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UGC活用前後で売上が倍に 山善がインテリア共有サイト「RoomClip」を3年間使い続けるワケ

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2018/03/16 14:00

 ソーシャルメディアを活用した販促が盛り上がりを見せているが、その本質は、企業側の一方的なメッセージ発信ではなく、ユーザーとインタラクティブにコミュニケーションをとることが求められているということではないか。それを、インテリアの写真共有サイト「RoomClip(ルームクリップ)」で実践しているのが山善だ。アカウントを運営する大村さんと、RoomClipの川本さんに話を聞いた。

ショップ・オブ・ザ・イヤー11年連続!の山善
インテリア共有サービス「RoomClip」を3年間使い続ける理由

 そろそろ春物を買いたい、と思ったら見るのはInstagramだろうか。では、部屋の模様替えをしたいと思ったら? Instagram……にもなくはないけれど、インテリア雑誌や大手家具ブランドの実店舗など、アナログのほうが先に頭に浮かぶ。

 しかし、自宅のインテリアに気を配っている人なら、「RoomClip(ルームクリップ)」の名前を出してくるかもしれない。RoomClipはインテリアの写真共有サイトで、2011年設立のTunnelが開発・運営している。月間ユーザー数は300万人、投稿された写真は300万枚を超え、ウェブだけでなくアプリも展開。Instagramがあるから……と思われがちだが、インテリアに特化したバーティカルメディアとして地位を確立している。運営元・Tunnelの川本さんは「インテリアのクックパッド」とわかりやすく例える。

 RoomClipでは、UGC(User Generated Contents)という言葉が流行る以前から、ユーザーが投稿したコンテンツを活用し、『RoomClip Style』などの紙の雑誌を累計14冊発行するほか、企業のカタログやパンフレット、ECサイトの商品詳細ページにも活用してきた。RoomClipへの投稿写真に「アイテムタグ」というタグをつけることで、ECサイトへの誘導も可能で、楽天市場やAmazon、ニトリ、無印良品などが採用、流通額も右肩上がりだ。また、企業のRoomClipアカウント運営を支援するべく、アイテムタグがついた投稿を自社のアカウントやフォロワーのタイムラインに表示できる「おすすめショップ」というサービスも始まった。

 RoomClipのサービス開始から5年。ローンチ後すぐに出会い、ともに歩んできたのが山善のECサイト「くらしのeショップ」である。楽天市場のショップ・オブ・ザ・イヤーを11年連続受賞している、インテリアECの実力派だ。2017年の「総合4位」受賞には、RoomClipのユーザーの声も大いに貢献していると言う。その山善から、RoomClipアカウントの運営担当者である大村さんにご登場いただき、RoomClipの川本さんと対談してもらった。

山善 大村さん(写真・左)とTunnel 川本さん(写真・右)

――RoomClipのサービス開始時から、山善さんはユーザーとのこと。3年以上も利用し続けている理由を教えてください。

大村(山善) RoomClipのサービスを知ったときに、ユーザーの皆さんの実際のインテリアを見られ、共有できるということがすごくおもしろいと感じました。Tunnel代表の高重さんが当時、「住生活において、ユーザー目線の情報がクローズになっている」とおっしゃっていましたが、それは私も感じていたことでした。私たちは、長年インテリア商品を扱ってきているのに、お客様が購入後、商品をどのように使い、感想を持たれているのかを追うことができなかった。それが見えるようになるのですから、さっそく個人としてもいちユーザーになりました。

川本(RoomClip) 2013年4月に企業様向けのRoomClipの説明会を開き、大村さんもお招きしました。その後もメールで連絡は取り合っていましたが、2014年秋に弊社が1冊目の雑誌を出した際に、大村さんから「RoomClip伸びていますね」とご連絡いただいて。「検索したときに他のブランドはたくさん出てくるけれど、山善は出てこない。何かできないですか」とご相談いただいたのがきっかけでしたね。当時はマネタイズを考え始めた頃で、まだ企業様向けの明確なメニューがなかった頃でした。

大村(山善) 社内でもRoomClipについての話はしていたのですが、とくに年長者たちには、アプリがなかなかなじまなかった。それが、紙のすごくおしゃれな雑誌を出してくださったことで説明しやすくなり、社内が「ここで何かできたらおもしろいんじゃないか」と盛り上がったんです。その時は、ECでの販売につなげるよりもまず、インテリアのコミュニティに山善の名が登場しないことを、なんとかしたいと思っていました。

川本(RoomClip) 大村さんとディスカッションを重ねるうちに、実際にユーザーさんに商品を使っていただいてはどうかというアイディアが出てきて、おもしろいと思いました。今では、「モニターキャンペーン」という企業様向けのサービスになっています。

モニターキャンペーンで売上倍、座談会で商品リニューアル

――最初の「モニターキャンペーン」のお取り組みについて、成果も含めて詳しくお聞かせください。

大村(山善) 最初は、「オープンボックス」という収納ボックスでした。洋服を収納する目的で開発された商品ですが、実際にキャンペーンでモニターを募集し、使っていただいたところ、クローゼットに置く方はひとりもいませんでした。キッチンや子ども部屋、階段の下、洗面所など、我々が想定していた意図とは違ったところで商品が活躍していました。いかに自分たちが、思い込みで商品を売っているのか気付かされました。また、皆さんの写真がすごくおしゃれなのにも驚きましたね。

川本(RoomClip) 「モニターキャンペーン」については、こんなにおもしろい写真が集まり、コメントも活発になるのなら可能性がありそうだなと感じました。投稿された写真を「商品詳細ページに掲載したい」と大村さんからご依頼があり、ユーザーさんに二次利用をお願いし、楽天市場の商品詳細ページに今でも掲載されています。当時はまだ、UGCという言葉も出てきていなかったはずですが、大村さんはRoomClipのコミュニティに対する理解がとても深く、ユーザーさんに対するリスペクトを感じられる形で、ご掲載いただきました。このモニターキャンペーンとユーザーさんの写真を掲載することで、オープンボックスの売上がすごく伸びたんですよね?

大村(山善) モニターキャンペーン前後で比較すると、倍の売上になりました。当時はまだ、通販だと送料が上乗せになるので、実店舗で買うよりも割高だったんです。それでも、ユーザーさんのコンテンツを掲載させていただくことで、「利用シーン」が表現でき、売上倍増につながったと思います。

もうひとつ、他のメンバーが社内でRoomClipの取り組みを共有してくれたことも大きかったです。売上という数字につながったことで、「やってみよう」と言ってくれた上長や関係部署との協力関係も、より築きやすくなりました。さらに、最近ユーザーさんから「山善さん商品、オシャレになってきている」というお声をいただくことがあるのですが、それがすごくうれしいですね。社内は、ずっと同じメンバーでやってきているのですが、ユーザーさんの写真など、皆さんから学ばせていただいた要素を取り入れているからかなと考えています。

川本(RoomClip) オープンボックスのお取り組みを評価していただき、2015年から2年間で20商品ほど、お取り組みをさせていただきました。「モニターキャンペーン」だけでなく、ユーザーさんと座談会も開催しましたよね。

株式会社山善 家庭機器事業部 eビジネス部 営業2課 係長/くらしのeショップ 大村潤さん

大村(山善) 「おうちすっきりプロジェクト」ですね。もう10年ほど販売している弊社オリジナル商品のうち、発売当初から比べると売上が落ちてきているものについて、リニューアルを考えていました。その際に、実際に使っていただいているユーザーさんのご意見をうかがえたらと思ったんです。

川本(RoomClip) レンジラック、キッチンストッカー、食器棚という3つの商品について座談会を開催しました。いやぁ、ディスられましたね(笑)。「この取っ手ありえない」「ダサい」「見た目が昭和」といった具合で……、参加された大村さんもがっくりと机に手をついて。

大村(山善) 皆さんの意見を反映しながら、1年ほどかけて作り変えていきました。まったく別の商品のような見た目になっています。たとえば、文字を入れたりといった装飾はこちらでやりがちなのですが、今はユーザーさんが自由に、創意工夫でおしゃれにできる時代になったので、そこは省いてシンプルにし、ユーザーさんに一任するようにしています。その分浮いたコストを、もっと他の部分に回せますよね。当社は小売店様への卸売が中心ですが、お客様の声やバイヤーさんの声を反映して商品を作るという姿勢はより強まっています。

キャンペーンで指名検索が1位に ユーザーの実例が消費行動を変える

――RoomClipを活用することで売上アップにつながっているということですが、ほかにも何か成果につながっていることはありますか?

大村(山善) 楽天市場の「くらしのeショップ」の流入キーワードを見ると、「机」「チェスト」といったビッグワードが多かったのですが、あるタイミングで「山善 キッチンワゴン」が登場し、「山善」が入ったキーワードが、ダントツ1位になりました。直前に、RoomClipでキッチンワゴンのキャンペーンを行った結果です。ECを立ち上げた上長が「こんなことは初めてだ」と申していました。

川本(RoomClip) 「ファンが、さらにファンを作る」「ファンがブランドを作っていく」ということがRoomClipの根源にあるテーマのひとつなのですが、それがきれいにハマった事例でした。山善さんがRoomClipで「素敵に使ってくださいね」と投稿した結果、「山善って良いブランドだよね」とファンが生まれて、楽天で「山善」という指名検索が生まれた。僕もとてもうれしかったです。

Tunnel株式会社 取締役 ビジネス担当 川本太郎さん

大村(山善) ECでの販促、販売のしかたも変わっています。たとえば、シンクに置く水切りが、1段タイプと2段タイプ、ふたつあります。当初は2段タイプのほうが人気が高かったのですが、RoomClipでキャンペーンを行い、商品詳細ページにユーザーさんの写真を掲載させていただいた結果、1段タイプのほうが人気が出て、急遽商品を追加することになりました。

その理由として考えられるのは、1段タイプの投稿写真を見ると、たとえばリビングからキッチンを見てその中に水切りが置いてあるという、全体の部屋の中のひとつとして統合された写真が多かったんですね。一方、2段タイプのほうは、水切りそのものにフォーカスしている投稿が多かった。同じ面積なので、2段タイプのほうがオトク感があるのですが、価格や機能だけでなく見た目が部屋に馴染むかどうかも、すごく重要なポイントなのだと感じました。もしRoomClipでキャンペーンを行っていなかったら、弊社目線で撮影しただけの写真を掲載し、1段タイプの魅力のすべてを伝えきれなかったでしょう。

川本(RoomClip) ユーザーさんの実例が、消費行動を変えているわけですね。でも、それを見抜いて商品詳細ページを変えてしまう大村さんもすごい。大村さんはユーザーのコンテンツを見る力、洞察力がありますよね。

大村(山善) 以前は、見たくても見られませんでした。それが見られるようになっただけでも、とてもありがたいです。モノを売っておしまいではなく、それがどのようにユーザーさんの役に立っているか、逆に不満を感じられているのか。そういったことをどんどん吸収していかないと、飽きられてしまうと思っています。

3年間の感謝を込めた投稿に反響! ユーザーの声を鵜呑みにする

――EC事業者は、ソーシャルメディアをうまく活用できているところとそうでないところ、二極化していて後者のほうが多いと思います。山善さんはRoomClipで成果を出されていますが、ほかはいかがですか?

大村(山善) Facebookに「くらしのeショップ」のアカウントがありますが、あまり活用できていません。いろいろ試行錯誤してみたのですが、物販への貢献となると、なかなか結びつかなかったのでお休みしている状況です。こんな私たちでも、RoomClipはユーザーさんからたくさんの反響をいただけています。一緒にさまざまなお取り組みをさせていただいているということもありますが、うちと相性がいいのかなと。RoomClipのアカウントへの投稿はほぼ私が担当していますが、気持ちの上では最優先すべき施策と考えています。

川本(RoomClip) それはうれしいお言葉です。ソーシャルっぽい成功例と言えば、直近の楽天市場のショップ・オブ・ザ・イヤーでの活用がありましたよね。「くらしのeショップ」は総合4位を受賞されています。

大村(山善) ショップ・オブ・ザ・イヤーは、最後にユーザーさんの声、投票を募るというイベントがあります。RoomClipのユーザーさんは、楽天市場を利用されている方も多い。RoomClipのユーザーさんのことを考えると、「投票お願いします!」と直接的なメッセージを出すのも違うなと思い、原点に立ち返りました。この3年間、お世話になったユーザーさんがたくさんいらっしゃるので、その方々に「ありがとう」という想いを伝えたいと思ったんです。そこで、RoomClipに投稿されたユーザーさんたちの写真から、4枚を選んで組み合わせて1枚の画像にし、それを「◯◯さんがこんなふうに使ってくれました」という形で、ユーザーさんのクレジットもつけて、約1ヶ月間、毎日行いました。もちろん、最後のほうにちょっとだけ「投票お願いします」とリンクはつけたのですが、良い反応をいただきました。

川本(RoomClip) 約1ヶ月間、毎日ですよ! すごくたいへんなことなんです。投稿を見ながら、僕もなつかしかったです。「ああ、この写真はあのユーザーさんが、3年前のキャンペーンで投稿してくださったものだ」みたいに。この例からも、大村さんのすごいバランス感覚がわかっていただけると思います。大村さんは、扱う商品に誇りを持っていて、それをユーザーさんがどう使っていらっしゃるのかを見たいという好奇心、仕事に向き合う姿勢がすばらしいです。また、それをちゃんとマネタイズしていく、実績につなげていこうとしていらっしゃるところもすごい。RoomClipがもっと規模を拡大し、UGCを活用したコンバージョン率もさらに磨きをかけて、お返ししていきたいと考えています。

大村(山善) ECにおいては商品が重要で、いくらプラットフォームが優れていても、商品に魅力がなければ見向きもされません。魅力があるというのは、お客様の問題を解決できる商品であり、商品詳細ページ等でそれがきちんと表現できているということ。RoomClipでは、ユーザーさんがダイレクトで反応をくださるので、私はそれを鵜呑みしすぎなぐらい信じて、吸収しています。そして、リアクションをいただいたら、可能なかぎり返す。それを地道にやってきたら、今では写真を投稿すると、数百件のいいね!をいただけるようになりました。仕事でもあるけれど、インテリアも好きですし、見ていて楽しい。いちユーザーとして楽しんでRoomClipのアカウントを運営しています。

ECサイトでは、商品詳細ページで商品を説明していますが、ECにいらっしゃるのはお客様の購買行動における最後の段階ですよね。「商品について伝える」ということをもっと広い視点でとらえ、たとえばソーシャルメディアのクチコミから認知していただくにはどうしたらいいか、といったことも考えていきたいと思っています。RoomClipも、自分たちの商品をお客様に知っていただくための、ひとつの場であり、通過点である。そういう気持ちで3年間、やってきました。

川本(RoomClip) RoomClipの企業アカウント運営を支援すべく、月額制の「おすすめショップ」というサービスを始めています。おすすめショップアカウントを開設すると、自社の投稿写真のほかに、ユーザーさんが「アイテムタグ」をつけて投稿した写真も、タイムラインに掲載されます。

大村(山善) 弊社もさっそく利用していますが、ショップのフォロワーさんが半年ほどで倍になりました。ひとつは、ショップのアカウントとユーザーさんが間接的につながっているような仕組みになっていること。それにより、ユーザーさんが商品だけでなく、ショップにも気を留めてくださるようになっているのではと。もうひとつ、ユーザーさんが当社の商品の「アイテムタグ」をつけているかどうかは、能動的に探しにいくしかなかったのですが、「おすすめショップ」を導入すると自社のアカウントページに自動で集まってくるので、リアクションがしやすくなりありがたいです。

川本(RoomClip) 山善さんの場合はすでに蓄積があるので、すでにフォロワー数が倍になったことで、RoomClip経由の売上も動いていますよね。末永く、運用していただけたらと考えています。

――本日はありがとうございました。

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