これから成長するECに欠かせないのは「メディア化」
これからの自社EC(オウンドEC)は、単に商品を並べて売るだけの「展示型」では生き残れない。大手ECモールは圧倒的な物流網と品揃え、さらにはAIエージェントなどの最新技術を駆使する中で、オウンドECが同じ土俵で戦っても価格競争に巻き込まれるだけだ。鴨下氏はこの現状に対し、「オウンドECは今後、メディア化というアプローチを用いて、より最適な体験や知識を提供できる場所として進んでいかなければ、やはり勝ち残ることは難しい」と警鐘を鳴らす。
オウンドECが目指すべきは、商品情報だけでなく、ブランドの世界観や商品の背景にあるストーリー、役立つ知識などを発信する「メディア化」である。ユーザーは単にモノが欲しいだけでなく、その商品を使うことで得られる体験や、自分に合った商品を選ぶための情報を求めている。これらに応えるコンテンツを提供することで、ファンを獲得し、エンゲージメントを高めることができるのだ。
また、集客の観点からもメディア化は有効だ。従来のような広告による単発的な誘導だけでなく、SNSやオウンドメディア、UGC(ユーザー生成コンテンツ)などを有機的に結合させ、多角的にユーザーと接点を持つ必要がある。鴨下氏はこれを「融合化」と表現し、「ECとメディアがそれぞれ力を最大化していく」状態を目指すべきだと語る。

W2では、このECとメディアの融合を実現するために「Co-media(コメディア)」と「AI plugin」というソリューションを提供している。Co-mediaは、ECサイト内に記事や動画、スタッフ投稿などのコンテンツ機能を統合できるプラグインだ。これにより、ユーザーはコンテンツを楽しみながら、シームレスに商品購入へと進むことができる。

具体的な成功事例として、ムラサキスポーツとアルペンの取り組みが紹介された。ムラサキスポーツでは、店舗スタッフによる情報発信やコンテンツを強化し、ユーザーにとって役立つ情報を提供することでファン化を促進している。


アルペンでは、Webマガジン「アルペンマガジン」をECサイトと統合。ランキング情報や特集記事を通じて、ユーザーが知りたい情報をアウトプットし、自然な形で購入へと繋げている。

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また、年商10億円を突破するための具体的な打ち手として、以下の3つが挙げられた。1つ目は、SEOに強い記事コンテンツの量産だ。「おすすめ〇選」や比較記事、使い方ガイドなどを作成し、検索流入(自然検索)からの新規セッションを底上げする。
2つ目は、スタッフ投稿とECの連携だ。スタッフのコーディネート画像や紹介動画は、「人」の温度感を伝え、ユーザーの信頼を獲得するのに非常に効果的である。
3つ目は、比較記事やガイド記事による購入の後押しだ。迷っているユーザーに対し、プロの視点から選び方を提案することで、納得感を持って購入してもらうことができる。
これらの施策を効率的に実行するために欠かせないのがAIの活用だ。W2の「AI plugin」は、既存のECシステムに後付けでAI機能を実装できる拡張ツールである。商品説明文の自動生成、メルマガ文面の作成、FAQの生成など、多岐にわたる業務をAIがサポートする。特に、自社のデータを学習させて精度を高めることができる「インハウスAI」としての側面も持ち、使えば使うほど自社に最適化されたアウトプットが可能になる。
最後に鴨下氏は、EC年商10億円を突破するための重要なポイントを3つにまとめてセッションを締めくくった。第1に、新規セッション、初回購入、会員化の3つを同時に押し上げること。どれか一つではなく、掛け合わせで最大化を狙う。第2に、ECをメディア化し、記事・動画・商品・カートが一体化した購買体験を提供すること。SEO流入と人の温度感をECに直結させ、購入率を高める。第3に、会員登録やメルマガ登録といった第2、第3のコンバージョンポイントを設置し、取りこぼしを防ぐこと。商品購入以外の接点も用意し、見込み顧客をしっかりと囲い込む姿勢が重要だ。
「ECはもう展示だけではなくて、よりメディア化していかないと、お客様から購入されない」という言葉通り、これからのEC担当者には、単なる売り場作りを超えた、情報発信を中心としたメディアとしてのサイト作りが求められている。

