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季刊ECzine vol.08特集「To be first call ~最初に声がかかるお店のつくりかた~」

「買う」場所から「過ごす」場所へ 伊東屋が考える、究極の店づくりとは


 創業110年を迎える文房具専門店の伊東屋が今、生まれ変わろうとしている。新しい店舗のありかたを模索する中で、いったい何が見えてきたのだろうか。※本記事は、2019年3月25日刊行の『季刊ECzine vol.08』に掲載したものです。

 銀座の一等地に店を構える銀座伊東屋の本店「G.Itoya」。一歩足を踏み入れると、季節に合わせたグリーティングカードが目に飛び込んでくる。その奥には、文房具屋であるにもかかわらず、ドリンクバーがある。2Fには、便箋、封筒など、手紙にまつわるさまざまなアイテムが揃う。「Write & Post」のスペースでは、購入した便箋やハガキをその場で書き、投函することができる。8階に上がると、そこはペーパークラフトのエリア。パピエリウムと名付けられたその空間は、世界中から集められたデザインペーパーによって、カラフルに彩られている。そこでは定期的にクラフト教室も開催される。文房具屋として商品を売るだけにとどまらない、それにまつわる体験を提供する場所、という印象だ。

 2015年6月に、銀座 伊東屋の本店は、大々的なリニューアルを実施。そのおよそ1年後には、スマホアプリ「メルシーアプリ」をリリースした。新しい買い物体験を、顧客に提供するためである。伊東屋は、100年を超える伝統から何を見出し、新たな一歩を歩き始めたのだろうか。同社で、マーケティングやEC、ブランディングなどを統括する松井幹雄さんに、伊東屋が考える店づくりの極意について話を聞いた。

株式会社伊東屋 取締役 企画開発本部 本部長 松井幹雄さん
株式会社伊東屋 取締役 企画開発本部 本部長 松井幹雄さん

「何でもある伊東屋さん」からの脱却 あくなき店舗へのこだわり

 伊東屋の創業は、1904年。文房具・雑貨などの小売事業をメインに、国内は20店舗、サンフランシスコ、ボストン、シカゴなど、海外にも9店舗を展開している。店舗での販売はもちろん、2005年からはECサイトを開設。オリジナル商品の企画開発や、商品の卸事業も行っている。

 そんな銀座 伊東屋本店は、2015年6月、店舗の老朽化をひとつのきっかけに、大規模なリニューアルを実施。「G.Itoya」とその名称を改めた。リニューアルにあたり、どのようなコンセプトにするのか。何を顧客に提供するのか。社内で議論が行われた。日本の小売業を取り巻く環境を、伊東屋のビジネスに照らし合わせるところから、まずは始められた。

「トータルで日本の人口が減っていくことと、店舗を中心とした小売業が衰退していること。まず、これらの情勢を考慮する必要があると思いました。とくに私たちは支店として百貨店に入っている店舗も多いので、すでに売上やそれにまつわる数字に、顕著に表れていました。実店舗自体が、今後伸びると言われている業態もおそらくないでしょう。そしてEC。ここは明らかに今発展しており、それにともない買いかたも変わってきています。あとはデジタル化が急速に進んでいること。アナログな商材を扱っている私たちも、この流れは無視することができません」

 これらをふまえて考えると、「今まで培ってきた『何でもある伊東屋さん』をさらに続けても、その先があるとは思えなかった」と松井さんは言う。ただリニューアルを構想し始めた当初、すでに伊東屋は創業110年。となると、今まで積み重ねてきたことをひっくり返し、まったく新しい店舗を作ることは難しい。そこでさらにリニューアルにあたり、脱却すべきものと伝統として残していきたいものを考えていった。その結果、まず脱却すべきは、「何でもある伊東屋さん」であると結論づけた。

「おそらく今までの伊東屋は、『品揃えが豊富で何でもある』とお客様に思っていただいていたと思います。当時私たちは、15万点のSKUがありましたが、Amazonがもつ文房具のSKUは150万点だと言います。そこに対抗するために銀座にあと9棟建てるなんて、とてもできません。そこで私たちとしては、『センスが良く品質も優れたもの』を残していこうということを、ひとつの方針にしました」

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この記事の著者

ECzine編集部 中村 直香(ナカムラナオカ)

ECに関する情報を、正確にお届けできればと思います。よろしくお願いいたします。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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