アニメやゲームなど、いわゆる「オタク」な話題を、東京から世界へ発信する「Tokyo Otaku Mode(以下、TOM)」。日本語一切なし、英語のみで構成されたFacebookページへの「いいね!」はおよそ2,000万(2017年5月時点)と驚異的な数字を誇り、ひとたび投稿が更新されれば、何千、何万ものリアクションがつく超人気ページである。
2011年にサービスを開始したTOMがECを始めたのは、2年後の2013年。現在では初年度比25倍以上、発送数も多い月で1万3,000個ほどを記録している。わずか4年あまりで、舞浜およびアメリカ・ポートランドに巨大倉庫を構えるほどとなったTOMに、越境ECの極意を聞いた。
ユーザーの熱望から始まったEC WMSはすべて自社開発
TOMは、今でこそ舞浜とポートランドに巨大な物流倉庫を構えているが、開始当初は取り扱い商品も1、2点であり、都内のオフィスから直接発送していた。しかし、正規品にこだわった商品選定などが顧客の安心感を生み、EC事業は急拡大。今ではTOMがメーカーとして、オリジナル商品の開発・販売も始めている。
まずは、TOMが物販を始めるに至った経緯を、同社のフルフィルメントオペレーション・マネージャーの末松俊哉さんに尋ねた。
「元々メディアとして運営していたTOMですが、アニメやゲームの商品を紹介するたびに、ユーザーからの『商品の良さはわかったけど買う手段がない』『TOMが売ってほしい』という声が高まってきたのが、EC事業を開始したきっかけです。我々としても広告以外の収入源を模索していたため、チャレンジしてみることになりました」
TOMが行っている物流の大きな特徴は、WMSを自らフルスクラッチで開発している点。在庫・受注・発送管理に関する仕組みを、ASPすらも利用せず完全に自社開発とした理由は何だったのか。
「はっきり言って、物流専門で作られているシステムの方がバグもエラーも少なく優秀です。しかし我々が自社開発したシステムは、かゆいところに手が届くように設計してあります。すべての工程において、実際に利用するスタッフのことを考えた仕様になっているのです。我々が扱う商品は、サイズ、重さ、素材などすべてが多岐にわたりますので、結果的にこの判断は正しかったと思っています」
具体的には、何かしらエラーが発生した際に作業員が責任者にすぐ連絡できるように、システムのUI全体が赤色に変わるなど、画面の表示色で作業工程を「見える化」するなどの工夫をこらしたという。
きるため、バーコードリーダー端末と組み合わせてスマートフォン上で操作が可能その他にも、TOMのWMSは特別なソフトを必要とせず、通常のブラウザ上で操作可能で、インターネット環境さえあればどこでも倉庫運用ができるよう作られている。また、UIは非言語的な構成で、外国人にもわかりやすくなっており、外国人スタッフが活躍する同社ならではの戦略が察せられる。