ECから始まった「WEB事業部」今のミッションとは
逸見(キタムラ) さっそくですが、川名さんが管轄していらっしゃる「WEB事業部」の仕事って、最近、変わってきていませんか?
川名(良品計画) 変わってきています。WEB事業部という名前も、合わなくなってきているんじゃないかと感じています。そもそもWEB事業部という名前は、Eコマースの「無印良品ネットストア」を主なベースとして作られたものなんです。それが今では、アプリ「MUJI passport」を中心とした店舗会員の売上構成比が44%にも上っています。この方たちを、適切なマーケティングコミュニケーションによって活性化させていくことが、僕らの目下の課題になっています。
そもそも無印良品全体の売上を見ると、90%以上を店舗が占めています。無印良品の店舗へ行くと、無印良品の世界観の中で、商品、環境、情報が統合され、無印良品のライフスタイルが提案されています。この顧客体験があるから、Eコマースでの購入にもつながっているんですね。このデジタルの時代において、無印良品をいかに知ってもらうか。無印良品への理解を深めてもらって、さらに店舗に行く機会を増やしてもらえるか。これが僕らWEB事業部のミッションなんです。
逸見 MUJI passportは、ユーザーのメリットはもちろん、店舗にとっては集客の効果もあると思います。さらにもうひとつ、アプリから収集できるデータによって、経営陣にECやWebの施策がどう成果に結びついているのか、理解してもらうための材料としても有効なんじゃないでしょうか。
川名 おっしゃるとおりです。明確に数字がとれるようになってよかったと思っていますし、そもそも、それがMUJI passportでやりたかったことでもあります。以前も会員向けに、無印良品メンバーなら10%OFFになる「無印良品週間」のイベントの告知を送ったり、レジのPOS端末に表示したりはしていたので、その延長線上にある施策ではあるのですが。
逸見 クーポン情報などをレジで提示するだけのアプリは他にもありますが、MUJI passportがすごいのは、それぞれバーコードがレジで読み取れるので、アプリを見て来ているお客様なのかどうか、店員さんもわかるし、データとしても取得できることですよね。
さらに、アプリに「新横浜のお店には在庫がある」と誘導されて行ってみると、「形態安定オーガニックコットンシャツ」がきちんと、L・M・Sと棚に積んである。このオペレーションができているから、アプリでお客様を誘導した結果、がっかりさせずに、機会ロスを防ぐことができている。御社には、店舗用の「MUJIGRAM(ムジグラム)」というマニュアルがあると聞いていますが、そこにアプリへの対応も組み込まれているから、このオペレーションが回せるんでしょう。
川名 「UX(ユーザーエクスペリエンス)」を大きな意味でとらえると、そこまでやるべきだと考えています。経営陣にもそれは理解してもらっているので、WEB事業部という名前もそろそろ変わっていくんじゃないかと思います。
逸見 アプリから店舗までのUXを追究していることで、お客様との接点も、どんどん深まっているのでしょうね。
川名 「無印良品週間」は月曜日に告知し、その週の金曜日に始まります。これまでの傾向では、告知から無印良品週間が始まるまでの間、一時的に売上が落ち、金曜日になるとECサイトの売上が一気に伸びるというものでした。それが最近では、リアル店舗もECでも、同じような動きになっている。「リアル店舗もダイレクトマーケティング化している」と言えると思います。
逸見 リアル店舗で購入するお客様も、デジタルから配信される情報を見ているということですよね。One to Oneのマーケティングにより、リアル店舗でさえもダイレクトマーケティングのような動きが起きていく。これは小売業界全体で、もっと理解を深めていく必要がありますね。