大事なのはテクノロジーに対する肌感覚を持つこと
ポケモンGOや、Instagram、TikTok、スマートスピーカーなどを使ったことはあるだろうか。たとえばマーケティング部門やEC事業関連部門、サービス企画開発部門など、そういったテクノロジーやトレンドを試していかなければいけない企業の担当者が、実際はあまり体験できていないということも多いように思う。
もちろん、「今、世の中で流行っていると聞いたから」という理由で、最新のテクノロジーを活用した取り組みに着手するケースもあるだろう。だが、その施策に実体験が伴っていないことは、意外と生活者に見抜かれているかもしれない。
様々なテクノロジーが次々に登場し発展している今、いち担当者がその1つひとつをすべて把握しきるのは至難の業だ。そのため、テクノロジーを普段から活用している生活者と企業が持つ感覚は、どんどん乖離している。
これからますます、身の回りにはデジタルとリアルをつなぐようなアイテムが増えていくだろう。IHS Technologyの調査によると、インターネット技術や各種センサー・テクノロジーの発展を背景に、パソコンやスマートフォンなど従来のインターネット接続端末に加え、家電や自動車、ビルや工場など、世界中の様々なモノがインターネットへつながっており、その数は爆発的に増加している。2016年時点でインターネットにつながるモノの数は173億個であり、2015年時点の154億個から12.8%の増加と堅調に拡大している。2016年を起点に2021年までに年平均成長率(CAGR)15.0%とさらに成長率が加速し、2020年は約300億と現状の数量のおよそ2倍に規模が拡大する見通しなのである。
このようにデジタルがリアルと融合する、またはデジタルとリアルを生活者が行き来する世界において、単に「モノを売る」だけの小売業者が生き残っていくことはますます厳しくなるだろう。
デジタル武装した生活者は「不便」や「退屈」に耐えることが難しくなっている。ほんの少しでも「使いにくい」、「面白くない」と感じた瞬間にそっと離れ、他へと移ってしまうのだ。「不便だけど仕方がない」と、企業が提供する仕組みに合わせてくれる顧客は少なくなるはずだ。
その代わり、自分が気に入ったサービスや商品に対しては、どこまでも支えてくれる。だからこそ、誰に、どういう体験を提供するのか。そのために、ECや店舗、アプリをどのように活用するのか。そういったことをいま改めて考えなければならない。もちろんその体験が、生活者それぞれに最適化されていることは不可欠だ。綿密に設計された体験を通して、顧客とのエンゲージメントを形成し、強化していくことが求められているのである。