展開5年で越境ECにおける年商4億円達成
韓国の女性向けアパレル通販「ミアマスビン」
韓国では、ECによる輸出有望商品としてアパレルが注目されています。これは、越境EC活性化に伴い、ネットショッピングを楽しむ消費者が世界中で増えていることが背景にあります。
最近では、ECを利用し輸出に取り組む韓国アパレル企業も増えつつあります。なかでも、女性向けアパレル通販「ミアマスビン」は、代表的な成功事例として知られています。
ミアマスビンを率いるカン·ビョンソクCEOは、2006年の起業以来、活発な事業展開で韓国において成長を遂げました。そして他社に先駆け、海外向けビジネスにも取り組んでいます。
2012年、韓国のグローバルECプラットフォーム「cafe24」で越境ECサイトを開業し、海外市場を積極的に攻略。その結果、進出して5年目の2016年に、売上40億ウォン(約4億円)を達成しました。これは、海外ユーザーだけを対象に、かつ、実店舗を運営せず、ECのみであげた成果だけに注目に値します。
カンCEOは、成功の要因について次のように語ります。
「日本語、中国語、英語向け越境ECサイトを運営しながら、海外ユーザーがシームレスに購入できるよう仕組みを構築しました。アリペイ、ペイパルなどの決済システムや、CS、配送サービスを提供することで『安心かつ安全なネット通販』に力を注いだことがよかったと思います」
次ページからさらに詳しく、ミアマスビンの日本への越境EC成功の秘訣を探っていきましょう。
韓国で売れるものが日本でも売れる
自社サイトによるリピーター獲得で、日本年商1.5億円達成
ミアマスビンは、普段着として着回しやすいスカート、ニットなどのアイテムと取り扱い、女性らしさを強調する「デイリールック」スタイルを提案しています。多彩な品揃え、迅速な商品更新、リーズナブルな価格など、ECならではのメリットを最大限に提供しています。
日本を含む海外市場に向けた販売アイテムやスタイルも、韓国と同様の戦略をとっています。その理由を尋ねると、カンCEOはこう答えてくれました。
「越境ECの初期段階においては、海外専用商品の開発や製造を行っていましたが、実際に事業を進めてみると、海外ユーザーは自国で購入するのが難しい、韓国ならではのアパレル商品への関心が高いことがわかりました。実際、韓国国内における売れ筋商品は、海外でもヒットするケースが多いです」
特に日本市場は、ファッションへの関心も高く、韓国と文化的にも類似していることもあり、2012年から現在に至るまで、好調な売上をキープしています。リーズナブルな価格で「使える」アイテムが多いと評判も高いです。結果、2016年の日本市場における売上は、海外全体の売上のうち40%を占める15億ウォン(約1.5億円)を記録しています。
参入して5年間、日本市場で培った信頼性やノウハウを活かし、多くのリピーターを獲得しました。さらなる認知度向上の一環として、長期的には実店舗運営や専用物流センター設立も検討しているとのこと。
「市場環境やトレンドを分析すると、もはや越境ECサイトは必須事業です。今後は、トレンドを反映した商品開発やコーデに関する研究、顧客分析を着実に行うと同時に、韓国ファッションの人気をけん引するブランドを目指してまいります」(カンCEO)
たくさんのスナップ写真や送料無料が好き
日本の若者を徹底分析した対策
ここから、ミアマスビンのカンCEOとの一問一答をお届けします。
――特に日本市場で成果を上げている理由について教えてください。
日本の若年層を中心に、Kポップやアイドルが人気を集めていますが、彼らが身につけているアイテムなど、日本国内で購入するのが難しいものもあります。そうした韓国ファッションならではの斬新なアイテムへのニーズが高まっているようです。
また、日本の一般的な商品の半額ほどの手頃な商品もあるので、価格メリットも影響していると思います。
さらに、数枚の商品写真だけを掲載する日本のアパレル通販に比べ、ファッション誌のように、取り扱う全品の詳細ページに多数のスナップ写真を掲載する、韓国アパレル通販独特のスタイルも、若い女性に好まれるようです。
――大手ECモール出店より、自社サイトを通じた販売に取り組む理由は?
韓国と同様に日本のユーザーも、ECモールと自社ECサイトを使い分けて利用する傾向が強いと分析しています。
自社ECサイトを好んで利用するユーザーの場合、スタイリングやコーディネート、ファッショントレンドへの関心が高いという特徴があります。そういったユーザーを対象に、SNSなどのコミュニケーションに力を入れれば、流入に効果があるだけでなく、ブランディングにも寄与します。
当社では今後も、モールよりは自社ECサイトの運営に集中し、顧客との接点を増やすことでリピーター獲得に取り組んでまいります。
――販促施策についてお聞かせください。
「韓国ファッション」など、韓国関連キーワードを利用したYahoo!プロモーション広告を活用したり、自社ECサイト上で送料無料イベントなどを行っています。韓国では割引イベントが好まれますが、日本では送料無料を好む傾向が強いと判断したからです。
また、お正月の「福袋イベント」など日本独特のイベントを企画したり、顧客が気軽に参加できる「あみだくじイベント」などを行い、自社ECサイトへのアクセスアップを図っています。
まとめ
韓国のアパレル専門通販「ミアマスビン」は、日本向け越境ECに参入する前に、長年にわたる市場調査や顧客分析、顧客向け販促施策を通じて、実店舗を持たず日本市場で成長を遂げてきました。また、日本市場に向けて積極的な取り組みの一環として、物流センター設立や実店舗開店も検討していることから、さらなる成長が期待される企業とも言えます。