日韓の流行スタイルをミックスしたオリジナル商品を展開する「OHOTORO」
自分らしいファッションを楽しむ日本の若者に向け、EC事業に取り組む韓国アパレル企業が増えています。そんな中、多彩なアパレルアイテムを販売する「OHOTORO」は、韓国語サイトは構築せず、日本市場だけを対象に立ち上げたEC発ブランドです。
OHOTOROを率いる鄭ナムユンCEOは、2014年、グローバルECプラットフォーム「cafe24」で日本語サイトを開設し、運営戦略研究のため、日本に留学しました。1年間、日韓両国を行き来しながら、日本語の学習ほか、市場やトレンドの分析を重ねながらEC事業にも取り組みました。
「ファッションに対する消費者ニーズが多様で、多くの競合が存在する日本市場では、弊社ならではの差別化した商品が必要だと感じました。そのため、日韓のファッションスタイルをミックスしたオリジナル商品企画に取り組みました」(鄭CEO)
日本人MDのデザイン小物が人気 商品をより強調するページ作りも
OHOTOROの特徴のひとつが、日本人の商品企画者(MD)を置いていること。彼女が企画する、日本の若年層が好む色や素材などを取り入れ、日韓のトレンドをミックスしたオリジナル商品は、20代女性を中心に人気を集めています。
とくに、シーズン別にリリースされるスマホケースのような、デザイン小物カテゴリが注目を集めているようです。このスマホケースは、事業当初、認知度向上のため販売したとのこと。狙いどおり、OHOTOROブランドは注目を集め、ブランド認知に効果があったと鄭CEOは説明しています。
また、 価格より品質向上への取り組みや詳細ページ構成にも力を入れている点にも注目です。たとえば、メインページには個別の商品画像だけを露出、詳細ページで多彩なコーディネート画像を掲載しています。これは、商品をより強調するための取り組みだそうです。
「会員登録しないと購入できない」戦略で、リピート率60%
OHOTOROは、会員登録した顧客だけが購入ができる、やや閉鎖的な仕組みをとっています。これは会員登録を行った顧客の場合、離脱率も低く、リピーターになり、自発的なレビューをしてくれる効果があるからだそうです。実際、OHOTOROの登録顧客の年間再購買率は60%に達し、17年上半期の売上高は前年比2倍以上に増加するなど、継続的な成長を遂げています。
モバイル流入が95%以上である点も、注目したいポイントです。OHOTOROではこれを受け、モバイルサイトのメインページで迅速な商品検索ができる「ワンタッチ」機能を提供しています。
また、モバイルからアクセスする顧客との接点を増やすため、Instagramなど日本語のSNSアカウントも積極的に運営しています。
単なる商品販売でなく、顧客とともに大切な思い出を作っていく
ここから、OHOTOROの鄭CEOとの一問一答をお届けします。
――日本市場だけで事業展開する理由を教えてください。
日本市場は、韓国と文化的に類似しています。また、アパレルは大手モールでの購入が多く、多彩なカテゴリのアパレルECサイトが少ないことに気づきました。この2点から、弊社ならではのオリジナル商品をうまくアピールすると競争できると判断しました。世界有数のアパレルブランドが競争する日本市場を舞台に、チャレンジしたい気持ちが強かったのです。
――セレクトショップとしてOHOTOROのコンセプトは?
「Good things、enjoy in bits」というスローガンを掲げ、ひとつの商品を購入していただいた場合でも、顧客が満足できる商品提供に取り組んでいます。最近、日本でも韓国商品をネットで気軽に購入できるようになりましたが、弊社は単なる商品販売にとどまらず、顧客とともに大切な思い出を作っていくECサイトを目指しています。
―― セレクトになると、数や値段では勝負できないと思いますが、勝算はあったのでしょうか。
価格競争力を高めることより、商品クオリティを上げることに集中しています。また、日本人MDを通じて、日本人の体型、トレンド、スタイルを反映したオリジナル商品を企画しています。こうした差別化により、十分戦えると判断しました。
――どのような販促施策に注力していますか?
弊社は、積極的なマーケティング展開はせず、閉鎖的な運営を固守しています。弊社に会員登録している顧客に集中することができるため、顧客満足度の向上にも効果的です。とくに、日本人CMOがインスタグラムのアカウントを管理・運営しながら、顧客とのコミュニケーションやリピーター確保に力を入れています。
――日本における今後の展望を教えてください。
2015年には、大阪にて、1日限定のポップアップストアを開催しました。多くの登録顧客が参加してくれ、現場でお客様の声を確認することができました。今後も、顧客との接点を増やすオフラインイベントなどを通じて、日本での認知度強化に取り組んでいきます。
また、日本のさまざまな分野で活躍しているアーティストたちとコラボレーションを計画しており、多彩なコンテンツ提供にも取り組んでいく予定です。
まとめ
鄭CEOは、1年間の留学期間に、日本市場や顧客特性、トレンドなどを徹底して分析したことで、起業当初から安定したビジネス展開を可能にしました。
また、日本人MDによるオリジナル商品企画、日韓のトレンドを捉えたデザインなど、オリジナル商品の開発に力を入れ、高い競争力を持つことができました。
今後も、イベントやアーティストとのコラボレーションを通じて、さらなる認知度向上が期待できると思います。