兆1,001億円と微増に留まった。2022年度には民間のポイント発行額は同106.0%まで増加を、ポイントサービス市場規模は同102.5%の2兆1,533億円を見込む。
注目トピック
共通ポイントのサービス動向
業種・業態に関わらず提携先で利用できる共通ポイント(Tポイント、Ponta、楽天ポイント、dポイントなど)のサービス事業者は、日常生活で会員の利用頻度が高い小売業者や飲食事業者だけでなく、電気・ガスなどの生活インフラ提供事業者やウェブサービス提供事業者、金融機関、交通機関などの幅広い業界へと提携先を拡大している。すでに共通ポイントが利用できる加盟店においてほかの共通ポイントを導入する動きも加速しており、マルチポイント化(1店舗で複数のポイントを発行)が進んでいる。
また、共通ポイント事業者は、収集したデータなどを分析することで加盟店へのマーケティング支援を実施している。会員の価値観の分析や移動データの活用に向けた取組みもみられる。
さらに、共通ポイント事業者はデジタルカードの提供拡大にも注力している。デジタルカードを発行できるプラットフォームとなるスマートフォンアプリは会員との接点を強化できるというメリットがあり、共通ポイント事業者はスマートフォンアプリを通じて個々の会員に適した情報を配信するなどして、加盟店の売上向上を一層支援していくだろう。
コード決済事業者の大規模キャンペーンなどを通じて、単なるポイント付与は差別化要素とはなりにくく、ポイント付与が当たり前となるなかで共通ポイントサービスの提供だけではほかのサービスと差別化することは難しいと考える事業者もみられる。そのため、加盟店に対してダイナミックプライシングやデジタル屋外広告などを活用したデジタル化などの支援に注力する動きがある。
また、購買以外でのポイントの活用に関する取組みもみられる。ポイント付与によるSDGsの促進や、特定の団体に対するポイントを用いた応援・寄付など、購買時の付与・充当以外のポイント活用が一層進むと考える。
将来展望
2026年度の国内ポイントサービス市場規模(ポイント発行額ベース)は2兆5,373億円まで拡大すると予測。今後、徐々に消費が回復することでポイント発行額は拡大し、さらにマイレージ事業者は航空サービスの利用だけでなく、生活の様々な場面でポイントを付与する取組みを進めており、ポイントサービス事業者のさまざまな取組みが広がっていくことで、ポイント発行額拡大につながると考える。
また、共通ポイントが多くの店舗・サービスでオンライン・オフラインを問わずに利用できるようになってきており、ポイント発行額の拡大を牽引するとみる。共通ポイントを導入する企業においてはマルチポイント化が進んでおり、1社で複数の共通ポイントを発行するケースも多い。加盟店で共通ポイントを利用できる環境が一層整備されるほど、会員にとっては購買時の共通ポイントの付与が当たり前となる見込みである。
調査概要
- 調査期間:2022年4月~7月
- 調査対象:共通ポイントサービス提供事業者、マイレージサービス提供事業者やポイント交換サービス提供事業者のほか、ポイント関連ソリューションベンダなど
- 調査方法:同社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・e-mailによるヒアリング調査、ならびに文献調査併用