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ECzine Day 2024 June

2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

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コマース軸に顧客起点のDXを実践せよ SAPジャパン、Executive Round Table開催

リテールにおけるDXの基本思考がオムニチャネル

 続いて逸見氏は「DXの本質とは何か?」を問いかけ、自らの定義を披露した。

 「業務にデジタル機器を導入したり、アナログ作業をデジタル処理に変えたりして効率化する『デジタイゼーション』、デジタル技術を活用してビジネスモデルを変革し、新たな収益モデルへと変える『デジタライゼーション』、そしてこのふたつを取り入れながら企業が変革していく『デジタルトランスフォーメーション』。これがすなわちDXです」

 経済産業省によるDXの定義は「業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」であるが、逸見氏は「さらっと書かれているが、経営、業務、ITの3つの変革がDXの要であることを意味しており、実現するのは非常に難しい」と評する。

 逸見氏は、「リテールにおけるDXの基本思考がオムニチャネル」だとし、ここで改めてオムニチャネルを定義する。

 「ひとつの企業が、店舗、通販、Eコマース、コールセンターなどを持つクロスチャネルになっている時点で、オムニチャネルができているという人もいます。しかしながら、それだけではオムニチャネルとは言えません。来店した店舗にない商品を他チャンネルから取り寄せができたり、レコメンドに他チャンネルの利用履歴が反映されたり、お客様が自ら購入商品をSNSにアップしてくださるなど、デジタルを用いた双方向のやりとりがあってこそのオムニチャネルです。単なるチャネル拡大でなく、顧客利便性&リピートにつながるよう情報のやりとりが双方向になることがオムニチャネルであり、このようにビジネスの考えかたが変化することがDXなのです」

 オムニチャネルにおいて、逸見氏が重要な指標だとするのが「LTV(Life Time Value、顧客生涯価値)」と「関与売上」だ。

 「デジタルにより顧客の購買行動が見える化され、顧客を新規と既存に分解して分析できるようになりました。それぞれに対してどのような施策を打ち、反応が返ってきたかを分析し、会社のKPIに合わせて報告していくことが重要です。あくまで私の経験則ですが、新規と既存ではLTVが3〜9倍異なりますし、ネットもリアルも利用するオムニチャネルな既存顧客になると、10倍〜15倍という数字を見ることもあります」

オムニチャネル指標①LTV(ライフタイムバリュー)

 予算についても、商品単位から顧客単位に変えて組んでいくべきだと逸見さんは言う。

 「既存顧客に購入してもらうためにどう販促費を立て、利益を出していくのか。市場を開拓するために、LTVが高い既存顧客と似た傾向の新規の顧客にどうアプローチしていくのか。顧客のリピート状況と財務諸表を紐づけて考えていくべきです。具体的には、すべてを顧客に紐付けたうえで購買分析と行動分析を行っていきましょう」

 もうひとつの評価軸である「関与売上」については、カメラのキタムラ時代に評価軸で設けた「EC関与売上」を紹介。売上と利益だけを評価軸にしていると、チャネルをまたぐ相互支援業務の評価を行うことができない。組織間の協力関係を生み出すには、売上以外の共通評価軸が必要だと説明した。

 オムニチャネル、DXを推進していく上でデジタル人材の育成は不可欠だが、人材育成とはすなわち、組織に全体最適思考を定着させることだと言う。

 「企業の成長段階に応じて縦割組織にして専門性を高める時期も必要です。それを極めたところで横通しという順序で良いと思います。そして全員が財務諸表をもとに経営陣と話ができるようになれば良いですね。新入社員から経営層まで、継続的な教育プログラムを組むことが重要です」

組織に全体最適思考を定着させる

 最後に逸見氏は、「会社はなんのためにあるのか?」を問いかけ、次のように述べて講演を締めくくった。

 「会社は社会のためにあり、人々の暮らしを支えるために商品・サービスを提供し続けるもの。人=消費者あっての会社であり、社会とかかわってこそ会社は存在できます。社会とのかかわりこそが広い意味でのマーケティングです。デジタルにより、企業理念や提供している商品・サービスが正しいのか、マーケティング戦略が正しいのかが見える化できるようになりました。それにより、改善活動が行え、企業も変革し続けることができます。

 悩ましい現状とあるべき姿を比較したときに、個別最適な施策を行うのではなく、全体最適思考でアクションすれば、ギャップを失くす方向に近づいていけます。オムニチャネルやDXは手段であって目的ではありません。お客様を理解し、消費者の立場に立って最適なお買い物体験を提供し続けること。改めて社内を見直し、本当の課題を見つけていただきたいと思います」

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新規事業もデジタル人材も、今あるものを分析すると見えてくる

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