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ECzine Day 2024 Autumn

2024年8月27日(火)10:00~19:15

アパレルECの今を語る

[対談]好調の要因は「繊細な積み重ね」 ベイクルーズ村田さんと「企業の在りよう」からECを考える


アパレルEC関連のさまざまなゲストをお招きし、メガネスーパーでECを統括する川添隆さんと対談していただくこのコーナー。第6回は、とくに自社ECの好調で注目を集める、ベイクルーズでICT/ECを統括する村田昭彦さんにご登場いただきました。

自社ECも好調なベイクルーズ、統括する村田さんはこんな人

川添(メガネスーパー) 村田さんとはじめてお会いしたのは、2年ほど前の繊研新聞さんが主催された会でしたね。

村田(ベイクルーズ) そこでいろいろお話をさせていただいて、仲よくしたいなと(笑)。なぜって、やっぱり川添さんには、何か熱いものがあるじゃないですか。インターネットビジネスやECに対する熱い思いがあって、自分で努力しながらさまざまなトライをされて、そういうスタンスが、同じ仕事をする仲間として共感できるものが多いので。そういう方々とは、積極的に交流するようにしていますね。

川添 僕のほうは、ずっとお会いしたいと思っていた方だったので、とても緊張していました。今もしていますが(笑)。ベイクルーズさんは、セレクトショップの中でいち早く、自社ECを内製されて、成長を続けられている。当時、僕はメガネスーパーにいましたが、前職のレディースアパレルでの経験も含めて、内製で運用するのがいかにたいへんかよく知っていましたし、ほかのセレクトショップがショッピングモールに自社ECの運用まで委託していた頃ですから、すごく考え抜かれてのことなんだろうなぁと想像していました。ここで改めて、村田さんがベイクルーズさんに入られたきっかけから、自社ECを内製し、大きくされるまでの一連の流れをお話しいただけないでしょうか。

村田 入社は2007年、当時の社長(現在は会長)の窪田から、「これからの時代を考えるとインターネットビジネスに力を入れていかなければならないと考えている」というお話しをいただいたことです。 僕はアパレルとインターネット、どちらの業界も渡り歩いているので、その両方の経験が活かせるような環境で、本気で取り組もうとしている企業でお仕事をさせていただければ、と思いました。

川添 僕はその頃、ファッションの二次流通を展開しているクラウンジュエル(現在はZOZOUSEDを展開)にいました。ドメスティックブランドさんに「アウトレット的なものをやりませんか」といったお声がけもしていたのですが、「ウェブで販売?ウェブはちょっとイヤなんだけどな〜」という反応が返ってくることが多かったですね。

村田 でも、すでにECをやっているところが多かったですけれどね。

川添 実際に入社されて、自社ECはどういった状況でしたか?

村田 仕事は任せてもらえる環境だったのですが、社内的にEC部門はまだ小さな存在だったので、社内コンセンサスを取るのに時間がかかったり、人的リソースが足りないなど、やりたいことを進めるのに苦労しました。

アパレル企業って、ブランドにかかわる人のほうが、それ以外の仕事をしている人よりも上みたいなヒエラルキーがあるじゃないですか。ブランドの人が「こうしたい」と言ったことを、「わかりました」と実行するといったような。EC部門が、「対等なパートナーとして、我々はこう考えている」と意見をぶつけ合うようなカルチャーがなかったので、EC部門の目標や戦略を提案していくところから始めて。

ECも含めたデジタル領域に対する理解が不足しているだろうことは、重々承知のうえで入社しました。だから、説明して、理解してもらって、納得してもらいながら実績を積み重ねていくことに時間がかかりましたね。スピードが重要なマーケットなので、その時間がもったいないと感じることもありましたけど。

川添 今でこそ、ECを取り巻く状況や注目度は、だいぶ変わってはきたと思うんです。それでも、社内でECは理解してもらえないのは普通だということを前提にして、時間をかけてコミュニケーションしていかないと、なかなか伝わらなかったり、「ふーん」という感じで流されてしまいますよね。そんな状況から、大きく変わったターニングポイントがあったんでしょうか。

村田 何か大きなことが起きてというよりは、確実に数字を積み上げていくと、「ECにしっかりと取り組んでいかないと、会社全体として困るよね」という状況に、だんだんなっていくんだと思います。現状だと、会社全体の20%弱がECの売上になっていますし、成長率や利益率は店舗よりも高い状況ですから、会社が成長していく上で自然と必要な存在になっていったのだと思います。「ECは成長市場であり、ビジネスチャンスが大きいので、3年後にはこれくらい、5年後にはこれくらいの売上規模まで伸ばしていきます」と言い切って、あとはその数字をクリアしていくということを繰り返してきました。

川添 3年後、5年後の見込みは、確信を持っておっしゃっていたんですか?

村田 いや、「少しはインパクトを感じてもらえるだろう」という数字を言っていました(笑)。でも、そもそも市場は成長しているので、普通にやれば伸びるはずだと思っていました。

川添 普通にやれば伸びるというのは、ベイクルーズさんにはJOURNAL STANDARDをはじめとするネームバリューのあるブランドそれぞれにファンがいて、ECでも買いたいと思っているからでしょうか。

村田 たくさんのお客様に定着しているブランドもあれば、また発展途上のブランドもあり、さまざまです。「普通にやれば伸ばせる」と言ったのは、ECという成長市場の需要に対応しきれていないと考えているからです。また、顧客視点で考えた場合、まだまだ自社ECで解決できていない課題がたくさんある。その課題を、1つひとつつぶしていけば、まだまだ伸ばせる余地は大きいと。

すべてやり尽くしている企業であれば、「普通にやれば伸ばせる」というのは難しいと思うんですが、当社では、まだ残念ながらお客様のニーズに応えられていないことがたくさんあるので、やりきれていないことがこれだけあるなら、まだ伸ばせますということです。

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この記事の著者

ワダ スミエ(ワダ スミエ)

2013年11月11日〜2023年3月31日までECzine編集部在籍。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

コマースプロデューサー 川添 隆(カワゾエ タカシ)

組織で動く企業の中で、組織・チーム・ユーザーのバランスをとりながら”組織Eコマース&デジタル推進”を泥臭く改革進める人。2社の企業再生経験があり、独自の方法論と実践を通じてEコマース事業において、1社では売上を10倍以上に、5社では2倍以上に増加させてきた。2017年より代表を務めるエバンで小売企業...

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