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ECzine Day 2024 Autumn

2024年8月27日(火)10:00~19:15

ECzine Day 2021 Summer レポート(AD)

画像認識AI活用でEC運営業務の業務効率化 DAMO Vision APIのポテンシャルを探る

 オンラインモバイルコマースをリードする中国のアリババグループでは、AI技術活用を積極的に進めている。同技術は外部企業向けにも「DAMO AI-API」として提供され、EC運営の効率化に役立てられているが、実際どのように活かすことができるのだろうか。2021年6月9日に開催された「ECzine Day 2021 Summer」で、SBクラウド株式会社 ソリューション事業室 技術課 課長の山田佑輔氏が「アリババグループの画像認識AIを活用したECサイト運営効率化ソリューション」というテーマで講演を実施。商品画像やユーザーの検索画像を活用した運用の効率化と、商品画像やユーザーの検索画像を活用した運用の効率化と、商品タグ付け業務をAIで自動化する方法を紹介した。

アリババが持つ多大な情報を活用 DAMO AI-APIとは 

SBクラウド株式会社 ソリューション事業室 技術課 課長 山田佑輔氏
SBクラウド株式会社 ソリューション事業室 技術課 課長 山田佑輔氏

 アリババグループは、EC事業のほかにも金融やコンシューマー向けチャットサービスなど、さまざまな事業・サービス展開を行っている。そして、それぞれに応じたAIを「アリババDAMOアカデミー」と呼ばれる総合研究機関が統括。同機関は、DAMO AI-APIを活用したソリューション創出を推進している。

 中国のAI活用は、世界の中でも先を行く状況だ。EC・実店舗といった小売の領域に限らず、多くの場面で使用されている。1日10億人にサービスを提供するアリババのAPIでは、1日1兆回を超えるボリュームでAPIコール課金が行われ、1日の処理実績は画像で10億枚、動画で120万時間、音声処理で55万時間、自然言語処理で5,000億センテンスにも及ぶ。DAMOアカデミーはこの学習結果を他社にも提供しており、SBクラウドはそれを日本展開している。

「中国では、ECは当然のこと、政府、金融、医療など幅広い業界の現場でアリババのAIが使われています」(山田氏)

DAMO AI-APIの活用領域

 その業種はエネルギーや交通・製造といったインフラ面にまで及んでおり、「AIが活用されていない領域はないのでは」と思うほどだ。DAMOアカデミーは、そんなAIを中心にビッグデータ、ロボティクス、FinTechなどさまざまな技術領域を研究対象としているが、今回山田氏は「AI」とりわけ「画像処理」をテーマにECへの活用について解説した。

DAMO AI-APIの活用領域

 DAMOアカデミーが提供するAPIのうち、画像処理系APIのことを「DAMO Vision API」と呼ぶ。ここでは、140を超える画像処理系APIをリリースしている。画像認識や人体・顔認識など機能ごとに分かれており、利用を希望する場合は必要なAPIをピックアップして活用することが可能だ。実際に日本でも新型コロナウイルス感染症拡大時に、肺のCT画像データから感染の有無をAIが判断するなど、活用が進んでいる。

 山田氏は、画像を見せながらDAMO Vision APIの実例を紹介する。前出した新型コロナウイルス感染症の確率をリターンする実例では、感染の確率が高い箇所をAIがマーキング。次の例は、人物の顔写真をインプットデータとして、その人物の性別・年齢・表情を返す「DAMO Vision API 顔認識」だ。実際に実店舗の来店客層の分析や、無人店舗の運用などで活用されている。

DAMO Vision API 顔認識

 画像認識は商品のカテゴリー分けにも用いられている。たとえば、ひとりがけのソファの写真をインプットデータにすると、「ソファ」「椅子」「ロッキングチェア」といったように該当するカテゴリーを確率でリターン。手動での分類分けが必要なくなり、作業工数削減を実現できる。

商品画像をアップするだけで、自動タグ付けが可能!

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画像・動画のトリミングや美の評価も実現 DAMO Vision API活用事例

 次に山田氏は、画像の中から必要な部分をトリミングするAPI「DAMO Vision API セグメンテーション」を紹介した。背景がある人物画像をインプットすると、人物のみもしくは着用する衣類のみをセグメンテーションし、トリミングした画像がリターンされる。

DAMO Vision API セグメンテーション

「同APIでは、物体を認識してトリミングを行っています。そのため、肌と色味が近しい衣類や形が複雑なものを着用していても、きれいに抜き出してくれます」(山田氏)

 こうしたAPIは、中国のさまざまなビジネスで活用が進んでいる。山田氏はECでの活用事例として、最初に「Taobao」を紹介した。

 Taobaoでは代表的なものとして、

  • 類似画像検索
  • 衣類、商品、家具のセグメンテーション(抜き出し)
  • 高精細人物セグメンテーション
  • 画像の属性分析(商品画像から、商品の特徴を返す)

などの技術が用いられている。いずれも精度高く処理でき、デザインされたポスターから商品のみを抜き出すといった複雑な判断も容易にこなす。

TaobaoのDAMO Vision API活用事例

 BtoCの総合ECサイト「天猫(Tmall)」では、動画内の人物セグメンテーションも行っている。顔のデータから特徴を認識するAPIを用いて化粧品の体験サービスを実現。EC上でこれまで困難とされていた体験を提供している。

 CtoCのフリマサイト「咸魚」では、商品を出品する際に複数アップロードした写真から動画とサムネイルを自動生成。商品ページに掲載するほか、画像の画質や視覚的な「美」をAIで評価することで利用者の利便性向上を図っている。

咸魚のDAMO Vision API活用事例

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自動タグ付けやパーソナライズレコメンド機能でECサイトの効率的な運営をサポート

 山田氏は続いて、SBクラウドが提供するECサイト運用効率化ソリューション「ECサイト運営効率化 画像認識AIソリューション」を紹介。同ソリューションは画像認識AI技術を活用し、「商品自動タグ付け」「パーソナライズレコメンド」「商品トレンド分析」といった、ECサイトの効率的な運営をサポートしている。

ECサイト運用効率化ソリューション

「こうした機能を活用することでEC運営が効率化でき、かつ売上拡大とユーザー満足度の向上も実現できます」(山田氏)

 EC運営効率化や成果につながる活用例として、山田氏は3つの事例を提示。商品自動タグ付けの機能活用では、多くのEC運営者が手入力で登録していたカテゴリーや商品情報を画像データの分析により自動でサジェスト。数千種類の候補から確率の高いものを導き出すため、正確性と人による作業時間の削減が可能となる。

 また、パーソナライズレコメンドでは画像データから導き出された情報を基に、ユーザーの嗜好に合わせた関連商品を提案。商品のスタイル、素材などあらかじめタグ付けされた情報を軸に雰囲気の近い商品を提示することで、サイト滞在時間の増加や購入単価向上に貢献している。

ECサイト運用効率化ソリューション

 商品トレンド分析については、来訪した顧客が検索した画像をAI認識することでどのようなスタイルが注目されているかを把握。「実店舗やECの打ち出しかたや、今後の商品開発計画の道筋を立てる際に役立てることができる」と山田氏は語った。

目的に応じて適したAPIをチョイス 学習期間なしですぐに活用へ

 しかしながら、AIが導き出す属性情報の正確性はいかなるものか、疑問に思う方もいるだろう。そこで山田氏は実際の商品画像を提示しながら解説を実施。「・スーツ(0.61)」のように図右側に記載されている数値は、AIが判断した確率だ。

スーツの画像

 複数候補が示されている場合は、候補の中から人間が指定できるため、誤った情報のまま表出することはない。前出したようにアパレル以外の商品も対応しているため、たとえば家具では素材などを判断することもできる。属性情報はカテゴリーごとに分類されているため、アパレルであるにもかかわらず家具の属性が表出してしまうといったことは起きない仕様となっている。

 ここで山田氏は、改めてDAMO Vision 関連APIについて紹介。同セッションで紹介した「商品カテゴリー識別API」「自動タグによる属性分類API」のほか、「ブランド識別API」「画像セグメンテーションAPI」「透明度検知API」「商品キーワード生成API」など、目的に応じて適したAPIが備わっていることをアピールした。

 最後に山田氏は、DAMO Vision APIの提供方法について「API単体で提供するセミオーダー型、SBクラウド パッケージ化で提供するサービス型のふたつがある」と説明した上で、このように語りセッションを締めくくった。

「DAMO Vision APIは、アリババグループのデータから学習したAPIを提供しているため、導入企業の環境下での学習期間は必要ありません。すぐに活用できる点が魅力です」(山田氏)

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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