クラウドが基幹システムへ デジタル改革第2章を唱えるIBM
IBM Thinkは今回2回目。今年の開催地はサンフランシスコ。サンフランシスコのITイベントといえば、Salesforce.comの「Dreamforce」がひとつのベンチマークとなっており、IBMもDreamforceのようにモスコーニセンターのサウスとノースの間にあるハワードストリートを閉鎖してオープンスペースを設けたものの、2月のサンフランシスコは悪天候続き。Thinkの開催中も雨は容赦なく降り注ぎ、せっかくの野外の演出も出番が少なかったようです。
Think 2019のメッセージは「デジタル改革の第2章」です。基調講演を行った同社のGinni Rometty氏(会長・社長兼CEO)は、これまでの第1章ではデジタル化に着手する段階。AIが台頭し、顧客向けのアプリを中心にクラウドの利用が進んだのに対し、第2章ではいよいよ企業(エンタープライズ)が基幹システムでクラウドやAIのメリットを活用する、と予測しました。すべてがクラウドに移行するというわけではなく、既存のオンプレミス、社内データセンターに構築したプライベートクラウド、そしてパブリッククラウドを用途により使いこなすハイブリッドクラウドとマルチクラウド(複数のパブリッククラウド)の戦略が重要になる、と伝えました。ここはもちろん、IBMの出番というわけです。
IBMはたくさんの発表を行いましたが、同社のコグニティブ技術「Watson」に関連したものとしてWatsonのコンテナ化によりどこででも動くようにするという“WatsonAnywhere”、そしてマルチクラウドでは、さまざまな環境を統合する「IBM Cloud Integration Platform」などを発表しました。IBMはコグニティブ、クラウドのほか、ブロックチェーンも成長戦略の柱としており、少し先の研究として量子コンピューターも進めています。
Watsonといえば、2011年に米国のクイズ番組「Jeopardy!」で人間のクイズ王に勝利したことが有名ですが、IBM ResearchはThinkに先駆け、ディベート(議論)するAI「Project Debater」と人間のディベートチャンピオンとのディベートも披露しました。結果はというと、人間のチャンピオンには「負け」ましたが、そもそも議論に勝敗をつけることは難しく、情報を駆使しながら同時に一貫性を持って議論をするProject Debaterは、AIの進展という点で衝撃的でした。
さて、IBMといえば2018年秋、340億ドルを投じてRed Hatを買収するという大きな賭けに出ました。Red HatはLinuxディストリビューションの開発で知られるオープンソース企業ですが、このところクラウドやコンテナにも拡大しています。ThinkではRometty氏の基調講演にRed Hatのプレジデント兼CEO、JimWhitehurst氏も登場し、両者の技術の組み合わせの可能性について話しました。