Twitterで拡散された 百貨店のいち社員の思い
2021年7月25日、Twitter上で自身を「ただのしがないおやつ少年」と称するアカウントの投稿が、反響を呼んだ。
投稿者の名は、「阪神百貨店 おやつ少年腰前」さん。名前や投稿内容から百貨店の社員であることがうかがえるが、個人名を出してアカウント運用を行い、そして連日おやつにまつわる投稿を続ける意図は何なのだろうか。インタビューから見えた、阪神百貨店の「ナビゲーター」施策とコロナ禍における顧客交流のありかた、百貨店が今できることについてお伝えする。
販売員よりもお客様目線で SNSから情報発信やイベント企画・運営をする「ナビゲーター」
2018年に阪急阪神百貨店に入社した腰前さん。阪急うめだ本店で店頭接客を1年経験した後に阪神百貨店の和洋菓子販売部に配属。売場の管理に1年強携わった上で、2020年6月より「おやつナビゲーター」という役割で活動をしていると言う。
「『ナビゲーター』という響きがピンと来ない方もいらっしゃるかもしれませんが、阪神百貨店では2017年からお客様とさらに深い関係を築いていくため、フロアごとにナビゲーターを任命し、販売員よりも近い立場から情報発信やイベントの企画・運営を行う施策を展開しています。リビング用品、雑貨などさまざまなジャンルのナビゲーターがいますが、僕はおやつナビゲーターに任命され、1年半ほど活動している状況です」
腰前さんは、おやつナビゲーターに就任すると同時にTwitterとInstagramのアカウントを立ち上げ、運用を開始している。ほかのナビゲーターはInstagramで情報発信を行い、顧客とDMなどを通じて密なやり取りを行っている中、なぜ腰前さんはふたつのアカウントを並行運用しようと考えたのだろうか。
「会社からとくに『Instagramのみで』と指定されたわけではなかったので、担当する商材と各SNSの相性を踏まえて、TwitterとInstagramの両方を運用しようと決めました。Twitterは140文字の制限はありますが、言葉を使って想いを伝えることができる上に、リツイート機能によって自分のことを知らない方にも情報が届く可能性があります。おやつという商材は年齢や性別を問わず好んでいただけるものだと思ったため、どちらかに絞ろうとは考えませんでした」
大阪・梅田という大都市、好立地に位置する阪神梅田本店も、コロナ禍で店舗のありかた、顧客との距離の取りかたに変化が訪れているのが現状だ。店舗を開けていれば自然と顧客が集まり、関係構築ができる時代から、オンラインのチャネルも駆使しながら自ら顧客に歩み寄り、求めている情報や商品を把握し、発信したり売場展開に活かしたりといった取り組みが必要となっている。2020年までは数名しかいなかったナビゲーターもコロナ禍を契機に30名程度にまで増員。「フロア展開も広げ、全館での取り組みにまで進化している」と腰前さんは語る。