MARLMARL(マールマール)は、「まあるいよだれかけ(スタイ)」で知られる出産祝いギフトブランドだ。同ブランドを運営する株式会社Yomは、2012年11月に設立し、EC販売からスタート。好調につき2年後の2014年9月に、「MARLMARL LABO」という自社の物流倉庫を千葉に開設している。そして、2015年の代官山を皮切りに直営店を展開。伊勢丹新宿、阪急うめだ内にも店舗を構えるほか、上海、香港にも支社を設立している。2018年4月には、宝島社から『MARLMARL Brandbook 2018』が出版されるなど、人気ブランドとしての地位を確立している。
看板商品であるスタイ3枚をボックスに詰め込んだセットをはじめ、主にギフト用途で選ばれるブランドである。アイテムの形状や点数に合わせて数種類のボックスがあり、手早く組み立てるのにはスキルを要する。スタイに、贈り先の赤ちゃんの名前を刺繍で入れるサービスがあり、スタイごとに異なる色の糸を用いるこだわりぶりだ。
この複雑な物流業務を支えるのが、自社倉庫「MARLMARL LABO」だ。責任者の山本早苗さんは、ロジスティクス部 マネージャーの肩書を持ち、庫内の業務のすべてを統括している。設立から、今年4年目を迎えるMARLMARL LABO。ブランドの急成長を、どう支えてきたのか。話を聞いた。
効率化のためシステム導入も 思わぬミスが発生
マンションの一室で始まった、 MARLMARL。当初は同じマンション内で出荷作業まで行っていたが、急成長につき、自社の専門倉庫を千葉に作ることになったのがMARL MARL LABO誕生の経緯である。ロジスティクス部 マネージャーとしてLABOを統括する山本さんは、入社当初はロジ周りどころか、ITの知見もほとんどなかったそうだ。子ども服の販売員を経て、結婚・出産。アパレルにかかわらず10年を過ごした後、MARLMARLに就職。倉庫の仕事を担当することになり、一から勉強を始めた。
MARLMARLの特徴は、受注のおよそ半分に「刺繍」という加工が入ること。複数種類あるギフトボックスは、手慣れた人でなければ素早く組み立てるのは難しいものだ。8SKUまで好きなものを選びボックスに詰め込めるという、アラカルトなセットもある。こういった複雑な業務を効率化するため、システムを導入。しかし、データの取り込みに失敗するなどシステムエラーが発生し、導入以前よりも業務がまわらなくなってしまった。頭を抱えた山本さんは、フルフィルメント・アーキテクト 栗田由菜さんにコンサルティングを依頼する。
「複雑な業務に、無理やりシステムをかぶせているのが原因でした。しかし、業務にあわせてシステムをカスタマイズするのは、時間もコストもかかるので避けたい。そこで業務に優先順位をつけ、順次カスタマイズせずにシステム化していく形を取りました。並行して庫内の業務を詳しく見ていくと、業務の属人化がシステム化を妨げる一因になっていることに気づきました」(栗田さん)
マンションの一室から始まったMARLMARL。スタッフ全員が、受注、出荷から刺繍のような加工までできる体制になっていたが、人によってパフォーマンスが異なっていた。そこで、1日あたりに刺繍のオーダーは何件入るか、ギフトボックスを組み立てるのに何秒かかるかなど、業務を数字で見える化。倉庫内の張り紙に書く矢印の向きひとつから、栗田さんとともに改善していった。