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ECzine Day 2025 June【オンライン+スタジオ観覧型イベント】

2025年6月12日(木)10:00~17:25

SHOPTALK 2025レポート

米国ECの今──注目はマーケットプレイスとコマースメディア×データ/SHOPTALK 2025レポ

 2025年3月に米国・ラスベガスで開催された流通・小売業界向けイベント「SHOPTALK」。本連載では、同イベントに3日間参加したZETAの代表取締役社長を務める山崎 徳之氏が、イベントを通じて感じた米国の小売・ECにおける注目トピックスを解説します。

流通・小売業界向けイベントでも有数の規模誇る「SHOPTALK」

 皆さんは、「SHOPTALK」というイベントをご存じでしょうか。同イベントは、米国にて行われる流通・小売業界向けのイベントで、経営層からマーケティング担当者、技術開発者まで様々な関係者が来場します。今年は3月にラスベガスで開催されました。

 そして、本イベントは非常にコンテンツの質が高いことが特徴です。本稿では、ZETAで代表を務める筆者が、3日間のイベントに参加して得られた気づきを共有します。

 まず、SHOPTALKのコンテンツは大きく3つに分類することができます。

1. 全体を通してのキーノートセッション

2. トラックごとのキーノートセッション

3. 個別セッション

 傾向としては、番号が下がるにつれて内容は濃くなります。1にも興味深いセッションもありますが、挨拶や汎用的な内容であることがほとんどです。

 また、今回のSHOPTALKは5つのトラックに分かれていました。5つのトラックの名前はずっと同じですが、日ごとにメインテーマが変わります。

1. The New Market Stage

2. The Hospitality Stage

3. The Vision Stage

4. The Inspiration Stage

5. The Value Stage

 基本的には、1のThe New Market Stageが一番汎用的なコンテンツで会場も広くなっています。一方、5のThe Value Stageはスタートアップなどによるピッチ色の強いステージとなっており、残りの3つが専門的な内容を深掘りするトラック、という傾向があります。

エクスペリエンス・パーソナライズの2点が重要テーマに

 続いて、SHOPTALKのセッションを聴講した感想をお届けします。全体を通して感じたのは、「エクスペリエンス」「パーソナライズ」の2つが重要なテーマであるという点です。

 もちろんリテールメディアや生成AIも随所に出てきましたが、前提として「エクスペリエンス」「パーソナライズ」をより良くすることが当然とされていた印象です。

 もちろん、エクスペリエンスとパーソナライズの両キーワードは、SHOPTALKに限らず日本でも当然のように使われています。しかし、米国ではそれ以上に両キーワードへの注目度が高く、特にパーソナライズは一周回って改めてメイントピックとして扱われており、新鮮な印象を受けました。

 マーケティングにおけるバズワードは常に新しいものが模索される傾向にありますが、CXがより重要になってきている現在においては、流行より本質へとシフトしつつあるのかもしれません。

 では、早速初日の3月25日から内容をレポートします。各ステージのテーマは以下のようなものでした。

1. The New Market Stage:The Future of (Retail) Media

2. The Hospitality Stage:Embracing Welcoming Retail Experiences

3. The Vision Stage:Maximizing Shopper Value

4. The Inspiration Stage:Visions of the Future: Retail in 2030

5. The Value Stage:Tech Solution Spotlight

 最初に聞いたのは、上記5トラックに分かれる前のキーノートセッションです。Opening Remarksの次にSharkNinjaというメーカーのCEOによる対談(MCはCNBC)が行われたのですが、これがなかなか面白い内容でした。

 SHOPTALK自体はリテール寄りのイベントだと私は思いますが、対談の内容やイベント全体を通じて、ブランド企業のリテールに向けた取り組みに関するトピックが多かった印象です。

 6年前はリテール企業(製品を開発していない)やメディア、ツールベンダーが多かった印象なので、ブランド企業のトピック増加は大きな市場トレンドの変化かもしれません。

 SharkNinjaは日本ではまだあまり知られていない企業だと思いますが、Sharkという美容ライン、Ninjaというキッチンラインから構成されていて、製品自体も面白いものが多いです。そして、いかにミレニアルもしくはGenZに受けるかを重視した製品展開、すなわちリテールを重視するかという内容で、とても興味深かったです。

 たとえば、Shark ラインでいうとヘアセット機能のついたドライヤー、Ninjaラインでは様々な種類が作れるアイスクリームマシンや複数の淹れ方ができるコーヒーメーカーなどがありました。

 また、エスプレッソマシンについても、ちょっと手が出しにくい価格帯でお店に負けないクオリティを目指すよりは、そこそこのクオリティで買いやすい価格に設定し、生活にエスプレッソを楽しむ体験を取り入れることを優先する、という戦略なども興味深いところでした。

 その次に聞いたのもキーノートセッションで、BestBuyによるデータ活用に関する内容でした。BestBuyは、店頭でECレビューを参照できるようにした、いわゆるOMO推進の先駆けとなる企業の一つです。同社はこの他にも2億人を超えるユーザーの93%についてユーザーごとの行動を把握している、さらにユーザーの半分がメンバーシップと紐づいているなど、データ活用に積極的な様子でした。

 その後は各トラックに分かれてのセッションとなりましたが、前述の通り初日はThe New Market Stageをメインに聴講しました。

 最初のNBC Universalに続いて、キーノートでBestBuyのセッションのMCを務めたMedia, Ads + Commerceによるリテールメディアのリサーチのセッションで、ほんの10分の内容でしたが大変興味深かったです。

 私の感想としては3日通じて参加した19セッション中ベスト5に入る内容でした。

 Media, Ads + Commerce自体は有料コンテンツなので詳しい内容はここでは触れませんが、Substackでコンテンツは公開されているので、是非読んでみると良いと思います。

 たとえばリテールメディアと他の媒体のマーケティング効果の金額ベースでの比較や、WalmartやBestBuyにおける、メディア・広告・コマースのサイクルの実例、リテールメディアにおける検索連動型広告・ディスプレイ広告・動画広告の金額ベースの比較、店頭動画広告の成長データなど、有益なスライドが盛りだくさんでした。

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この記事の著者

ZETA株式会社 代表取締役社長 山崎徳之(ヤマザキ ノリユキ)

プロバイダ及びデータセンターにおいてネットワーク・サーバエンジニアを経て2006年にZETA株式会社を設立、代表取締役に就任(現任)。ECソリューション「ZETA CX」シリーズとしてサイト内検索エンジンやレ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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