フューチャーショップは、2003年より独自のECサイト構築サービスを開始し、現在では2,400以上の稼働店舗を抱えるプラットフォーマーだ。同社の「futureshop omnichannel」は、オムニチャネルという言葉が今ほど注目されていなかった2013年、いち早くオムニチャネルに対応するSaaS型のサービスとしてリリースされた。現在はアパレルを中心とした約50ブランドに導入されており、実店舗での稼働は900店舗を超えている。
「オムニチャネルで重要なのは、実店舗とECそれぞれの強みを活かして相乗効果を生み出すこと」と語る同社CS推進部の八木さんに、futureshopのサービスとオムニチャネル成功の秘訣を伺った。
ECと実店舗の連携が相乗効果を生む
そもそも「オムニチャネル」とは概念であり、機能やサービス自体を指す言葉ではない。そのため、漠然とオムニチャネルの重要性を感じていても、実際に何をやるべきかよくわからない事業者もいるのではないだろうか。
同社はオムニチャネルを「自社のすべてのチャネルにおいて、自社の顧客に同じ購買体験を提供すること」と定義している。そのための土台として必要不可欠なのが、ECと実店舗を行き来する顧客の情報を統合することだ。
futureshopでは、ポイントを共通化することでEC 会員と実店舗会員を統合する仕組みを提供している。これは単に、データを一元管理する以上の意味があると八木さんは言う。
「EC上で会員登録をしてもらうのは意外とハードルが高いんです。弊社で『会員登録ですぐに使える500ポイント』という施策を行って調査をしたのですが、ECサイト上では初回購入時の会員登録率が26.4%と、およそ4分の1しか登録されませんでした。しかし店頭では、レジの近くにPOPを出したり、スタッフが声をかけたりするだけで、9割の方に登録していただくことが可能です」
接客という店舗の強みを活かして会員登録を増やすことができれば、その後もEC同様のメールマーケティングやリピート施策が可能になり、購入機会が増加する。会員統合による相乗効果で、全体の売上アップにつなげやすくなるのだ。
「事例をひとつお伝えすると、アパレルブランド『flower』では、新規開店による実店舗売上が約140%増だったのに対して、ECでの売上も比例するように136%に伸びました。それまでは実店舗とECの売上が比例することはなかったそうですから、相乗効果は高いと思います」
また、ECで見つけた商品を「実際に見て購入したい」というニーズに応える店頭在庫表示機能も提供している。これも実店舗とECの連携により、ブランド全体の機会損失を防ぐことが目的だ。事業者側でバックヤード管理の整備が必要だが、店舗への送客を促進できるこの機能は、現在約10ブランドで実装されている。
「アパレルブランド『w closet』では導入後、店舗に在庫確認の電話が殺到したそうです。普段は原宿店で購入されるお客様が、電車で1時間程度かかる海老名店に在庫があることがわかり、わざわざ来店されたこともありました。それだけでも在庫表示機能を入れたかいがあったと、店舗からEC部門へ共有があったそうです」
ECと実店舗を行き来する消費行動が当たり前となった現在、両者が連携することで相乗効果を生み、全体の売上や価値を高めていくことが、オムニチャネルの重要なポイントになる。