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ECzine Day 2024 Autumn

2024年8月27日(火)10:00~19:15

ECzine Day 2020 Summer レポート(AD)

マーケティングはダイナミックでなければ意味がない D2Cで高まるクチコミとQ&Aの重要性

 D2Cの隆盛にともない、クチコミとQ&Aを介したコミュニケーションが消費者の購買を後押ししていると言う。企業には、消費者が情報を享受しやすい仕組みの整備を求められ、そのための手段として積極的なデジタル活用が進められている。2020年7月2日に開催された「ECzine Day 2020 Summer」にて、D2Cのトレンドを踏まえた消費者との向き合いかたや実店舗のありかたを、長年CXと向き合い続けるZETA株式会社の山崎徳之氏が語った。

なぜ消費者はクチコミや体験を重視するのか

 これまではメーカーが小売を介して消費者に商品を販売する流れが一般的だったが、スマートフォンの普及やミレニアル世代(1980年代から2000年初頭に生まれた世代)、Z世代(1996年から2012年に生まれた世代)と呼ばれるデジタルネイティブ層が消費者としての存在感を強めるにつれ、最近はメーカーが消費者に商品を直接販売するD2Cの動きが活発になっている。欧米では、数年前から大手スポーツアパレルブランドを筆頭に多くの企業がD2Cに取り組んでおり、人気商品をD2Cでのみ販売する動きも見られる。

 加速するD2Cのトレンドを前に、企業は消費者とどう対話していくべきか。このトレンドの担い手でもあるミレニアル世代、Z世代の特徴は、情報感度が高くクチコミや体験を重視するという点にある。企業がやるべきことは、彼らがクチコミや体験を享受しやすい仕組みを整えることだ。

「ある海外イベントの登壇者が、『消費者は企業の3倍、ほかの消費者を信用する』と話していたように、ほかの消費者が本音で語る意見は、購入検討者の背中を強力に後押しします。逆に、クチコミを読んで購入をやめるケースもありますが、購入されたお客様に満足していただくことを目指す健全な企業活動においては、そのクチコミが長い目で見るとプラスに働くはずです」(山崎氏)

 クチコミに次いで新たなコミュニケーションとして期待されているのが、Q&Aだ。購入した消費者が一方的に意見を投稿するクチコミとは異なり、Q&Aは購入を検討している消費者が質問を投稿したり、メーカーが返信したりもできる。これまではSNSで同様のコミュニケーションが行われていたが、SNSでは投稿に発信者の自己顕示欲や承認欲求というバイアスがかかってしまうこともあり、純粋に商品の良し悪しや向き不向きを知りたい消費者は情報を吟味する必要があった。ECサイト上にQ&Aの場があれば、そのようなノイズから離れて情報を得ることができる上、店舗スタッフらによるプロの意見も聞けるため、消費者はより有益な情報を得ることになる。

「お客様は財布から大事なお金を払って買い物をするので、失敗を避けたい、買う前に安心したいと思っているはずです。アメリカではECが普及する前に、『返品大歓迎』というアプローチでお客様の不安を解消していましたが、そのやりかたでは返品カウンターに長蛇の列ができ、コストもかさんでしまいます。Q&Aのコミュニケーションが当たり前になれば、お客様は納得した上で商品を購入できるので、返品率は下がります」(山崎氏)

D2Cが台頭しても実店舗は消えない

 EC化が進み、クチコミやQ&Aが重要視されていることは紛れもない事実だが、だからと言って実店舗が不要になるわけではない。店舗で最終購買する消費者は減るかもしれないが、「購買を決定するまでのカスタマージャーニーから店舗がなくなることはありえない」と山崎氏は強調する。なぜなら、実店舗は商品を体験する場という重要な役割を担っているからだ。オンライン試着などのサービスが開発されてはいるものの、家具や家電、アパレルは色合い、質感、大きさなどを実店舗で確かめてから購入したほうが失敗せずに済む。海外のEC専業家具ブランドが後に実店舗を出店したところ、ECの売上が倍になった事例もある。

「多くの実店舗には商品の体験、購入、決済という機能がすべて備わっていますが、決済と購入は店舗の必須機能ではありません。たとえばバッテリーやコード類など、買ってすぐに使用できたほうが良い商品を除き、お客様に体験してもらえるサンプルさえあれば、在庫はもはや必要ないかもしれません。在庫がなければ出店コストやリソース、セキュリティ面のリスクも減らせます。決済は、店頭のPOSレジよりデジタルペイメントを介した支払いが今後はより一般的になるでしょう。二次元コード決済は、その店舗が運営しているECサイトに登録することなくアノニマスに購入と配送先情報の入力を行える点に大きなメリットがあるため、今後のトレンドになるはずです」(山崎氏)

 体験の場である実店舗で避けたいのは、体験した消費者がほかのサイトで商品を購入してしまうことだ。デジタルデバイスを積極的に活用し、自社で買ってもらうための努力をしなければならない。そのために重要なのが、やはりクチコミだ。

「レビュアーを健全なアフィリエイターとしてとらえ、クチコミが購買につながった場合はその投稿者に自社ECサイトのポイントを付与するなどの仕組みがあっても良いかもしれません。クチコミはほかの消費者にとって有益だと冒頭で話しましたが、企業にとっても価値のあるものだと言えます」(山崎氏)

 そもそも、D2CをECだけの取り組みだと考えるのは、誤解だ。ブランドが消費者に商品を直販することがD2Cであり、実店舗を経由したD2Cも十分にあり得る。Q&Aで生まれたコミュニケーションをきっかけに「実際に商品を体験してみてください」と実店舗へ誘導することもでき、商品を実店舗で体験した消費者が最終的に自社のECサイトで購入に至れば、それもD2Cのひとつの形だ。

「約3年前のオムニチャネル全盛期では、オンラインとオフラインが対立構造で語られていました。実店舗は体験の場であり、デジタルはただのデバイスにすぎません。売上予算の比率を実店舗とECで分けて設定する風習は最近になってようやく減ってきましたが、ここのところ取り沙汰されている『デジタルシフト』という言葉には、まだリアルとデジタルの対立の名残を感じます。デジタルデバイスの積極的な活用は実店舗の接客精度やスタッフのモチベーション向上にも貢献し、それが結果的にお客様のより良い体験にもつながるので、ECだけの特別な取り組みだと思わずに向き合っていただきたいです」(山崎氏)

マーケティングはダイナミックでなければ意味がない

 ZETAは「ZETA CX シリーズ」と呼ばれるカスタマーエクスペリエンスに特化した製品群を展開している。主力製品はECサイト内検索エンジンの「ZETA SEARCH」だが、検索結果の並べ替え要素として重要なクチコミ評価の投稿を活性化させるため、2017年にレビューエンジンの「ZETA VOICE」がリリースされた。

 一般的なクチコミは総合点だけで評価が行われるが、ZETA VOICEの場合は製品の性能、コストパフォーマンス、カスタマーサポートなど、多軸評価のクチコミが可能となる。さらに、投稿者の年齢や性別といったスペックも入力されるため、消費者は自分と似た投稿者に絞り込んでクチコミを読むことができる。たとえばゴルフクラブのレビューであれば、レビュアーのスコアや飛距離など習得レベルの情報でレビューを絞り込みできれば、より商品が検索しやすくなる。このような詳細情報は、蓄積されると実店舗でも活用できる財産になる。

 2019年にリリースされた「ZETA CLICK」は、実店舗におけるECサイトやレビューの活用を促すOMOソリューションだ。実店舗やカタログに設置された二次元コードから最適な情報をダイナミックに表示させることができる。通常、二次元コードは製品ページやECサイトのトップページなど、あらかじめ設定されたURLが埋め込まれているが、ZETA CLICKの場合はランダムなURLが埋まった二次元コードを発行でき、表示させるページを後から自由に設定することができる点に最大の特徴がある。「在庫があればこの商品を表示させるが、なければ違う商品を表示させる」「クチコミが多く投稿されている商品は、レビューページを表示させる」などのルールに則ったページ表示のほか、過去の購買履歴に基づいてパーソナライズされたレコメンド製品群を表示させることもできる。

 ZETA CLICKを早くから導入していたアパレル企業では、実店舗で接客した商品のバーコードをスタッフがその場でスキャンし、パーソナライズされた特別ページを作成して二次元コードで顧客に共有する取り組みを行っている。二次元コードを読み取った顧客は、商品のレビューページやスタッフコーディネートをじっくり参照しながら気に入った商品をECサイトで購買することが可能となる。この取り組みは、クチコミとOMOの親和性の高さを裏づける好事例と言える。

「マーケティングはダイナミックでなければ意味がありません。静的なURLを表示させる二次元コードより、オンデマンドで表示するページを変えられる二次元コードのほうが遥かに強力です。かなり高速な処理を要するため、ここまでダイナミックにアプローチできるマーケティングソリューションはそう多くないでしょう」(山崎氏)

 2019年のデータによると、ZETA SEARCHが1年間で消費したクエリ数はカウント可能な範囲だけでも838億クエリに上り、実際には年間1000億クエリ以上の検索をECサイトだけで処理していることになる。また、導入した企業の98%がシステムの利用を継続している。日本国内のEC売上トップ100社のうち25%の企業に導入されていることや(2017年時点)、デジタル投資がとくに早いアパレル企業の導入実績が豊富なこともZETA CX シリーズの大きな強みだ。山崎氏は最後にこう語り、セッションを締めくくった。

「アパレル業界は、デジタルネイティブ世代の購買比率が高いこともあり、お客様に見離されないためにも、こうした取り組みをいち早く行っています。アパレルに限らず、家電など多くのジャンルの企業にZETA CX シリーズを導入いただいていますが、今後リアルとデジタルを積極的に融合して活用したい方、踏み込んでいきたいという方はぜひ当社にご相談いただければと思います」(山崎氏)

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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