人による臨機応変な対応力がかえって足枷に? EC化を妨げる日本企業特有の課題
こうして見ると、BtoC-ECと比べてBtoB-ECは非常に複雑です。取引ボリュームが大きいことに加えて、承認者や購買部門など関わる人も多く存在します。そして、なによりもミスや欠品・遅配が顧客の生産活動、ひいては自社への信頼に大きな影響を及ぼすのです。個別の取引条件や在庫、与信・債権など、管理すべき項目が多岐に渡るといえます。BtoB-ECを運営するためには、この複雑な仕組みをITシステムに落とし込まなければなりません。

EC運営と一言でいっても、実はそのプロセスの多くは既存の受注から納品までの流れと変わりません。ただし、在庫の割り当てや追加発注のタイミングなど、都度現場の感覚で判断してきたものも、EC化にあたってはルールを明確にする必要があります。また、EC化によって新たに必要となるプロセスもすべてルール化しなければなりません。
実は、日本の企業はこうしたプロセスの明確化が苦手な側面があります。質の高いスタッフが臨機応変に対応できてしまうからです。その分、業務プロセスを明確化せずとも、漏れなくやってこられた歴史があるのです。
そのため、明確化の経験が少なく、「そこまでやらなくても良いのではないか」と考えてしまう風土があるのが特徴でしょう。私は、こうしてプロセスがあいまいなままにITシステム化を進めてしまう点が、日本でITの不良資産が多い要因の一つだと考えています。
ITシステムは、決められたプロセスの高速・大量処理は得意です。一方で、決められていないことには対処できません。業務プロセスをしっかりと棚卸しし、不明瞭な点を一切無くす。これこそが、自社ECサイトを整備する上で欠いてはならない第一歩なのです。