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TikTok ShopがEC市場にもたらす可能性

「TikTok Shop」がもたらす新たな購買体験:機能と海外動向に見る、国内EC事業者への影響

 昨今、SNSを活用した商品販売の形態である「ソーシャルコマース」が急速に成長を遂げています。その中でも、ショートムービープラットフォーム「TikTok」が提供するEC機能「TikTok Shop」は、従来のECモールとは異なる購買体験を提供し、世界各国で成功を収め、注目を集めています。本連載では、2025年6月に日本市場にローンチしたTikTok Shopが今後日本でどのように購買行動を変革し、EC市場に新たな価値をもたらすのか、その可能性を全3回にわたって探ります。第1回となる今回は、TikTok Shopの概要、海外での動向、そして日本市場における展望について詳しく解説します。

ソーシャルコマースの全体像

 近年、SNSプラットフォームを活用して商品やサービスを販売する形態「ソーシャルコマース」が、世界的に注目される急成長市場として存在感を増しています。全世界における市場規模は、2024年には1.2兆ドルに到達し、2030年には6.2兆ドルに達すると予測されており、年平均成長率(CAGR)30%という驚異的な成長が見込まれています(※1)。この背景には、SNSを通じて商品を購入するという購買行動が急速に広がっていることが挙げられます。

※1 Straits Research, 2023『ソーシャルコマース市場:ビジネスモデル(企業対消費者、企業対企業)、製品タイプ(パーソナルビューティーケア、アパレル)、地域別の情報 -- 2030年までの予測』

TikTok Shopの機能と従来のECとの違い

 ソーシャルコマースの一部に属する「TikTok Shop」は、ショートムービープラットフォーム「TikTok」アプリ内のEC機能として、2025年6月30日に日本でリリースされました。

 TikTok Shopは、ユーザーがショート動画やライブ配信を通じて商品を「ディスカバリー(発見)」し、購入するという、新たな購買体験を提供するECプラットフォームです。ユーザーは、以下の4つのタッチポイントから商品を閲覧・購入できます。

1.カート付きショート動画:「おすすめ」フィードに表示される動画でタグ付けされた商品をTikTok上で直接購入できる

2.ライブコマース:企業やクリエイターによるライブ配信を通じて、商品をリアルタイムに紹介しながら販売できる

3.商品ショーケース機能:各ブランドのプロフィールページにて、商品一覧の閲覧やレビューの確認に加えて、商品を直接購入できる。企業やブランドの世界観に合わせて自由に商品コレクションを構成・掲載可能

4.ショップタブ:企業の商品が一覧で確認できる。ユーザーは検索機能を活用することで、商品を探せる

 企業にとっては、TikTok Shop自体への出店料が無償で、販売手数料が7%に設定されているため、他のECプラットフォームと比較しても参入しやすい料金体系となっています。

 また、自社のオーガニックアカウントだけでなく、クリエイターなど第三者のアカウントから動画コンテンツを配信し、ユーザーへアプローチすることも可能です。

 従来のAmazonや楽天などのECモールでは、ユーザーが目的を持って商品を検索・購入する「目的買い」が主流でした。一方、TikTok Shopでは、動画コンテンツを通じて商品に偶然出会い、インスピレーションを受けて購入するという「出会い買い・衝動買い」が起きやすいのが特徴です。これは、ウィンドウショッピングのような体験をデジタル上で再現するものと言え、ユーザーに新たな発見と楽しさを提供しています。

 そんなTikTok Shopでの成功の鍵は、動画コンテンツやライブ配信を通じた集客戦略にあります。ユーザーの興味や行動履歴に基づいて最適なコンテンツがレコメンドされるTikTokのアルゴリズムを深く理解し対応することで、ユーザーの「おすすめ」フィードに表示される機会を増やし、より多くの潜在顧客にリーチすることが可能です。

 ユーザーに商品を「ディスカバリー」してもらえるよう、商品の魅力を短時間で伝えるショート動画や、リアルタイムでのコミュニケーションが可能なライブ配信を活用した、魅力的なコンテンツを設計することが重要となります。

 さらに、TikTok Shopは、多くの企業にとって、顧客とブランドとの最初の接点としても重要な役割を果たします。海外では、TikTok Shopでの購買体験が他販路での目的買いを誘発するケースが増えていたり、TikTokで商品を知ったユーザーが自社ECサイトや実店舗で購入するという効果が見られたりもしています。

 このように、TikTok Shopは単なる販売チャネルに留まらず、ブランド認知の向上から購買行動の促進まで、マーケティングファネル全体に影響を与える新規チャネルとして機能しています。

次のページ
海外動向に見る、日本市場への影響と今後の展望

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この記事の著者

株式会社セプテーニ 仙波 学(センバ マナブ)

2017年、Septeni Japan株式会社に入社し、App領域の運用コンサルタントとして従事。2019年より、XやTikTokなどソーシャル領域のメディア担当として、媒体社やプラットフォーマーとの折衝、最適な媒体活用のための施策立案や実行に携わる。また、媒体を横断したソリューションやメディアにお...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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