オムニチャネル成功のための3つめのカギは「店舗」にある
フューチャーショップが考えるオムニチャネル化の重要なカギは3つ。ひとつはチャネル間のデータを統合する仕組み。ふたつめはチャネル間をまたいだスムーズな動線。この2点については前述のとおりで、フューチャーショップがサービスとして提供している部分だ。しかしこれだけではオムニチャネルは成功しない。3つめの重要なカギが、店頭スタッフの意識改革だという。
「店頭のスタッフの方が、会員登録するとこんなにいいことがありますよとか、LINE 連携するとこういう情報が届きます、といったことをいかにお客様に伝えることができているか。それをやっている店舗とやってない店舗で、成果は如実に違います。たとえばLINE 連携は、お客様が自らLINEアプリ内でECサイトにログインする必要があるためハードルが高く、平均的な連携率は7%程度です。しかし、店頭で積極的に案内をされているアパレルブランド『古着屋JAM』では、連携率は約33%。futureshopと連携しているLINEの自動配信ツール『WazzUp!』を使って、新着情報のお知らせやカゴ落ちのフォローメッセージを送るなどのコミュニケーションを取られています。スタッフの取り組みかたで、結果は大きく変わってくるんです」
重要なのは店頭のスタッフを巻き込み、モチベーションを上げていくこと。実店舗とECで売上を取り合うのではなく、ブランドをともに盛り上げ、その価値の向上こそがオムニチャネルの目的だと理解してもらうこと。これが、成果につなげるポイントなのだ。
前述の連携アプリ、STAFF STARTは、モチベーションアップに最適なツールになる。投稿したコーディネートが、どれだけECでの売上につながったかが可視化され、スタッフ個人の評価につなげることもできるからだ。店頭スタッフがブランド全体の売上に貢献するという意識をもち、多様なチャネルを活用していくことができれば、実店舗とECサイトの垣根はなくなっていき、「自社のすべてのチャネルにおいて、自社の顧客に同じ購買体験を提供する」というオムニチャネルの目的が実現できる。
「それぞれのチャネルの強みを活かし、チャネルをまたいだ相乗効果が生まれることが大切です。実店舗での接客によってチャネルを増やし、コミュニケーションが増え、ECも含めた全体がよくなっていく。今後もそうした相乗効果をどういう風に仕組みで生み出していくかを考えていきたいと思っています」
「事業者がやるべきは仕組みづくりではない」
限られたリソースで成果を出すために
同社の「futureshop omni-channel」は、SaaS型で必要な機能だけ、カスタマイズ不要で利用することができる。そのため比較的安価であることも特徴だ。
「SaaS 型でコストが抑えられるので、企業やブランドにとってはチャレンジしやすいのではないでしょうか。細かな連携やPOS 対応などの調整は必要ですが、技術的な負担は大きくありません。もともとfutureshopのECサイトを利用されているお客様が中心でしたが、最近は別のECサービスをすでにご利用のお客様が、顧客データ統合を実現したいという理由で、プラットフォームをリプレースする際に採用いただくケースも増えています」
サービスや機能の提供だけでなく、サポート体制が充実しているのも同社の強みだ。八木さんが率いるCS(カスタマー・サクセス)推進部が中心となり、顧客ごとに異なる課題に対応するほか、サービスに関する説明会や勉強会も充実している。
今後もテクノロジーの進化、インターネットとデバイスの普及、SNSをはじめとした顧客接点の多様化で、消費者行動はますます複雑化していき、事業者が対応すべき施策もより増えていくだろう。エンジニアの人材確保も年々難しくなるなか、自社だけで対応していくことは難しい。だからこそ、テクノロジーへの対応は任せてほしいと八木さんは締めくくる。
「事業者の方が限られたリソースで成果を出していくためにやるべきは、MDや接客などのクリエイティブのブラッシュアップで、仕組みを作るところではないと思います。そこは我々がプラットフォーマーとしてしっかり責任を果たしていくのでお任せください。一緒に頑張っていきましょう」