指標は気にしても依存するな 黎明期だからこそ陥りがちな「三つの罠」とは
ここからは、実際にこうしたツールや仕組みを導入する上で多くの企業がつまずきやすい「三つの罠」を紹介します。
一つ目の罠は、リッチリザルト依存症です。表示仕様は日々変わるため、「FAQスキーマを入れたのに表示されない」といちいち慌てる必要はありません。大切なのは「AIが理解・引用しやすいデータ設計」という本質です。リッチリザルト表示の有無に左右されず、JSON-LDの実装は継続すべきです。
二つ目の罠は、独自チェックアウトの誘惑です。オリジナルの体験構築を目指す上で「カスタマイズしたい」という欲求が生まれることは理解できますが、AIとのつなぎ込みが遠い未来ではない今、決済まわりで独自性を出すためのカスタマイズはおすすめしません。MCP、A2Aとの互換性やコンプライアンス、処理速度といった将来的に求められる要素を見据え、圧倒的に有利な立場に立つには、あくまで標準的、もしくはプラットフォームの既存ロジックを保持しながら実装するのが良いでしょう。
三つ目の罠は、AI任せの更新です。ハルシネーションのリスクを、一時も忘れてはなりません。ブランド運営チームだけでなく、法務部門などと連携して二重承認する仕組みや運用ルールを作り、出典と情報の公開日時を必ず記録する習慣をつけましょう。
AP2とCheckout Kitが示す「デジタル委任時代」の到来
変革はこれだけに留まらず、さらなる波が押し寄せています。Googleが主導するAP2には、Mastercard、American Express、PayPal、Coinbaseなど60社以上が参加。AIエージェントが安全な決済を人間に代わって行う「デジタル委任」の仕組みが、いよいよ現実のものとなりつつあります。
Shopifyも、Googleとは異なる角度からエージェントコマースを推進しています。同社はCheckout Kitを武器に「どこでも会話の中から買える体験」を他プラットフォームへと拡張中です。これら2社の動きは、検索順位ではなく、会話内での「採用率×その場での決済数」こそがEC成長の鍵を握る時代の到来を示したものといっても過言ではありません。
次回は、AP2とCheckout Kitがもたらす実務へのインパクトに加え、今後のECとAIの関係性について詳しく掘り下げ、未来予測をしていきたいと思います。