「成功ストーリーの成分表」で貢献度を見える化 プロジェクト推進の理想図を語る
河野 多数決文化と同じように僕が悩むのは、コンペですね。適切なオリエンがあれば問題ないですが、目的や達成したいことが共有されていない状態でデザインや施策の提案をするのは、非常に難しいです。でも、文化としてはコンペが定着してしまっている。そうなると、わからないことをクリアにしてからコンペに臨みたい真摯すぎる人に仕事は渡らず、“わかったふり”ができるプレゼン上手な人のところに集まってしまいます。
石川 何にせよ、会話やリスペクトが必要なのかも。
河野 コミュニケーションが大事なのは、自分でも理解しているんですけどね。「自分にわからない領域はプロに任せよう」と丸投げにされるきらいもあるので、お互いに歩み寄れたら良いんだと思います。MAISON KAPPAでは、そういった相互理解の場も作っていきたいです。
石川 河野さんはなんだかんだ「職業クリエイター」だと思うんですよ。アーティストではない。ソリューションとしてクリエイティブを使っていて、マーケティングや経営の知識で課題解決をしに行く僕と、その点では同じなんですよね。
ただ、こうしたタイプの人でも、クリエイティブを仕事にしていると、魔法の杖のように「この人に頼めば何か良い案が出てくる」と思われてしまう。本当は、ブランドの魅力を最大限に引き出すために必要な情報を揃えるのは依頼する側なのにな、と思います。
河野 デザインだけですべてを解決できたら、ブランディングやマーケティングは必要ないですからね。上辺だけ良い顔しても、消費者にはバレます。
━━単におしゃれな“それっぽいもの”は、AIで作れる時代にもなり始めています。
河野 お金をかけずに使えるツールも出てきて、デザインが万人化しつつあるからこそ、発注する側も受注する側も「何を求め」「何に応えるのか」をきちんと考えるべきタイミングですし、こうしたあるべき姿を一人でも多くの人がアウトプットしていかなければならないのだと思います。
石川 「デザインの巨匠」みたいな人でなくても、現場に従事する人の声は貴重ですからね。
河野 あと、デザインを手がける側も「デザイン」だけに固執せず、領域を広げていくべきだと感じます。マーケターと二人三脚で歩んでいけるのが、一つの理想かもしれません。こうした仕事の仕方が「会社」という枠に収まらず、もっと広がっていくと良いのにな、とは思いますね。エンジニアと違い、デザイナーは人月で雇える職業ではないので、プロジェクトの成果へのコミット度合いで還元するなど、枠組みのアップデートも必要な時代に差し掛かっていると捉えています。
石川 割いてもらう時間や勤務日数で縛る契約だと、「案件は順調に進んでいて、確認事項はないけどミーティングしなきゃ」といった本末転倒なことも起こり得ますね。逆に「今月はもうミーティング回数の上限を超えたので、案件が進められません」といった不毛な話にもなり得ます。対価と成果を適切に等価交換できる仕組みがないと、円滑なプロジェクト推進や成果向上は難しいと思います。ただ、それにはやはり発注する側の目的やミッションの言語化が必須となるのですが。
━━仕事の枠組みの再設計には、事業者側の意識変革も必要になりそうです。
河野 あとは「みんなで成果を作っていく」という発想も必要だと思います。繰り返しになりますが、プロジェクトの成果を上げたいのであれば、初期からクリエイティブ領域の人間もメンバーに加えたほうが良いです。さらなる理想は、メディアやカンファレンスイベントなどで語られる成功ストーリーから、プロジェクトの功労者全員の名前や顔が見えることですね。
極論をいえば、石川さんが成果として語っていることも、石川さん一人が成し遂げたことではないじゃないですか。前に出るのは得意な人に任せるとしても、チームで成果を作っていることをもっと声高に叫ぶべきだと思います。たとえば、毎日真面目にCRMのシナリオを磨き込んで、0.1%ずつCVRを上げている人だって売上を支える大きな柱です。
石川 食品の原材料表記みたいに、プロジェクトの参加・貢献度が可視化されていると良いのかも。同じ施策でも、マーケ担当者とEC担当者どちらがけん引しているのかで、アプローチや持つ指標、評価の仕方も変わりますからね。参考にするにしても、こうした細かな背景まで近しい事例を見たほうが良いと思います。
━━今回のお話は、メディアを運営する側にとっても記事のあり方を見つめ直す貴重な機会となりました。ありがとうございました。
