「来店」情報もマーケティングに活かす
新しいO2Oマーケティングソリューション
――御社が実践している新しいデータ分析の概要について教えてください。
後藤 これまで顧客行動データの蓄積や分析といえば、ECなどのオンラインがメインでした。しかし、近年のオムニチャネル化推進の流れにより、リアル店舗での購入データ、さらに顧客の来店などの行動データをも取得して分析・アクションすることが、新たなマーケティング施策のテーマとなりつつあります。
アナリティクスサービス本部 アナリティクス コンサルティング部
シニアコンサルタント 後藤淳志さん
――とくに、流通・小売業、メーカーといった業種の企業では、各社どんなデータを持っているのでしょうか?
後藤 流通・小売業では、ポイントカードのデータなど、いわゆるID-POS(※誰が購入したかを識別できるPOSデータ)が主流です。ID-POSは、「誰が」「いつ」「何を購入したか」といったデータが取得でき、従来はそのデータをマーケティングに活用してきました。現在では、POSデータに加えて店舗に「来店した」というデータを取得し、活用したいというご要望が増えています。
――POSデータの提供を受けた場合、どのように分析するのですか。
後藤 流通・小売業は、商品視点の分析(何が売れたのか)は盛んに行っているものの、顧客視点の分析(誰が買っているのか)にはあまり慣れていないため、うまく分析できていないケースが多いように感じます。それを改善するために、我々がID-POSデータを元に、優良顧客の購買パターンや顧客層別に支持されている商品を分析することで、マーケティング施策の改善に役立てていただいています。
――来店などのオフラインの行動データはどのように取得するのですか?
堀川 スマートフォンが普及したことで、スマートフォンアプリにSDK(ソフトウェアの開発キット)を実装し、アプリを通じて来店した情報を取得するケースが多いです。ショッピングモールなどの複合施設の場合、利用した店舗、来店時間帯、滞在時間などのデータを活用することで顧客ごとの店舗利用傾向を分析できるようになります。
熊谷 スマートフォンアプリ以外にも、店舗内のカメラやビーコンなどでも来店情報は取得できます。すでにいくつかのサービスも立ち上がってきており、「来店してもらえたのに購入には至らない」といった課題に対し、ようやく向き合えるようになったと言えます。
これまで、来店行動や購入前行動については、販売員の経験や勘に基づく要素も少なくありませんでした。その行動データが取得できるようになった今、オフラインでの顧客行動を視覚化し、活用できる仕組みとして提供するのが我々の役割です。
集めた来店情報をクラウドに
マーケティングに活用できるデータに変換
――オフラインのデータを取得した後はどうなるのでしょうか。
堀川 オンラインの購買情報と統合することで、ウェブサイト来訪時にはより関心のある商品をレコメンドした上で、オフラインの来店時に合わせて、メールを配信したりアプリでプッシュ通知をするなどオンラインとオフラインを統合したマーケティング施策に活用することができます。実際に我々は、これらオフラインのデータ収集から蓄積、分析に渡る一連の分析プラットフォームをMicrosoft Azureで構築しています。
アナリティクスサービス本部 アナリティクス ソリューション コンサルティング部
シニアコンサルタント 堀川亮さん
――他のクラウドサービスではなく、なぜMicrosoft Azureなのでしょうか。
堀川 Microsoft Azureでは、オフラインのデータ収集のようなIoT領域のデータを活用するための一連の機能がクラウドサービスとして提供されているので、データの活用目的に応じてサービスを組み合わせ、プラットフォームを構築することができます。
スマートフォンからリアルタイムかつ、大量に送信される来店情報データを処理するための機能を含め、マネージドサービスとして提供されているため、我々はその次のステップであるそれらをどう組み合わせるか、どう活用するかにフォーカスできます。データを活用したマーケティング施策をスタートするのに、毎回サーバー構築から始めていては、やはり時間がかかりますからね。
――データをクラウドに蓄積することは、何か優位性があるのでしょうか。
熊谷 当社のアナリティクスサービスは従来、顧客が持つデータを分析し、現状や解決策をレポートする点が強みでした。一方で、その前段階であるハードウェアの構築や、アプリの開発などは、それらを専門にしているSIerさんには敵わない部分がありました。
しかしクラウドになることで、言わばハードウェアがソフトウェア化し、我々も同じ領域で戦えるようになった。むしろ、分析力に強みを持つ我々がより差別化を図れるようになったと考えています。
事実、分析環境の構築を含めて、当社へ一括でご依頼いただく案件も増えています。その点でも、マイクロソフトがインフラ部分を提供してくれる利点はとても大きいです。
ソリューション本部 プロダクトサービス部
部長 熊谷誠一さん
――御社はEC向けのツールをいくつかお持ちですが、連携の可能性もあるのでしょうか。
堀川 我々は「Rtoaster」というレコメンドエンジンを搭載したプライベートDMPと、マーケティングオートメーションプラットフォーム「Probance Hyper Marketing」を提供しており、データ分析結果をウェブレコメンド機能やメール配信と連携して施策を実施しているお客様が多数いらっしゃいます。
今後は、オフラインのデータも「Rtoaster」、「Probance Hyper Marketing」と連携させて分析、活用する事例を増やしていきたいと考えています。
今後は広告やプッシュ通知の活用へ
データ分析が当たり前の世界に
――成果につながった事例などはありますか。
後藤 成果が出た事例として、メールを送ったが開封していない顧客のみに、圧着ハガキなどのリアルなバリアブルDM(顧客ごとに内容を可変しレコメンデーションするDM)を送る施策を実施した事例があります。このようなOne to Oneの施策に成功し、マス広告である新聞折込チラシ施策を取りやめるクライアントも出るなど、効果も現れています。
――マーケティングへの活用としては、現在はレコメンド、メール配信とのことですが、今後、新しい施策ができるようになる可能性はありますか?
熊谷 データを活用すれば、さまざまな顧客とのコミュニケーションが可能となります。ウェブレコメンドやメール以外では、アプリのプッシュ通知やLINEによるメッセージ配信などがすでに実用化されています。店舗に近づいたり来店したら、即座にその日のセール品をお知らせしたり、クーポンを送るなどの施策も可能です。
――今後の展望をお聞かせください。
熊谷 従来は、クライアントからお預かりしたデータを分析することが多かったですが、今はサービスや業務の設計段階から相談を受けるようになりました。今後も、ビジネスプロセスのより早い段階から支援させていただき、より深いお付き合いができるようになっていきたいと考えています。
堀川 オンラインとオフラインを統合したデータ活用により、クライアント企業とともに、1人ひとりのお客様に寄り添ったサービスの提供を実現していきたいと考えています。そのためにも、既存のデータに加えて分析に有効なデータを新たに取り入れることで、クライアントに最適な分析結果とビジネスへの活用を考えていきたいと思います。
後藤 スマートフォンとアプリが普及することで、クライアントが直接消費者やお客様にリーチできる環境が整いました。これまでは、「インターネットで調べてから店に行く」という行動が当たり前でしたが、今はスマートフォンで調べながら来店する時代になっています。これからは、このようなライフスタイルの変化にも対応した分析プラットフォームの提案や開発を行う必要があると思っています。(了)
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