富士経済が化粧品の国内市場調査結果を発表した。
化粧品の国内市場
2020年は新型コロナウイルス感染症の影響によりインバウンド需要が消失したほか、4、5月には緊急事態宣言が発出され百貨店や駅ビルなどの商業施設が休業を余儀なくされた。消費者も外出自粛によりベース/ポイントメイクやクレンジング、サンスクリーンの使用機会が減少し、市場は前年比14.5%減となった。
2021年は前年と比較して百貨店などの商業施設の営業状況が改善されているほか、ワクチン接種が開始されたことから外出機会が増加しており、前年比3.3%増が見込まれる。2022年以降、ワクチン接種が進みコロナ禍での生活様式への順応が進むことで市場は徐々に回復に向かうとみられる。
価格帯別化粧品市場
高価格帯
高価格帯は近年スキンケア、メイクアップで若年層の需要を取り込むなど、堅調に市場拡大してきたが、2020年はインバウンド需要の消失や、主要チャネルである百貨店、化粧品店の休業を受け、前年を大きく下回った。景況悪化により低・中価格帯へシフトする品目もみられた。
一方、"おうち美容"への関心の高まりによりスキンケアやヘアケアの予算を増やす消費者もみられ、新たな需要を取り込んでいる。2021年はインバウンド需要の回復は期待できないものの、ポイントメイクなど前年に大幅に縮小したカテゴリーが反動で伸長するため、市場は前年比3.3%増が見込まれる。
中価格帯
中価格帯は2020年、在宅時間の増加により通販で実績を伸ばすブランドがみられたほか、景況悪化による高価格帯からのシフトや、スキンケアでは在宅時間の増加によりスキンケアステップを見直す消費者が増え、スペシャルケアの需要が高まったものの、制度品系マスブランドのインバウンド需要の消失により市場は縮小した。2021年以降、市場は徐々に回復に向かうとみられる。
低価格帯
低価格帯は2020年、シートパックやサンスクリーンのインバウンド需要が消失したほか、消費者のパーソナルユース志向が強まり、ヘアケアなどで中/高価格帯へのシフトが進んだことにより市場は前年比13.1%減となった。一方、マスク着用やストレスなどにより毛穴の開きやニキビなど肌悩みが生じやすい環境になったことで、低価格帯の中でもより高単価なスキンケア商品などは好調だった。2021年以降、市場は微増で推移するとみられる。
注目市場
スキンケアの中で、オプションステップとして使用されるスポットケア、美容液、パックを対象とする。
スペシャルケアは近年、シワ改善効果・効能のある医薬部外品による需要喚起やインバウンド需要の取り込みにより市場拡大してきた。2020年はインバウンド需要の消失や百貨店、化粧品店の休業によりカウンセリングの機会が減少したことから実績を落とすブランドが多くみられ、市場は前年比二桁減となった。
一方、在宅時間の増加によりスキンケアに時間をかける消費者が増えたことからブースターや、マスク着用やストレスなどによる毛穴の目立ちに対応した美容液ブランドが好調だった。
2021年はインバウンド需要の大きかったパックの需要回復は鈍いものの、スポットケアや美容液はオンラインカウンセリングの導入が進んでいるほか、前年は不調であった美白訴求の商品も外出機会の増加に伴い需要が回復することから、市場拡大が予想される。
消費者アンケート調査
新型コロナ流行前と比較した肌の状態【n=640/SA】
「変わらない」と回答した人が全体の59.1%となった。「良くなった」「やや良くなった」と回答した人は12.7%で、30~34歳の回答率が最も高い。一方、「悪くなった」「やや悪くなった」と回答した人は28.3%で、20~24歳の回答率が最も高い。
新型コロナ流行後の肌の状態改善の要因【n=81/MA】
「良くなった」「やや良くなった」と回答した要因として回答率が高かった順に「スキンケアにかける時間の増加」「生活リズムの改善」「メイクアップ頻度の減少」となった。
新型コロナ流行後の肌の状態悪化の要因【n=181/MA】
「悪くなった」「やや悪くなった」と回答した要因として最も回答率が高かったのは「マスクの着用」で、8割を超えた。次いで「日常生活でのストレスの増加」「運動不足」となった。
調査概要
調査対象
調査方法
富士経済専門調査員による参入企業および関連企業・団体などへのヒアリングおよび関連文献調査、社内データベースを併用
調査期間
2021年6月~8月
消費者アンケート調査
調査対象
化粧品(スキンケア/ベースメイク/ポイントメイク)を購入したことがある20~59歳の女性640名
調査期間
2021年7月2日~4日