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CVRに固執しない施策が売上をアップさせる 三陽商会が取り組むレコメンドシナリオとは

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2018/07/31 12:00

 三陽商会が展開するブランドを集めた自社ECモール「サンヨー・アイストア」では、「ページビュー(PV)数」を重要なKPIのひとつに設定している。PV数の向上対策のひとつとして導入したのが、シルバーエッグ・テクノロジー社が提供するレコメンドサービス「アイジェント・レコメンダー」だ。CVR の短期的な向上に固執しないレコメンドシナリオを実施した結果、PV数はもちろん、CVRや売上もアップしていると言う。

「サンヨー・アイストア」レコメンド経由の売上が1.3倍に向上

 2018年で創業75年を数える、三陽商会。MACKINTOSH、Paul Stuart、EPOCAなどの人気ブランドを、「サンヨー・アイストア」という自社運営のECモールに集めて展開している。同サイトでは、ユーザーがサイトを閲覧するデバイスがスマートフォン中心になってきていることから、「ページビュー(PV)数」をサイトの重要なKPIのひとつに設定。この数値を追うことで、結果として、コンバージョンレート(CVR)や売上の向上にもつながっていると言う。

 三陽商会の取り組みを支援しているのが、2017 年9月に導入したシルバーエッグ・テクノロジー社のAIレコメンドサービス「アイジェント・レコメンダー」だ。サイト上でのユーザーの行動をリアルタイムに分析し、最適なコンテンツや商品をレコメンドするのが特徴。三陽商会では、アイジェント・レコメンダーの導入により、レコメンド経由の売上が1.3 倍という成果につながった。レコメンドを経由したユーザーと、サイト全体のユーザーを比較すると、1セッションあたりのPV数は2.5倍、CVRは3倍と、レコメンドによってユーザー行動の活性化に貢献できているようだ。

 オムニチャネルに早くから取り組み、その動向がファッション業界外からも注目される三陽商会。スマートフォン、ソーシャルメディアの浸透により、スマホを中心としたコミュニケーション戦略は、現在各社が模索しているところである。CVRに固執しない取り組みで、結果的にCVRを含む重要指標の向上に成功している三陽商会で、ウェブビジネスを統括する安藤裕樹さんと、オムニチャネル推進グループの主任でチーフマーケターの花輪俊夫さんに話を聞いた。

株式会社三陽商会 IT 戦略本部 ウェブビジネス部長 兼 オムニチャネル推進グループ長 安藤裕樹さん(写真左)、同社IT 戦略本部 ウェブビジネス部 オムニチャネル推進グループ主任 花輪俊夫さん(写真右)
株式会社三陽商会 IT 戦略本部 ウェブビジネス部長 兼 オムニチャネル推進グループ長 安藤裕樹さん(写真左)、
同社IT 戦略本部 ウェブビジネス部 オムニチャネル推進グループ主任 花輪俊夫さん(写真右)

ユーザーに対して、リアルタイムで最適な商品をオススメしたい

――「サンヨー・アイストア」の昨今のお取り組みと課題、それを踏まえ「アイジェント・レコメンダー」を採用した経緯についてお聞かせください。

安藤 弊社のECモール「サンヨー・アイストア」は、40~50代のお客様が中心ではあるものの、メンズ・レディース両方のブランドがあるうえ、ブランドもバラエティに富んでいるので、幅広い客層のお客様にご利用いただいているのが特徴です。

花輪 さまざまなブランドがある中で、サイトを訪れたユーザーが、楽しみながら商品を簡単に見つけられるサイトでありたいという思いを持って運営しています。サービスやツールの導入についても、このコンセプトを実現するという基準で行っています。

安藤 昨年9月に、お客様のスマホシフトに対応すべく、サイトのデザインリニューアルを行いました。スマホにおいては、ページの閲覧のしやすさや商品の探しやすさは、PCよりも制限を受けやすい状況にあります。そうした中で、リアルタイムに最適な商品をオススメするべく、レコメンド機能の重要度が従来よりも増していました。そこで、サイトのリニューアルに合わせて「アイジェント・レコメンダー」を導入しました。昨年の4月には、メールへのリアルタイムレコメンド機能を先行で実装し、9月にサイト内のレコメンドを実装しました。メールに関しては、別の会社のMAツールと連携して運用しています。

花輪 「アイジェント・レコメンダー」は、レコメンド市場でのシェアも高く、アパレル企業を中心とする導入実績も豊富であることから、当初から検討対象に挙がっていました。サイト上の行動履歴からのレコメンドですから、パーソナライズの精度が上がるという期待はもちろん、他社ツールとの連携が柔軟であることから、サイト内やメールに限らず、さまざまなチャネルからレコメンドを行える拡張性の高さが導入の決め手になりました。

安藤 購買履歴を重視したレコメンドも多くありますが、私自身の体験からも精度に難ありと感じていました。導入実績が豊富であるということは、それだけ行動履歴の活用ノウハウも溜まっているということですから、その点も頼もしく感じました。

導入の際には、データフィードのチューニングは行いましたが、広告運用などですでにデータの受け渡しの実績がありましたので、連携はスムーズに行えました。ほとんどの工程が、シルバーエッグさんにお任せだったというのもあります。

PV数、CVRとも増加
レコメンドを利用したユーザーの行動がアクティブに

――レコメンドに関して具体的なお取り組みと、その成果をお聞かせください。

花輪 現在、モールのトップページとそれぞれのブランドのトップページ、商品一覧ページと商品詳細ページで、関連商品のレコメンドを行っています。その他、マイページ内のお気に入り商品の登録ページ、購入履歴のページなど、細かい施策をいくつも実施しています。

「サンヨー・アイストア」トップページの一部 レコメンド商品がずらりと並ぶ
「サンヨー・アイストア」トップページの一部 レコメンド商品がずらりと並ぶ

安藤 離脱率の高いページにおいては弊社からもアイディアを出しますが、シルバーエッグさんからも、過去の実績をもとに色々とご提案をいただいています。設置する場所やシーンによって効果的なシナリオは異なりますし、実施した結果を見て、細かいチューニングも行っています。

花輪 「アイジェント・レコメンダー」を導入してから、レコメンド経由の売上が1.3倍、CVRは1.4倍と大幅に改善しています。特徴的なのは、レコメンドを利用したユーザーと、サイト全体のユーザーを比較すると、1セッションあたりのPV数が2.5倍、CVRも3倍になっていて、レコメンドを利用することでモチベーション高くサイトを利用していただけていると感じています。

安藤 CVRは重要な指標ですが、まずはサイト内の商品やコンテンツをたくさん見ていただきたいという思いがあります。レコメンド導入の効果としてまず期待したのは、PV数の向上でした。EC利用の中心がPCだった時代、「サイトの売上はセッション数に比例する」という方程式がありましたが、今やスマホがECの中心になり、売上との相関性では、セッション数よりもPV数のほうが高くなってきています。ちょっとした空き時間を利用してサイトを訪問されたお客様に、いかに多くの商品を見ていただくか。目的買いで購買意欲が高いお客様ではなく、「何かあるかな?」くらいの軽い気持ちでサイトを訪問されたお客様に対して、どういった商品をオススメするべきか。レコメンドの担う役割は非常に重要です。

――PV数が売上に直結するというのは、ここ数年の傾向なのでしょうか。

安藤 いくつかの指標と売上との相関を10年位の長さで分析してきたのですが、特にここ数年はPV数との相関が非常に高くなってきています。スマホシフトが進んだことで、訪問あたりのPV数は減少傾向にあり、レコメンドツールの検討段階から、導入によってPV数を上げたいという目的を持っていました。PV数は伸びたけれど売上が上がらないのでは意味がないですが、おかげさまでPV数はもちろん、それ以外の指標も向上しています。

花輪 シルバーエッグさんによれば、モールのトップページとブランドごとのトップページからのレコメンド経由の実績は、ほかの導入企業さんと比較しても良い数値が出ていると聞いています。パーソナライズされたレコメンドを、各トップページからダイレクトに商品詳細ページに誘導していることが功を奏しているようです。

ツールの選定や導入も含め、EC のマーケティング施策全般を担う花輪さん
ツールの選定や導入も含め、EC のマーケティング施策全般を担う花輪さん

――先行して実装された、メールのレコメンドについてお聞かせください。

安藤 アイジェント・レコメンダーのオプションサービス「レコガゾウ」を組み込んだことで、「お客様がメールを開いたタイミングで最適なものをレコメンドする」ということが可能になりました。たとえば、すでに購入した商品を除外したり、直近で閲覧していた商品の関連商品をオススメするといったシナリオが可能になります。レコガゾウを利用しない場合、レコメンドする商品を事前に設定する必要があるうえ、メール配信設定から開封までのお客様のアクションが反映できなくなるということが発生します。

花輪 ユーザーにとってタイムラグなく、メールを見た瞬間にリアルタイムで最適な商品をオススメしてくれます。直近でご購入があったお客様には、「お買い上げありがとうございます。この商品にぴったりのコーディネートはこちらです」といったオススメが可能ですし、カート落ち対策はもちろん、カートに入った商品と関連する商品を一緒にオススメすることもできます。

安藤 MAの導入以前のメール配信では、必要なデータをダウンロードし、データを加工して配信をセットするという作業を手動で行っていました。MAの導入で、メール配信業務の効率化が実現できたうえ、レコガゾウの導入によってメールでのレコメンドの精度を上げることができています。

「カートでの押し売りはしない」「空き時間に見たくなるサイト」
三陽商会流レコメンド活用の極意

――現在進めていらっしゃる、レコメンドに関する最新のお取り組みをお聞かせください。

花輪 現在A/Bテスト中なのが、商品詳細ページでのスクロール率が90%を超えた後に離脱する可能性の高いユーザーに対し、別の切り口の商品をレコメンドするという施策です。スクロール率が90%以上で離脱するということは、「ちゃんと見たけど欲しい商品ではなかった」と推測することができますので、別の切り口で商品をご提案するわけです。これは、WEB接客ツールと連動して実施しています。まだ実施期間は短いのですが、CVRはレコメンド施策を実施しなかったユーザーの1.8倍、購入金額も2倍近くと、高い実績が出ています。

なお、サンヨー・アイストアでは、「レコメンドの鉄板施策」とも言われるカート内でのレコメンドは実施していません。その代わりに、送料が発生してしまうユーザーに対して、送料無料になる金額に達するように促す「ご一緒にこちらの商品はいかがですか?」というレコメンドをカートへの投入金額や投入商品のデータを基に行っています。カートに入れた後に別の商品をレコメンドされても、場合によっては迷ってしまい、離脱してまう可能性もありますが、あと少しの金額で送料無料になるのであれば、ユーザーにとっても有益な情報なのではないかと思います。

安藤 カートでのレコメンドは鉄板施策ではありますが、購入を決め、決済まで進もうとしているユーザーを迷わせてしまう可能性もあると思います。良い意味で迷っていただく分にはありがたいのですが、結果として購買をあきらめられてしまうなら、あえてカート内でのオススメはせず、そのまま購入手続きをしていただくほうがいいという考えです。なお、デザインも含めたカート自体の表示方法と、カート内でのレコメンド表示の有無の関係など、色々とテストも検討しています。

――これからレコメンドを導入する企業さん向けに、アドバイスをお願いします。

安藤 導入目的をきちんと決めると成果が出やすいと思います。そのうえで、参考になりそうな事例をたくさんお持ちのベンダーさんに、検討時点で色々と質問や相談をしてみるのが良いと思います。目的を決めてツールを導入しても、想定したような成果が出ない場合もありますから、導入後にも色々と相談に乗っていただくことができ、迅速に対応してくださるところとだと、とてもやりやすいと思います。

花輪 他のサービスやツールとの連携がしやすいと、導入後の拡張性が出ます。レコメンドで言えば、サイト内、MA、WEB接客など、さまざまなツールと連携する可能性がありますが、それぞれ分けてしまうと、AIレコメンドの学習も浅くなりますし、設定業務やデータ連携なども煩雑になります。マーケティング担当者が運用しやすいよう、サイト内だけに限定しないレコメンドツールがオススメです。

そして、「じっくりと相談できるパートナー」というのも重要なポイントです。「アイジェント・レコメンダーは行動分析型のAIレコメンドエンジンです」。こう聞いただけで、単純にすごそうですよね(笑)。でも、実際に導入段階に入っていくと、「このページではどういうロジックのレコメンドにすれば良いのか?」など、細かい確認が必要です。そういった相談に腰を据えて向き合ってくれるパートナーを選ぶと、導入時はもちろん、導入した後のPDCAを回す際にも、しっかりとチューニングできる体制が整うのではないかと思います。

また機能面でも、「アイジェント・レコメンダー」は管理画面がそのままレポート画面になっているため、社内で「この施策の成果は?」と突然聞かれても、即答することができます(笑)。データを落として、加工してレポートにして、という手間が省けるので非常に便利です。

――レコメンド施策について、また今後のEC運営の展望についてお聞かせください。

花輪 ECサイトでは、お客様にとって最適な商品により早く出会っていただきたいと思っています。その一環として、シルバーエッグさんにご協力いただきながら、サイト内のA/Bテストに取り組んでいます。レコメンドを表示しているエリアで、シーン毎にどのようなレコメンドロジックがより効果があるのかを比較し、精度を上げていこうと思っています。

安藤 EC全般について言えば、スマホが中心になっている現状を考えると、「ちょっとした空き時間に見たいサイト」にならなくてはいけないと考えています。レコメンドによる探しやすさ、見つけやすさも重要ですが、お客様が頻繁にサイトに来たくなる理由がなくていけない。そのための施策のひとつとして、コンテンツの充実にも取り組んでいます。自社のウェブマガジンである「SANYO StyleMAGAZINE」とECサイトのコンテンツをうまく連動させて、メディア的な機能も持つECサイトにしていく。そして、お客様がふらっと立ち寄ったときに、そのお客様が見たいコンテンツや商品が表示されるようにしていきたいと思っています。

最初は購入目的でなくても、サイト内のページをいくつか見ているうちに、買いたい気持ちが盛り上がってくることがあると思います。従来は、確度の高いお客様に広告を当てて、サイトに来ていただいたらすぐにコンバージョンしてもらうというような設計を重視していました。もともと購入意欲が高いお客様に対して、その精度も高めていく施策ですが、今後は、ライトなユーザーの滞在を長くする工夫も必要だと感じています。レコメンドなどを活用して、コンテンツを読みたい方にはコンテンツを、今すぐ商品を探したい方にはしっかりナビゲートする。そういったことをやっていきたいと思います。

また、弊社は実店舗も持っており、2015年にはECと実店舗の会員データを統合しました。今後はECサイトだけでなく、店舗での接客時に、店舗のスタッフがレコメンド機能を活用できるような仕組みも考えていきたいと思っています。

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