若い世代が求めるチャネルへ LINE経由の見積り件数が1.5倍に
ネット専業の生命保険会社として知られる「ライフネット生命保険」。起業から10年、マスメディアやウェブ広告など、一般的なマーケティング施策はおおよそ実施し、順調に認知度を高めてきた。
しかしながら、業界全体の傾向として若年層の保険加入率は低下。それは、業界団体から高評価を得ているライフネット生命のコンタクトセンターの利用状況にも現れていた。電話での保険相談の6割以上が、40代によるものだったからである。
「生活者が今後希望している企業とのコミュニケーションチャネルとして、『チャット』『アプリ』『ロボットによる自動回答』といったものが目立ちました。年齢別に絞ってみると、スマフォ・デジタルネイティブ世代の39歳以下でこの傾向がさらに強まります。ここにニーズがあるのではないかと考えました」
そう答えてくれたのは、マーケティング部の関口暁彦さん。同部署の森根光春さんとともに、同社でLINE関連の施策を担当している。
「こうした新しいチャネルを希望している若い世代は、仕事や家事に忙しく、土日に対面の保険相談を受けに行く時間がなかったり、郵便物を確認しにくい生活習慣にあるのではという仮説が浮かび上がってきました。当社では、早くからスマートフォンに取り組んでいまして、お申し込みの半数はスマートフォンからいただくようになっています。そこで、スマートフォンを基点に、先のような新しいチャネルに取り組む場合、何ができるかと考えていくと、LINEがもっとも適しているのではという考えに至りました」
こうして、2016年7月にLINEアカウントを取得、チャットでの保険相談サービスを開始した。ちなみにLINE公式アカウントではなく、LINE ビジネスコネクトを活用してのこと。サービスローンチまでのスピード感を重視し、先述のコンタクトセンターの機能をLINE上で提供することに。チャットベースで、保険の有人相談ができるようにしたのだ。
「利用者の8割を20~30代が占めるという結果が出ました。利用者の方からは、『LINE上で保険相談できるのは気軽だし、画期的』『小さな子どもが2人いるため、対面の面談はなかなか難しいので助かります』『メッセージ上に記録が残っているので、手が空いたときに相談し直せるのがよい』といったお声をいただくことができました。
一方で、課題も見えてきました。多くの方がお昼休憩や夕食後など、隙間時間で利用してくださっているのですが、それでも保険相談には1~2時間はかかってしまいます。それを短縮したり、次の隙間時間で再開できるような仕組みができないか。もうひとつは、保険相談自体が心理的なハードルが高いのではということ。そもそも、どんな相談をしていいかわからないという方のために、保険の『ほ』の字から入るような、初心者向けのサービスがあったほうがいいのではないか。こうした視点から、さらなるサービスの拡大をはかりました」
2017年1月に、「Reply.ai」を活用しチャットボットを導入。「トークでほけん診断」「トークで見積り」サービスにより、ユーザーは選択式に回答していくだけで最適なプランや見積りが提示されるようになった。また、従来のような具体的な保険相談があった場合は24時間自動応答し、内容に応じてオペレーターが対応するという無人・有人のハイブリット式をとることにした。新サービス導入の結果、2016年7月のフェーズ1段階と比較し、LINE経由の見積り件数が1.5倍に増加している。
同社では、今回のLINE導入のKPIを見積り件数に設定していたため、数字の面でも成功プロジェクトとなった。さらに、2017年9月には、LINEを活用した顧客対応が評価され、ライフネット生命は平成29年度カスタマーサポート表彰制度「奨励賞」を受賞している。