富士経済は、新型コロナウイルス感染症の流行による消費者の健康意識、予防意識の高まりにより注目される機能志向食品(サプリメント)の国内市場を調査した。
サプリメントなどの機能志向食品を免疫対策や生活習慣病予防、スポーツサポートなどの訴求効能別や、成分別に分類し市場を調査・分析。機能志向食品とは、健康(Health)や美容(Beauty)に良いというコンセプトをもった商品(H・Bフーズ)のうち、機能性を重視した商品設計を行い、一般用医薬品等との競合が予想される商品(サプリメント)を指す。
機能志向食品(サプリメント)市場
2020年の機能志向食品(サプリメント)市場は、前年比100.7%の9,742億円に。新型コロナの流行を受けたインバウンド需要の落ち込みなどがみられたものの、消費者の健康意識や予防意識が高まったことや、コロナ太り対策需要など特需的な追い風により市場は拡大した。
免疫対策やスポーツサポート、生活習慣病予防が大きく伸びた一方、外出自粛による飲酒機会の減少から肝機能改善が、インバウンド需要の激減により美容効果が大幅減となった。
2021年は、免疫対策需要は落ち着きがみられるものの、依然として消費者の健康意識や予防意識は高く、生活習慣病予防やスポーツサポートは前年を上回る伸びとなるほか、基礎栄養摂取の観点からマルチバランスやグリーンチャージなども伸長することで市場は1兆円の大台に到達すると見込まれる。
注目市場
免疫対策
2020年は、感染予防対策として免疫力強化への関心が高まり、乳酸菌類やプロポリス、エキナセア商品を中心に、前年比107.5%と市場は拡大した。なお、市場をけん引してきたアレルギー、花粉症対策商品は花粉飛散量が少なかったことなどから苦戦を強いられた。
2021年は、前年の反動により実績を落とす企業もみられるものの、免疫機能のヘルスクレームを有した機能性表示食品であるキリンホールディングスの「iMUSE プラズマ乳酸菌 サプリメント」や、ファンケルの「免疫サポート」の好調により、市場は続伸が予想され前年比104.1%としている。
スポーツサポート
タンパク質(プロテイン)やアミノ酸などを主な成分とし、運動による身体作り・ボディメイクを目的とした商品を対象とする。
1980年代にプロテインなどが発売され、当初はトップアスリートなど限られた層を対象としていたが、徐々にスポーツユーザーや一般消費者の需要を取り込み、市場拡大してきた。2015年にプロテインブームが起こるとスポーツ用プロテインの需要が急増し、市場は大幅に拡大した。それ以降もプロテインがけん引し、市場は二桁伸長が続いている。
2020年は、外出自粛に伴うスポーツシーンの減少による需要減で実績を落とした企業がみられたものの、コロナ太り対策などを目的とした需要を取り込んだプロテイン商品の好調により、市場は112.2%と前年比二桁増となった。2021年は、前年より新型コロナの影響が緩和されたことから、前年に実績を落とした企業も売上が回復に向かっており、市場は115.5%と前年の伸びを上回るとみられる。
生活習慣病予防
生活習慣病(高血圧、糖尿病、高脂血症、動脈硬化など)のリスク低減を訴求した商品を対象とする。
2020年は、消費者の健康意識、予防意識の高まりにより、コロナ太り対策や重症化リスクに関係した基礎疾患対策需要が増加したほか、在宅時間が増えたことで消費者が広告を目にする機会が増え、PR効果が高まったことから通信販売が好調となり、市場は前年比6.4%増となった。
2021年は、新型コロナの流行が続いていることから前年に引き続きセルフメディケーション意識が高まっており、サントリーウエルネスの「DHA&EPA+セサミンEX」や「オメガエイド」など積極的なプロモーション展開により大幅に実績を伸ばしている商品もみられることから、市場は前年の伸びを上回るとみられる。
グリーンチャージ
青汁や藻類、野菜粒を主な成分とし、野菜不足解消や栄養成分の補給、栄養バランス維持を目的とした商品を対象とする。
2020年は、インバウンド需要の激減などマイナス要因がみられたものの、在宅生活が長引く中で食生活の乱れや野菜不足を解消しようとするニーズ、また体調管理の観点から栄養補給ニーズが高まったことで青汁の需要が回復し、2018年より縮小していた市場は拡大に転じた。
2021年も野菜・栄養補給ニーズは高く、各社のプロモーション強化により休眠顧客の掘り起こしや新規顧客の獲得が進んでいることから、市場は引き続きプラスが予想される。
マルチバランス
マルチビタミン、マルチミネラル、ビタミンC・B群などを主な成分とし、各種栄養成分を一括で摂取できる商品を対象とする。
2020年は、新型コロナ流行の影響により基礎栄養摂取需要が高まったものの、緊急事態宣言の発出に伴う店舗休業やインバウンド需要の激減により苦戦した企業などもみられたことから、市場は微減となった。2021年も引き続き基礎栄養に対するニーズは高く、販売やプロモーションを強化する企業では新規顧客獲得が進んでいることから、市場は前年比2.1%増が見込まれる。
調査方法
富士経済専門調査員による参入企業および関連企業・団体などへのヒアリングおよび関連文献調査、社内データ ベースを併用
調査期間
2021年7月~8月