ネット通販、本気で物流をやるとふくらむ「有形固定資産」
ネット通販事業は、始めようと思えば誰もが明日からでもスタートできるように、参入障壁が低いビジネスである。当たり前のことたが、量販店など店舗網の構築に多額の投資を必要とする実店舗に比べて身軽であり、それが最大の強みといっていいだろう。
ただし、Amazonなど大手は、自前の物流体制を整備し即日配送を実施。セブン&アイ・ホールディングス(HD/3382)が、全国に張り巡らしたセブン‐イレブンの店舗網を商品の受け取り窓口にするなど、実店舗側のネット販売も本格化。「欲しいものを欲しい時に届ける」という競争は、ますます激しさを増すことは確実な情勢だ。
もっとも、物流センターの整備や受発注システムの開発を進めれば、有形固定資産を含む総資産がふくらむのは必至。主なネット通販企業の、売上高と総資産の推移を見ておこう。
アスクル:売上高1.4倍、有形固定資産6.7倍
オフィス向け文具の通販でスタートし、現在は個人向けの「LOHACO」も手がけるアスクル(2678)の場合、15年5月期の売上高2,767億円は、11年5月期に比べて1.4倍である。それに対して総資産は1.8倍増。物流センターなどの建物や機械装置、運搬具といった有形固定資産に限れば、6.7倍増といったところだ。
同社は売上高も伸ばしたが、埼玉県や福岡県などの物流センターの増強・新設にキャッシュを投じたことで、有形固定資産を含む総資産が増加したということ。アスクルの同期間における投資キャッシュフロー(CF)の累計赤字額(出金超過額)は、およそ400億円である。
スタートトゥデイ:売上高1.7倍、在庫はブランド負担でも総資産は約2.5倍に
衣料品ネット販売「ZOZOTOWN」のスタートトゥデイ(3092)は、表にした期間、売上高は1.7倍になったが、総資産はそれを超える伸びで、約2.5倍である。
同社の場合、受託販売が主要ビジネスであり、在庫負担は各ブランド側にあるが、それでも商品を預かる千葉県・習志野市の物流センターの増強などを実施したことで、有形固定資産を含む総資産がふくらんだわけだ。