LTVとCPAの時間差を理解しているか?
ECグロース支援を行うPALA株式会社の兒嶋仁視です。ECビジネスのスタンダードを整理し直して、WHY・WHAT・WHOの議論をしていく連載の第三回です(過去の記事一覧はこちら)。
ECのマーケティングにおいて、LTV(Life Time Value、顧客生涯価値)とCPA(Cost Per Acquisition、顧客獲得単価)は表裏一体の指標です。しかし、現場の議論を聞いていると、この2つが完全に分断されているケースがあまりに多いと感じます。
「今月のCPAが高騰して目標未達だ」「LTVを上げるための施策が足りていない」といった議論が別々のチーム・担当者によって、異なる会議で行われ、最適化されている。短期のKPIとして日々進捗が見えるCPAと、中長期で変化を追いかけていくKPIであるLTV。本来この2つは一体で見るべきですが、現場では分断されがちです。
その結果、「いまの獲得効率」と「将来の回収見込み」が噛み合わないまま意思決定が進み、多くのEC事業が成長に苦しむ大きな要因となっています。
筆者は、この問題の根源は担当者のスキルではなく、組織の「構造」にあると考えています。LTVとCPAの関係は、事業の根幹とも言える部分で、全社でモニタリングし、状況に応じてKPI設計を変える必要があります。それをベースに各担当のKPIも変更していくのが本来あるべき形だと考えています。
今回から複数回にわたり、この「LTV」と「CPA」という事業の鍵となる指標をどう経営判断に組み込むかを整理していきます。
まずは、その土台となる「LTVの正しい理解編」から始めていきます。本稿では、LTVをどの時間軸で捉えるべきか、そして全体平均だけでなくどの切り口で分解して見るべきかを解説します。LTVでお悩みの方は最後まで読んでみてください。
LTVは「期待値」ではなく「実現可能ライン」で見る
LTVは基本的に購入ベースで見る指標であるため、以下の数式で示すことができます。
LTV = 購入単価×購入回数
しかし、実務において最も重要なのは「どの期間における単価×回数」なのかという時間軸です。多くの現場で「LTVはどれくらいか?」と問うと、「1年(12ヵ月)のLTV」だけが返ってくることが多いです。
筆者は、以下の粒度でLTVを追跡することを推奨しています。2年目以降は異変があれば階段図で把握できるため、LTVは2年目くらいまでをウォッチできるようにしておきたいです。
3ヵ月LTV
6ヵ月LTV
12ヵ月LTV
24ヵ月LTV
4つの粒度でLTVを見る際に重要なのは、「自社のキャッシュ体力において、何ヵ月で投資回収しなければならないか」という視点です。
キャッシュフローに余裕のない企業が、「12ヵ月LTV」や「24ヵ月LTV」といった時間軸での回収を前提に広告投資(CPA)を設計すると行き詰まる場合が多くなります。そのため、事業計画を立てる時や進捗を追う時には、より細かい期間でLTVを見る意識が大切です。
また、ポジティブな見込みを立てることも危険です。D2Cブームでは、このLTVを見込みで計算して出資を募り、広告投資を最大化したものの、思うようにLTVが伸びず資金繰りが悪化し、撤退したブランドも少なくなかったようです。
LTVは「こうなったらいいな」という期待値ではなく、実現可能なラインで見るべきです。計画を立てる際は、「最低でもここまでは伸びる」というネガティブプランの下限を把握して設計する必要があります。ここを誤ると、事業が破綻していきます。
