商品力だけではダメ? 顧客獲得・育成に欠かせないのは○○○○○
EC売上を生み出すには、新規・リピートを問わず広告出稿やCRMツールなどを用いた顧客へのアプローチが欠かせない。しかし、新たに業界に参入する事業者・ブランドの増加により、特に新規顧客向けの施策にかかるコストは高騰し続けている。こうした状況を踏まえ、中村氏は「リピート顧客獲得の重要性と課題」について次のように言及した。
「事業を拡大するには、リピート顧客の売上増が必須です。しかし、その達成に向けた取り組みは十分にできているでしょうか。それをなくして新規顧客へのアプローチを強化しても、穴の空いたバケツに水を入れているような状態で、余計なコストがかかってしまいます。まずは、リピート顧客獲得に向けた対策を強化しなければなりません」

同じECサイトに再来訪し、商品を購入してもらうにはどうすべきか。日頃から売り場の磨き込みを進めるEC担当者の視点だと、つい「商品力」を課題としがちだが、中村氏はそれ以前にすべきことがあるという。それは「リマインド」だ。
「ある調査では、一度購入したECサイトで再購入をしなかった顧客の8割以上が『特に理由はない(忘れていた)』と答えていたそうです。実際、百貨店で販売される誰もが知る商品ですら、リピート顧客の獲得に苦労していると聞きます。どの事業者も商品力に目を向けがちですが、それ以上に一度商品を購入した顧客に思い出してもらい、きちんと呼び戻す働きかけが重要だといえます」
密な交流には頻度も大事 リピート顧客獲得に有効な手段とは
では、実際にリピート顧客の獲得に成功している事業者は、どのような手段を使ってリマインドしているのか。中村氏は、有効な手段としてメールを挙げた。LINEやSMS、アプリのプッシュ通知などが主流となる時代に一見すると時代遅れとも思われそうだが、同氏はメールがアプローチとして効果的な理由を次のように続ける。
「LINEやSMSは顧客の目に触れやすい一方で、事業者にとっては1回の配信あたりのコストが課題となります。郵送のDMも同様ですが、コストがかかる=費用対効果を高めなければならないため、頻繁に送ることも難しく、顧客と密な交流を図るのが難しくなってしまいます。
一方、メールはこうした手段と比べると低コストで配信ができるため、顧客へアプローチする頻度を高められます。リピート顧客を増やすには、まずここから始めてみると良いでしょう」
消費者心理をくすぐる鉄板シナリオ アクションを促しやすくするコツは?
ただし、単にメール配信を行っても、リピート顧客の育成・獲得は実現できない。重要なのは、顧客が気になっている商品を然るべきタイミングで紹介することだ。これを実現するには、CRMやMAツールを導入した自動化も欠かせない。
「顧客は、日々の生活で様々な情報に触れています。そのため、『購入したい』と思うタイミングでアプローチしなければ、購入されないだけでなく、マイナスな印象にもつながってしまいます」
こうした施策で最も大切なのは「質と量の両立」だ。施策の自動化は、適切な顧客に、適切なタイミングで情報を届け効果を最大化するだけでなく、EC担当者の負担減にも期待できる。
「当社が提供する全自動CRM・MAツール『アクションリンク』では、質と量の両立をかなえられる鉄板シナリオを用意しています。これにより、1クリックで一人ひとりに合わせたメッセージ配信が可能です」

ここで中村氏は、鉄板シナリオの中から過去に実施して成果が出た施策例を三つ紹介した。これらは、商品のジャンルを問わず成果につながりやすいアプローチ手法だという。
「『レコメンド通知』『バースデー通知』『ランキング通知』は、サイト来訪の促進につながります。レコメンド通知は、過去の購入商品や開封メールの情報を基に、AIが『顧客が求める情報』を推測してメール配信するものです。
バースデー通知はその名の通り、顧客の誕生日に合わせて特典やクーポンを送るもので、開封率と購入率の向上に期待できます。ランキング通知は、ECサイト内でよく購入されている人気商品をランキング形式で紹介し、商品詳細ページの閲覧や購入を促せます」
加えて、商品を閲覧した上で離脱した顧客や、カートに入れた上で購入しなかった「カゴ落ち」に対するフォローも大切だ。どちらも関心度が高い状態で離脱した顧客となるため、同一商品や関連性の高い商品の情報を後日提案すると、「50%から60%台と非常に高い開封率を記録する」と中村氏は言及。特に、カゴ落ち通知に対する購入率は、38.1%と高い数値を誇っている。
「リピート購入を促すには、『休眠復活』の取り組みも有効です。よく見られる施策としてクーポン配布が挙げられますが、こうしたばらまき施策以前に『保有しているポイント』と『有効期限』をお知らせするだけでも変化が見られます。なぜなら、せっかく貯めたポイントが失効すると思うと、消費者心理としては使いたくなるからです。
こうした心理へのアプローチとしては、『値下げ』『残りわずか』『再入荷』といった訴求も有効です。『今買わないと損をする』『今買わないと商品が購入できなくなる』と思ってもらえれば、メールからのアクションを促しやすくなります」
単品リピート通販で有効な初期CRM、できていますか?
メールを使ったアプローチは、「単品リピート通販においても有効」だと続ける中村氏。特に化粧品や健康食品では、商品購入後の顧客に段階を踏んで送るステップメールが重要な役割を果たすという。
「定期購入が売上向上の肝となる単品リピート通販では、単に商品を売るだけではなく、使い続けてもらうためのアプローチが欠かせません。また、使用ペースと配送タイミングが合わないと顧客の手元に商品が余り、解約につながってしまうため、正しい使い方の啓蒙や習慣化も大切です」
もちろん、単品リピート通販で離脱を防ぐには、顧客が使用ペースに合わせて自ら配送サイクルを調整できるようにするなど、仕組みの整備も重要だ。さらに中村氏は、こうした体験作りをした上で効果を発揮するアップセル・クロスセルのシナリオについて、設計時の注意点を述べた。
「いきなり購入のステップにアップセルやクロスセルを組み込む方がいますが、それよりもまずは欲しい商品を購入して使い、気に入ってもらう『初期CRM』の段階を重視すべきです。『継続したい』と顧客に自発的に思ってもらえたタイミングでアップセルやクロスセルを行うと、効果を発揮します」
確かに、商品を使ったことがない段階で他の商品を提案されても、判断できない顧客がほとんどだろう。「押しつけがましい」と悪印象を与えてしまう可能性もある。前向きな反応を得たいのであれば、提案のタイミングにも配慮が必要だ。
中村氏は「アクションリンクでは、こうしたコミュニケーションの質と量を兼ね備えた施策を、メールだけでなくLINEやSMSでも展開できる」と説明。一人もしくは少人数の組織であることも多いEC担当者の実情に触れた上で、最後にこう語りセッションを締めくくった。
「CRMを使ったコミュニケーションを追求したいのであれば、自動化できるところはどんどん進めていきましょう。アクションリンクでは、ボタン一つで今日紹介した鉄板シナリオを実行できるだけでなく、施策の効果を個別に確認することも可能です。
近年、AIの発達により自動化できる領域はどんどん増えています。ブランドの成長や顧客体験向上を実現するには、任せられるところは任せて、空いた時間で人にしかできない施策やあえて非効率な新しい取り組みを進めるのも大切です。そういった時間を生み出す方法に興味のある方は、ぜひご相談ください」