顧客体験設計の核心は顧客理解と文化醸成
セッションの冒頭、モデレーターを務めるRepro Booster事業責任者の孫氏は、フェリシモが考える顧客体験設計がどのようなものかについて、西本氏に質問した。西本宗平氏は、顧客体験設計の核心は、数字を追うことではなく、顧客が企業に対して抱く「期待」に応えることにあると回答。
西本氏は、顧客体験の定義は企業ごとに正解は異なるとしつつも、「お客様が企業に期待していること」に応えながら、喜怒哀楽や驚きといった「感情」をどう演出するかが最も大切であると語った。
西本氏の考えに対しReproの取締役CBDO(最高事業開発責任者)の中澤伸也氏も、「顧客体験とは『ブランドから得られる全ての体験の総合値』であり、その核となる『体験の整合性』が極めて重要」だと指摘する。複数のチャネルでの体験や製品の使用感に一貫性があるかが、顧客体験の成否を分けるという。
特にフェリシモのような通販事業を主体とする企業の場合、顧客に商品が届いた瞬間に初めて製品との直接的な接点が生まれる。店舗を多数展開している企業であれば、直接的な接客を受けることや実際に商品を手に取ることで商品のことを理解できるが、通販事業主体のフェリシモではそれが難しい。そのため、ECサイトやSNSを中心としたデジタルチャネルで様々な情報を提供していくことが求められる。
西本氏は、情報をただ届けるだけでなく、顧客に最適な形やタイミング、ストーリーにして双方向のコミュニケーションを実現することが顧客の感情に届く鍵となると解説した。情報に誇張がなく、価値の本質を正しく伝えられるコミュニケーション設計が欠かせない。
この考え方を社内で浸透させるべく西本氏は、社内勉強会「GO!WEB」を複数の社員と立ち上げた。これはECサイトのリニューアル後、「システムが変わっても扱う人が変わらなければ一緒」という課題意識から発足した。メンバーの成長を促すとともに、部署や役職を越えた「会話の量」を増やし、コミュニケーションを活性化させることに注力した。西本氏は「ベテランと若手の連携が深まり、結果としてスキルアップにもつながった」と、率直な成果を語った。
中澤氏は、こうした社内での学びの仕組みを作っても継続するのが難しい中、フェリシモの取り組みが成功している秘訣について質問。西本氏は、その秘訣を「失敗を認知して、認識して、反省して、改善して、成功にする」ことだと説明する。単に失敗を恐れないだけでなく、小さな「成功」を会話で認識させ、改善とセットで成功体験に繋げる文化が、「もう一歩踏み出してくれる人が増えた」ことに繋がったのだ。
続いて中澤氏は、A/Bテストを例に顧客理解を深めるための秘訣を紹介した。中澤氏は、A/Bテストをクリエイティブの勝敗を決める手段とするのではなく、顧客理解の手段として捉える文化にしていくことの重要性を強調。中澤氏はA/Bテストの本質を「デジタルの中でお客さんと対話する手法」であるとし、この本質的理解が、結果の受け止め方やその後の応用力を大きく左右すると解説した。

さらに顧客の状況を深く想像する「想像力」も重要だ。西本氏はECサイトの常識に囚われず、実店舗の体験と比較し、不便な点を解消する必要性を説く。中澤氏はこれを「映像妄想力」と呼び、顧客が電車の中など、どのようなシチュエーションでECサイトを使っているかを映像で想像し、その状況で顧客が不快に感じないかを考えることで、初めて本質的な課題が見えてくると語った。

